その他
EAが自治体ITの最適化をお膳立て システム調達で地元ベンダー参入も
2003/09/15 15:00
週刊BCN 2003年09月15日vol.1006掲載
電子自治体に向けたITシステムの構築で、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)の手法を導入する自治体が出てきた。経済産業省がEAを導入したのを受け、福岡県などがIT調達の改善策として活用を開始。従来、自治体の大規模システム開発は、大手ITベンダーが半ば独占していた。だが、EAの導入で地元IT企業の参入が容易になるほか、システム調達の無駄が省け、「IT投資・計画の適正管理ができる」という声は大きく、都道府県レベルへ波及しそうだ。自治体向けIT事業を得意としてきた大手ベンダーとっては、EAの拡大は納入戦略の変革を余儀なくされる。自治体にとっても、「地元IT企業の育成」の救世主になる可能性がありそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
福岡県がモデルケースに
■システム調達の無駄をなくす
政府は今年3月、「各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議」でEAの採用を決議。この基本概念を策定するため経済産業省では、他の省庁に先立ち省内システムの「業務・システム体系一覧」を作成中だ。全省庁のEA導入を陣頭指揮している村上敬亮・経産省商務情報政策局情報政策課課長補佐は、「システム調達の無駄を排除するのがEAの目的で、特にこれは自治体で導入しやすい概念」と主張する。
EAは、米国の政府機関がIT投資効果の向上などを図る目的で活用してきた手法。文書管理や給与管理など、部署で異なる業務プロセスやシステム基盤を共通化し、「全体最適化」を図ることができる。
現在、自治体のIT調達・開発・運用に関しては、多くの問題点がある。システム構築をシステムインテグレータなどに提示するRFP(提案要請書)を発注者側が満足に書けず、大手ベンダーに“丸投げ”したり、調達方法が不十分なため資金力のある少数のベンダーがシステム事業の入札を事実上独占。また、役所内の人事異動などでIT戦略の連動性が薄れ、“場当たり的”にシステムを導入する傾向が強い。
こうした弊害を排除しようと、福岡県は今年度、「共通基盤システム開発」事業を開始。競争入札で唯一EAでの構築を提案したブラクストン(旧デロイトトーマツコンサルティング)を中心とする3社コンソーシアムが同事業を落札した。
ブラクストンは、EAで示された業務システム4分類のうち、業務内容を明確にする「政策・業務体系」を除く、情報モデルをパターン化する「データ体系」、業務と技術の適用パターンを示す「適用処理体系」、システムで選択できる技術を明確にする「技術体系」に関し、体系化を急ぐ。
この作業が進めば、技術基盤に関する体系をまとめた「TRM(技術参照モデル)」ができ、プロジェクト管理基準やシステム設計標準など、システム作成の約束事が明確になる。「TRMをオープンにすることで、福岡県庁のIT調達の参加に必要な技術やアプリケーションの作り方などに関する約束事が、誰でも分かるようになり、地元IT企業が参入しやすくなる」と、ブラクストンの杉山隆志・シニアマネージャーパブリックセクター&エネルギー担当は話す。
■大手ITベンダー依存からの脱却へ
福岡県には3月、県支援のNPO(民間非営利団体)「高度IT人材アカデミー」が開設された。県のシステムの各種標準ガイドラインが定まるため、これに準拠したシステム構築の技術スキルを同アカデミーで教育し、地元IT技術のノウハウ蓄積も図る。
福岡県以外でも現在、高知県が「IT調達ガイドライン」を策定中で、EA導入を見越した事業を進行中。宮城、神奈川、佐賀など数県もEA導入を模索中だ。
大手ベンダーでは、富士通が自治体向け「行政システム最適化サービス」を開始し、業務改革の一環でEAの手法を使うほか、NTTデータも自治体向けEAの導入ソリューションの検討を開始した。
EAが自治体に拡大することは、自治体のIT構築を丸ごと請け負ってきた大手ベンダーに意識改革の機会を与えることになりそうだ。
電子自治体に向けたITシステムの構築で、EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)の手法を導入する自治体が出てきた。経済産業省がEAを導入したのを受け、福岡県などがIT調達の改善策として活用を開始。従来、自治体の大規模システム開発は、大手ITベンダーが半ば独占していた。だが、EAの導入で地元IT企業の参入が容易になるほか、システム調達の無駄が省け、「IT投資・計画の適正管理ができる」という声は大きく、都道府県レベルへ波及しそうだ。自治体向けIT事業を得意としてきた大手ベンダーとっては、EAの拡大は納入戦略の変革を余儀なくされる。自治体にとっても、「地元IT企業の育成」の救世主になる可能性がありそうだ。(谷畑良胤●取材/文)
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