その他
政府のセキュリティ対策の現状 内部漏洩対策は手薄
2003/09/22 15:00
週刊BCN 2003年09月22日vol.1007掲載
ブロードバンド推進協議会(孫正義理事長=ソフトバンクBB社長)は、「ネットワークセキュリティ問題関係省庁の取り組み」と題する講演会を9月12日に東京都内で開催した。そこでは、総務省、経済産業省、警察庁のセキュリティ関係部局の担当者が各省庁のセキュリティ対策の現状を披露し、政府のセキュリティ対策を横断的に知る格好の機会となった。しかし、その内容からは、現在問題になっている内部からの情報漏洩対策は手薄だという印象は否めない。(石井成樹●取材/文)
暗号技術の活用や人材育成も課題
■各省庁が対策室設置
各省庁は、電子政府構想の進展に対応し、それぞれにセキュリティ対策室を設けている。総合的な取りまとめにあたるのは、内閣官房に設けられている「情報セキュリティ対策推進室」(2000年2月設置)の緊急対応支援チーム(NIRT=National Incident Response Team、02年4月設置)だが、8月に発生した新型ウイルス「MS Blaster(ブラスター)」騒動に関しては、各省庁がバラバラに対応したようだ。
経済産業省の山崎琢矢・商務情報政策局情報セキュリティ政策室課長補佐は、「ある新聞に対策窓口として電話番号を記載されたため、約1200件という当対策室始まって以来の電話相談を受け、てんてこ舞いだった」と苦笑しつつ、「消費者のITリテラシーの現実も知ることのできた貴重な体験だった」と振り返る。
そのうえで、「これから情報家電という形でさまざまな機器がネットワークにつながれていくので、セキュリティ対策も新たな視点が必要になる。また、ワームをつくった作者が悪い、パッチを配布していたから問題ないと言い切れるか、という問題も提起した」と指摘した。
警察庁の宮城直樹・生活安全局生活安全企画課セキュリティシステム対策室長は、「MSブラスターは、今振り返ればもっと早い段階で技術的な手を打てた」との見方を示しつつ、やはり「ITが社会インフラになり、家電のIT化が進むことを考えると、抜本的な対策が必要になる」と強調した。
そうした新しい対策については、経済産業省が産業構造審議会に「情報セキュリティ部会」を設置。寺島実郎氏(日本総合研究所理事長、三井物産戦略研究所所長)を部会長に「情報セキュリティ総合戦略」を策定し、10月中の「戦略公表」を目指している。
同部会では、「サイバーテロ対策だけでなく、安全保障論も含めた議論を行っている。また、ネット社会に参加することの責任とコスト、例えばパッチをあてないと逮捕するといった過激な方向性とメーカーの責任といったところまで踏み込んだ議論をしていく」(山崎課長補佐)方針だ。
■情報モラルの向上も必要
一方、総務省は、電気通信事業者を対象にしたセキュリティ強化に取り組んでいる。「電気通信分野は、重要インフラの一部であると同時に、多くの重要インフラ分野の基盤になっている」(武田博之・情報通信政策局情報セキュリティ対策室長)との発想から、昨年10月には「セキュリティ・マーク制度」をスタートさせ、また昨年7月には「Telecom-ISACJapan」も設立している。
「利用者のセキュリティ向上、研究開発の推進、暗号技術の活用によるセキュア(安全)な通信の実現、人材育成の推進にも取り組んでいく」(武田室長)としている。
こうした各省庁のセキュリティ対策を聞くと、外部からの攻撃や脆弱性に対する防御策などに対してはある程度の取り組みが行われていると言えるだろう。しかし、最も深刻な問題である内部からの情報漏洩対策についてはまだまだ及び腰のように見える。
ITリテラシーの向上策はもちろん重要だが、情報モラルの向上策も、もっと正面から取り組むべき課題と言えるのではないか。確信犯という犯罪者は、いつの世にもいるだろうが、情報が持ち出しやすい環境にあることで、不注意や出来心で情報漏洩してしまっても、結果は犯罪になる。この点を踏まえた、もっと基礎的な情報モラルの教育が必要だろう。
ブロードバンド推進協議会(孫正義理事長=ソフトバンクBB社長)は、「ネットワークセキュリティ問題関係省庁の取り組み」と題する講演会を9月12日に東京都内で開催した。そこでは、総務省、経済産業省、警察庁のセキュリティ関係部局の担当者が各省庁のセキュリティ対策の現状を披露し、政府のセキュリティ対策を横断的に知る格好の機会となった。しかし、その内容からは、現在問題になっている内部からの情報漏洩対策は手薄だという印象は否めない。(石井成樹●取材/文)
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