その他
北九州市、一大IT拠点都市に変貌中 新産業「eソーシング」を創出へ
2003/10/13 21:12
週刊BCN 2003年10月13日vol.1010掲載
鉄の需要低迷にあえぐ北九州市(福岡県)が、新たな産業と雇用創出に向け、東アジアの「一大IT拠点都市」への変貌を遂げようとしている。昨年7月、市内の産官学が共同で、「北九州e-PORT構想」を策定。今年8月には、この構想に基づき、日本テレコム主導のインターネットデータセンター(IDC)が設立されるなど、具現化に向けた取り組みが本格化している。「eソーシング」と呼ばれる新IT産業を生み出し、中小企業を安価にIT化することやIT関連産業の育成を図るのが目的だが、1つの「地域復興モデル」として、その動向に注目が集まっている。(谷畑良胤●取材/文)
「e-PORT構想」が本格稼動
■日本テレコム主導でIDC
「鉄」に換わる新産業を創出する――。第2次世界大戦前後に官営八幡製鐵所で栄えた北九州市は昨年7月、こうした地域復興を名目として、産官学が連携して情報ハブポート都市を構築する「北九州e-PORT(イーポート)構想」を策定。「次世代IT産業拠点」の実現を目指した各種施策を展開中だ。
この構想では、IT企業や通信事業者が持つIDCなどを共同化して、国内や東アジアの企業や行政機関に安価なITサービスを提供する「eソーシング」と呼ばれる新IT産業を生み出し、情報関連企業の集積を促進することを目指すという、壮大な計画が模索されている。
北九州市は“バブル崩壊”と“鉄冷え”の憂き目にあい、地場産業が地盤沈下している。その一方で、5年前から日本テレコムが同市で「コールセンター事業」を開始したほか、今年3月には日本テレコムや九州電力などが参画する大容量光海底ケーブル「日本-韓国ケーブル・ネットワーク(KJCN)」の陸揚局が設置され運用が始まるなど、IT拠点としての色合いを濃くしている。
この構想の中核に位置するのが、高速なネットワークで次世代IX(インターネット上の相互接続ポイント)につながれたサーバーやストレージを有するIDCで、今年8月には同構想に賛同した日本テレコムが中心となり「北九州e-PORTセンター」がオープンした。
このセンターには今後、県内外のIT企業が持つIDCも誘致される予定で、「利用者から見るとIDCが仮想統合された状態」(遠藤勇一・北九州市産業学術振興局新産業振興課主査)になる。
北九州市では、これらに呼応して近隣の17市町村との連携で電子自治体を共同推進する「北九州地区電子自治体推進協議会」を設立。LGWAN(総合行政ネットワーク)や行政系アプリケーションなどを共同整備するが、IDCについても同センターを活用する方針で、安価な情報システムを構築する計画だ。
この構想では、このほか4つの機能が整備される計画。1つは、紙やフィルムなどアナログ媒体を預かり電子化保存する「ストレージマネジメントセンター(情報倉庫)」で、ストレージ企業のワンビシアーカイブズ(東京都中央区)が整備。全国の行政機関が持つ帳票を預かる事業を開始する。
また、この情報倉庫へのアクセスを容易にする「コンタクトセンター」のほか、IDCや情報倉庫などの情報を効率的に交換する「アジアブロードバンドエクスチェンジ(ABX)」、高度なIT人材を育成する「ITラーニングセンター」が順次開設される。
■市は“旗振り役”に
これらの構想の具現化に向けた検討は、地場IT企業や大学、行政機関による「北九州e-PORT推進協議会」で行われているが、今年7月末までに会員が144団体にまで膨れ、「この構想への期待の高さ」(遠藤主査)がうかがえる。
北九州市の梅本和秀・総務市民局情報政策室情報政策課長は、「市はあくまで“旗振り役”。地場IT企業がこの構想のユーザーとなり、同時にサービスを提供する側になることにもなりうる」という。
この構想が社会基盤として根付けば、国内のIT企業の誘致や地場IT企業の育成、雇用の創出で、地域経済が活性化すると目論んでいる。
今年度中には、同協議会から新たな施策が順次打ち出される予定だが、韓国や中国など東アジア圏に近い北九州地域が、今後の日本を変える一大IT拠点に変貌するとの期待は大きい。
鉄の需要低迷にあえぐ北九州市(福岡県)が、新たな産業と雇用創出に向け、東アジアの「一大IT拠点都市」への変貌を遂げようとしている。昨年7月、市内の産官学が共同で、「北九州e-PORT構想」を策定。今年8月には、この構想に基づき、日本テレコム主導のインターネットデータセンター(IDC)が設立されるなど、具現化に向けた取り組みが本格化している。「eソーシング」と呼ばれる新IT産業を生み出し、中小企業を安価にIT化することやIT関連産業の育成を図るのが目的だが、1つの「地域復興モデル」として、その動向に注目が集まっている。(谷畑良胤●取材/文)
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