その他
オープンソースの普及なるか!? 日・中・韓が懇談会を開催
2003/11/24 15:00
週刊BCN 2003年11月24日vol.1016掲載
OSS(オープンソースソフトウェア)の普及拡大を目指して、日本、中国、韓国の3か国の官民による活動が本格化する。2003年11月14日に情報サービス産業協会(JISA、佐藤雄二朗会長=アルゴ21会長)主催により、OSSの利用普及を目指す「日中韓オープンソースビジネス懇談会」が開催され、その場で日中韓のITサービス業界団体によりOSSの普及を目指すことで合意し、「日中韓OSS推進パートナーシップ」(仮称)の設置を決定。さらに、12月には3か国情報産業担当省の局長級会合を北京で開催し、OSSの普及のためのパートナーシップ設置と活動に関する具体策を協議する。日中韓の東アジア3か国がOSSで共同歩調を取っていく可能性が高まり、さらに日本政府に対してOSSを調達することを「強く」働きかけていくという。こうした動きに対してマイクロソフトがどう出てくるかに注目が集まっている。(川井直樹・佐相彰彦●取材/文)
3国共同の推進組織を設立へ
■OSSの課題をブレークスルー、東アジアからの技術開発をアピール
今回の「日中韓オープンソースビジネス懇談会」のオープニング。佐藤雄二朗・情報サービス産業協会(JISA)会長は、「日本では、トロンという高度なOSSが開発されている。しかし、OSSは市場でのシェアがまだ低い。ユーザーの選択肢として普及させるためには、OSSが抱える課題をブレークスルーしなければならない」とし、陳冲・中国軟件行業協会(CSIA)理事長兼情報産業省電子情報製品管理局副局長は、「中国ではOSSが受け入れられ、このソフトを開発する企業が目ざましい成長を遂げている。OSSの発展のために、3国が交流することが必要」と、3か国の連携の重要性を強調した。
さらに、李龍兌・韓国情報産業聯合会(FKII)名誉会長は、「3か国が1つの国家のように基盤を作っていくことは、世界にOSSを発信していくうえで重要なこと」として、東アジアから世界をリードする技術開発の推進を大きくアピールした。
こうした懇談会を3国共同で開催したのは、もちろん今回が初めて。
懇談会で経済産業省の豊田正和・商務情報政策局長は、「今後は、各国の協会が連携を図ることに加え、中国の情報産業省と韓国の情報通信省の政府機関とも連携を強化していく。3か国の連携でOSの選択肢が増えるとともに、技術の変化に対応した総合運用性の確保、社会的なリソースの拡大などを図ることができる」と述べ、日本政府として支援していく方針を明らかにした
中国・情報産業省でも、「マーケットがオープンでなければ3国共同とはいえない。平等なステージをさらに提供していく」(陳・電子情報製品管理局副局長)と、日韓企業による中国参入を支援していく方針だ。
また、韓国・情報通信省は、「人材交流を深めていき、ソフトウェアを製造する国になる」(金寧文・情報通信部情報通信政策局ソフトウェア振興課長補佐)とし、新たなソフト産業を拡大する意図もあって、それぞれがOSSに対する支援を打ち出した。
■「日本0SS推進フォーラム」設立、経産省も全面的にバックアップ
今回の日中韓オープンソースビジネス懇談会後、3国はそれぞれがOSS推進組織の設立を進めることを決定した。
日本では、システムベンダーやユーザー企業、学識経験者などが参集し、「日本OSS推進フォーラム」ができる。代表幹事には、桑原洋・日立製作所取締役。現時点では、参加企業が日立、富士通、NEC、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)、松下電器産業、ソニーといった大手電機メーカーに加え、ソフトを利用する東京海上火災保険や東京ガスなど合わせて16社。加えて、金沢大学や慶応義塾大学の2大学も参加する。
経産省の外郭団体である情報処理新興事業協会(IPA、藤原武平太理事長)が事務局となることからもわかるように、経産省も全面的にバックアップする。
3か国の協力を加速するため、「日中韓OSS推進パートナーシップ」(仮称)は、来年3月に北京、7月札幌(予定)、11月ソウルと、すでに会合を予定している。
官民挙げて着々とOSS普及のための地盤が固まりつつある。日本政府もOSSの採用に対して前向きなように見える。
もっとも、日本政府としてバックアップに言及したが、OSSの採用については、「あくまでも選択肢が増えるということ。OSS採用をコミットするものではない」(嶋田隆・経済産業省商務情報政策局情報処理振興課長)と、トーンダウンする。その背景には、80年代後期にトロンの採用を推進しようとした通産省(当時)に対して、貿易摩擦を背景に米国が事実上ストップをかけた過去があるからだ。
東アジア3か国の政府や公共部門、企業などでOSS採用が広がれば、それは直接、マイクロソフトにとって脅威になる。e-Japan推進の過程でもOSSの採用が検討課題に上っただけで、ビル・ゲイツ会長が来日し、ウィンドウズのソースコードの一部公開をコミットしたと伝えられていることでも明らかだろう。
李FKII名誉会長はこの点について、「OSSで利益を上げているのはほとんどが米国企業。特定の企業がアクションを起こすことはないだろう」と笑って答える。
3か国連携によるOSS普及が本格的に始動する。外圧の予感とともに、日本にとって重要なのは、「日本はOSSの導入で中国や韓国に大きく遅れをとっている」(佐藤JISA会長)という点だろう。すでに中国では、「政府がOSSを政策として導入」(陳CSIA理事長)しており、韓国は政府の情報システムがもともとUNIXで構築されおり、さらに「政府がOSSを導入する政策を98年から3か年計画で行った。このプロジェクトに韓国内のソフトウェア企業が参加した」(李FKII名誉会長)という実績がある。
日本のソフト関連企業のどれほどが「OSの選択肢を増やす」という目的に賛同し、OSS開発を拡大していくかは未知数。現実に、「ネットワークサーバーなどの需要はあるが、基幹系への普及はこれから」と明言する懇談会参加者もいる。
e-JapanでもOSSの採用が認知されつつある。北海道のように自治体やIT産業がスクラムを組んで普及を進めるケースも出てきた。3か国によるOSS普及促進を竜頭蛇尾に終わらせないためにも、外圧に屈せずIT業界と政府機関の連携による普及促進に“本気”で取り組まなければならないことは言うまでもないだろう。
OSS(オープンソースソフトウェア)の普及拡大を目指して、日本、中国、韓国の3か国の官民による活動が本格化する。2003年11月14日に情報サービス産業協会(JISA、佐藤雄二朗会長=アルゴ21会長)主催により、OSSの利用普及を目指す「日中韓オープンソースビジネス懇談会」が開催され、その場で日中韓のITサービス業界団体によりOSSの普及を目指すことで合意し、「日中韓OSS推進パートナーシップ」(仮称)の設置を決定。さらに、12月には3か国情報産業担当省の局長級会合を北京で開催し、OSSの普及のためのパートナーシップ設置と活動に関する具体策を協議する。日中韓の東アジア3か国がOSSで共同歩調を取っていく可能性が高まり、さらに日本政府に対してOSSを調達することを「強く」働きかけていくという。こうした動きに対してマイクロソフトがどう出てくるかに注目が集まっている。(川井直樹・佐相彰彦●取材/文)
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