その他
沖電気、CTI製品で中国進出 現地企業の需要をつかむ
2003/10/13 21:12
週刊BCN 2003年10月13日vol.1010掲載
沖電気工業が、今秋からCTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)事業で中国市場へ攻勢をかけている。国内で高いシェアを誇るCTIシステム「CTstage(シーティーステージ)」を武器に、まずは日系企業への拡販を狙っていたが、予想以上のスピードで現地企業での導入が進みそうだ。現地の販売パートナーが積極的に営業を仕掛け、すでに現地企業との商談が何件も誕生している。中国では現在、中小規模コールセンターの設立ラッシュを迎えている。CTstageは国産のIT製品としては初めて、中国のローカル市場で成功する可能性を秘める。(坂口政憲●取材/文)
国産IT製品で初の現地普及も
■金融・通信から家電・サービス業まで、急ピッチで進むコールセンター整備
沖電気は4月、CTIシステム「CTstage中国語版」を投入する際、新製品の発表会を北京で開催し、中国市場への参入を表明した。日本のITベンダーが中国メディア向けに発表会を開くのはまれなこと。同社の中国市場への力の入れ様を物語る。4月以降、市場開拓の準備を進め、この秋から本格的に営業を開始した。
「今の中国のCTI市場は、日本の1997年頃の状況と似ている。これから需要拡大に加速がつく」。坪井正志・マルチメディアメッセージカンパニー(MMC)プレジデントは、こう中国市場を分析する。
日本では97年当時、銀行、通信などの公益企業が相次ぎ大型コールセンターを立ち上げ、それが一般企業へも波及し始めていた。
その頃からCTstageは中小規模コールセンターでの採用が進み、販売台数が急伸長。97年当時に200程度だった累計販売台数が、現在では約3500に達し、圧倒的なトップシェアを確保した。同社では、中国市場でも、日本と同じシナリオを描く考えだ。
事実、中国ではコールセンターが急ピッチで整備されている。調査会社の調べによれば、98年に3万5000だった「累計座席数」が01年には3倍近い約10万席に達した。
従来は金融や通信など公益分野の企業がユーザーの中心だったが、最近では家電メーカーやサービス業などでも導入が進む。それだけ中国でも消費市場が根付き始めている。
さらに、WTO(世界貿易機関)加盟で“完全開放”される中国の消費市場を狙う日系を含む外資系企業でも、導入する動きが出ている。これから数年、中国ではコールセンター開設ラッシュが続くと見られており、これにともなって、CTI関連製品の需要が加速するのは間違いないだろう。
逆に市場の伸びに鈍化傾向が見られる日本市場を考えれば、沖電気が中国市場に力を入れるのは当然のことかもしれない。
沖電気は当初、「CTstageを現地企業に販売していくのは簡単ではない」と考えていた。そのため、まずは現地の日系企業を販売対象として、現地企業へは徐々に製品を認知させていく計画だった。
日系企業へのアプローチでは、CTI分野で包括提携するNECと協業している。日系企業向けシステムインテグレーション事業で豊富な実績を持つNECの現地子会社と共同で需要開拓を進めており、中国市場での販売を強化する精密機器メーカーなどから引き合いがある。
ところが、予想に反して「日系企業の反応も良いが、それ以上に現地企業からの反応が大きく、年内にも導入実績をつくれると見ている」(久保治・マルチメディアメッセージカンパニーマーケティング部アシスタントマネージャ)という。
■拡販に積極的な現地代理店、医療分野で先行事例も
その背景には、春先から採用を進めてきた現地の販売パートナーが積極的に営業を仕掛け、見込み案件を発掘している状況がある。それだけ現地企業の需要は旺盛なのである。「50席程度のコールセンター構築と、大きな案件ではないが、ほぼ成約に近い商談も何件かある」(同)。
もちろん中国のCTI市場でも、米アバイヤなどの欧米系ベンダーや現地システム会社など競合がひしめいている。
CTstage中国語版は最小構成モデルでも1000万円を超えると見られ、決して競合製品に比べて低価格なわけではない。それでも、「CTstageの販売に意欲を見せる販売パートナーは、日本での実績を評価してくれている」(同)と、CTstageの高い製品機能が競争力を発揮している。
販売パートナーの中には、医療分野のCTIシステム構築に強みをもつ北京歩歩為営網絡技術(北京市)などが含まれる。沖電気は販売パートナーの数を追うよりも、「少数のパートナーで確実に成功実績を積み上げ、製品や会社の認知度を上げていく」戦略を立てている。
そのため、販売パートナーにはCTstage向けアプリケーション開発のトレーニングを実施している。国内と同様に様々な支援策を通じて、販売パートナーの活動を後押しする。
さらに、沖電気には心強いパートナーがある。CTstageの基盤技術を提供する大手ITベンダーである。CTstageの最新版はマイクロソフトの.NET環境で開発されており、回線制御にはインテルの音声通信処理ボードを採用、ハードウェアはIBM製のPCサーバーである。
久保マネージャは「マイクロソフト、インテル、IBMとも、中国でのマーケティングで協業できる部分は多い」と話す。3社とも中国のCTI市場の盛り上がりには注目しており、CTstageの普及は願うところ。「特に音声通信処理ボードの模造品横行に悩むインテルは協力的」という。
現地企業の強いニーズを受けて、当初は日系企業を中心に考えていたNECとの協業も、対象を現地企業にまで広げていく。沖電気は中国市場で今後3年間で200セットのCTstageを販売する計画だが、「日系企業よりも現地企業への導入件数の方が多くなるだろう」(久保マネージャ)という。
家電や自動車、食品など大衆消費財の国内メーカーは相次いで中国に進出し、現地の消費者に製品を販売している。ところが、国内ITベンダーは中国に進出しても、ビジネスの対象は日系企業がほとんど。現地企業へシステム製品の販売を試みるケースは皆無に近い。企業のIT需要が急成長する中国市場で、欧米勢に比べて完全に出遅れている。
そうした意味で、沖電気のチャレンジは国内のITベンダーにとって刺激になるはずだ。
同社は11月末、現地販売パートナー向けにセミナーを開催する予定で、「それまでには最初の導入事例が発表できる」と強気だ。追随するベンダーは現れるか。
沖電気工業が、今秋からCTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)事業で中国市場へ攻勢をかけている。国内で高いシェアを誇るCTIシステム「CTstage(シーティーステージ)」を武器に、まずは日系企業への拡販を狙っていたが、予想以上のスピードで現地企業での導入が進みそうだ。現地の販売パートナーが積極的に営業を仕掛け、すでに現地企業との商談が何件も誕生している。中国では現在、中小規模コールセンターの設立ラッシュを迎えている。CTstageは国産のIT製品としては初めて、中国のローカル市場で成功する可能性を秘める。(坂口政憲●取材/文)
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