その他
新マウス戦争勃発 コクヨ、ロジクールが巻き返し宣言
2003/10/27 15:00
週刊BCN 2003年10月27日vol.1012掲載
10月14日にコクヨ、16日にはロジクールが記者会見を開き、マウスの新製品を発表した。マウスの新製品で記者会見まで行うのは極めて異例だ。それも2社が立て続けてとなれば、異例さは際立つ。成熟市場と見られているマウス市場で何が起きているのか――。BCNランキングによれば、マウスのブランド数は約50、流通しているモデル数は1000弱に及ぶ。単価は100円から1万円にまで幅があり、9月時点での平均単価は2800円強となっている。同市場では、エレコム、サンワサプライ、マイクロソフト、ロジクール、アーベルが上位5社として覇を競い合っている。(石井成樹●取材/文)
技術革新で価格を維持
■平均単価は2800円、コードレスマウスが焦点に
エレコム、サンワサプライが2強として君臨。3位にはマイクロソフトがつけ、4番手争いをロジクール、アーベル、ロアスの3社が繰り広げるというのが現在の構図である。
コクヨは、自社ブランド製品でのシェアは非常に低いが、アーベルと戦略的提携をしているので、実質的にはコクヨ・アーベル連合軍としてとらえることができる。
この顔ぶれを見ればわかる通り、マウスはサプライメーカーの持ち分野の商品である。ある意味でそれほど技術力は必要ないと見られ、デザイン、手へのフィット感など、使い心地の良さが争点となってきた。
しかし、目立たないながらも技術革新は着実に行われている。トラックボール式から、光学イメージセンサー式に進化。現在はコードレス化、多ボタン化が大きな動きになっている。
実はこうした技術革新が、マウスの単価維持を支えている。マウスの単価は、2年前は3000円強だった。現在は2800円強となったが、200円ほどの落ち込みで済んでいるのは、比較的高額でも売れる光学式マウスへの世代交代が順調に進んだからである。
この世代交代期に、巧みな戦略を見せたのがエレコムだ。それまでのトップメーカーだったサンワサプライから1位の座を奪った。
現在、そうした新たな世代交代の可能性を秘めているのが、コードレスタイプ。コクヨ、ロジクールとも無線(RF)式のマウスを商品化した。
ロジクールはコードレスマウス、コクヨはワイヤレスマウスと呼んでいるが、両方ともパソコン本体との間は無線でつなぎ、コードをなくしたマウスである。煩わしいコードが不要になるので、使い勝手は非常に向上するというのがうたい文句だ。
コクヨの「ザ・フィットマウス」はオープン価格だが実売は6000円前後、ロジクールもオープン価格としているが、ロジクールストアでの販売価格は、4ボタンモデルが4980円、6ボタンモデルが5980円。ロジクールはコード付きのオプティカルマウスも投入したが、これは2980円となっている。
コードレスタイプは、2000円から3000円高くても売れると考えているわけである。販売店にとっても、5000-6000円で売れるマウスの登場というのは大歓迎である。
マウスの年間回転需要は400万台といわれている。本体には必ず付いてくるにもかかわらず、アフターマーケットの台数規模は大きい。
「ユーザーはマウスを消耗品と見ているので、買い替え需要が非常に強い。多少高くても、使い勝手の良い商品が登場すれば、必ず売れる」(笠松喜代次・コクヨITコミュニケーションカンパニー長)。
ロジテック(ロジクールの親会社)のアシシュ・アローラ氏も、「既存技術の製品が安くなっていくのはどのジャンルの商品も同じ。そこに多少高くても売れる魅力ある商品を投入し、全体としての単価下落に歯止めをかけるというのは当社が一貫して取ってきた政策。コードレスオプティカルマウスは、必ず新しい市場を切り開く」
両社とも強気だが、この年末商戦でシェアに異変を呼ぶことになるのかどうか、注目される。
■ロジテックとマイクロソフト、ワールドワイドでは2強
店頭では、マイクロソフト、ソニーの攻勢も目立つ。マイクロソフトの台数シェアは3位だが、金額シェアでは2位をキープしており、月によってはエレコムを追い抜きトップになることもある。
今回のコクヨ・アーベル連合軍、ロジクールの新製品投入は、表面的には4番手メーカーの巻き返し策と見ることができるが、少し視点を変えてみると、人間との接点としてのマウスに改めて関心を呼び起こす契機になるととらえることもできる。昔から、マン・マシン・インターフェイスの重要性は指摘されてきたが、その最前線に位置するのがキーボードであり、マウスである。
OSやアプリケーションソフトの完成度の高さが増せば、実際の使い勝手を左右するのは、キーボードやマウスになってくる。
パソコンのトータルとしての使い易さを向上させるという点で、キーボードやマウスは見かけ以上の重要さを持っており、そのことに気がついているマイクロソフトやソニーはマウスに執着しているのであろう。
ところで、こうしたマウスでも最後にものをいってくるのは量産規模ということになろう。
実は、ロジテックとマイクロソフトの2社は、ワールドワイドでマウスの2大メーカーとして君臨している。「米国や欧州では、マウスメーカーといえばロジテックとマイクロソフトしか認知されていない。3位以下は国によって異なるが、当社から見ればその他の扱い。怖いと思うところは見あたらない」(ロジテックのアローラ氏)という。エレコムは欧州に進出したが、両社からすると「視野の外」というニュアンスが伝わってくる。
ロジテックは欧州系のメーカーだが、マウスで成功し、コードレスキーボード、ウェブカメラなどでもヒット作を生み出し、昨年の年商は11億ドルを突破したという。中国に工場を構え、3500人を雇用している。
一方、日系メーカーは、サプライ業界だけでなく、パソコン業界全体が国内ばかりを向き過ぎているきらいがある。コップの中の戦いでなく、世界に出ていかない限り、いずれはマウスもロジクール、マイクロソフトの商品になってしまうだろう。
コードレスの次にはどんな技術革新が登場するのか。ロジテックでプロダクトマーケティング部門ディレクターを務めるアローラ氏は、「充電可能タイプ」だと断言する。コードレスマウスでは、電源に電池が必要だが、これを充電式にするというわけだ。電池は安いので、充電式がどれほどのインパクトをもつかは不明だが、1つの方向性ではあるようだ。
10月14日にコクヨ、16日にはロジクールが記者会見を開き、マウスの新製品を発表した。マウスの新製品で記者会見まで行うのは極めて異例だ。それも2社が立て続けてとなれば、異例さは際立つ。成熟市場と見られているマウス市場で何が起きているのか――。BCNランキングによれば、マウスのブランド数は約50、流通しているモデル数は1000弱に及ぶ。単価は100円から1万円にまで幅があり、9月時点での平均単価は2800円強となっている。同市場では、エレコム、サンワサプライ、マイクロソフト、ロジクール、アーベルが上位5社として覇を競い合っている。(石井成樹●取材/文)
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