その他
2004年IT市場動向 低価格競争は終息へ
2004/01/12 15:00
週刊BCN 2004年01月12日vol.1022掲載
一昨年、国内の企業向けパソコンやサーバー販売では、どの大手ITメーカーも「デルの攻勢」に翻弄された。昨年は、各社が打ち出した対抗策で「低価格競争」が激化。しかし、それも年末には一巡し、「低価格は当り前、高付加価値で勝負する」時代へと転換が図られた。従来型のシステム構築では“費用対効果”が明確に計れないユーザー企業の不満が、大手IT各社に高付加価値化を迫り、実際にシステム構築を担うパートナー施策に変革を求めている。各社のパートナー戦略は新たな段階に入ったようだ。
パートナー戦略が新たな段階に
旧コンパックコンピュータとの合併の混乱により、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)にとって、02年は“空白の1年間”だった。そこで同社は、昨年1月、IAサーバーの価格を最大35%引き下げ、“デル対抗”を鮮明に打ち出した。その結果、「パソコンなどへの相乗効果は絶大」(窪田大介・執行役員パーソナルシステムズ事業統括チャネルパートナー営業統括本部長)で、昨年1年間は企業向けパソコンの販売台数が前年比で38%増加し、息を吹き返した。
日本HPは昨年6月、国内大手ITメーカーが昨年初からテコ入れを始めたパートナー向け技術者支援制度をようやく開始。「やっと競合他社に追いついた。これで同じ土俵に乗れる」(窪田執行役員)と、ウェブ・電話によるダイレクト販売と、パートナー経由による販売の両面から攻勢に出る。
日本HPの低価格路線は他の大手ITメーカーにも波及し、昨年1年間は「低価格競争」に揺れた。しかし、年末にはその傾向も一巡した模様で、むしろパートナー戦略の転換を図り、ユーザー企業に中・長期的なビジネス戦略やTCO(システム総保有コスト)削減策など、付加価値の高いソリューションを提案し、差別化を図ろうとする施策が目立ってきた。
もともと低価格路線の引き金をひいたのは、02年にパソコンとサーバーの価格を大幅に下げたNECだともいわれる。だが、日本HPの低価格攻勢で、「安さのメリットが半減した」との声が高まったのが昨年後半。販売チャネルの整理や製品の低価格化など、外資系メーカーに近づいたNECだが、そんな同社が「大きく違う」と主張するのは、02年末に開始したパートナーのSE(システムエンジニア)能力を高めるための「他社にない手厚い支援体制」(細谷豊造・パートナービジネス営業事業本部長)という。
各社の低価格路線は、ダイレクト販売が主体の「デルの勢いを止めた」(大手ITメーカー幹部)ともいわれ、パートナーの販売力が雌雄を決する時代へと転換した印象だ。日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の大歳卓麻社長は、「従来型のハード販売にとどまらず、中・長期的な新ソリューションの提案と効率の良いサポートができる力量が試されるのが今年」と話す。
日本IBMは昨年末までに特約店を半分に整理。この結果、「独自ソリューションを持ち、IBM製品と連動できる企業」(橋本孝之・常務取締役システム製品事業担当)などの厳しい登録基準を課した1次店約120社が誕生した。技術開発やベンチマークテストなどの情報提供や、営業担当者とSEを対象にした独自の技術者認定制度で人材育成を図り、“手厚い保護”のもとで、パートナーの底上げを狙う。
パートナー支援策を昨年7月に体系化したのは富士通だ。「当社のメインプレイヤーはパートナー(約700社)だ」(堀切達也・中堅市場ビジネス本部本部長代理)と、パートナーのソリューションと富士通の基幹系システムの「セット販売」を推進。堀切本部長は、「システム構築の上流工程から扱えるパートナーを拡大する」と、一時の低迷をよそに強気な姿勢に転じている。
ここにきて、大手メーカー各社に共通している課題は、「中堅市場マーケット」への取り組み強化だ。低価格化の定着により、システム導入をしやすい環境が整い、この市場は今年の“主戦場”になりそうだ。そのため、従来以上にパートナーの存在が重要になる。一昨年の「IT不況」を教訓に、各社の“生き残り戦略”は大きな転換期を迎えている。
一昨年、国内の企業向けパソコンやサーバー販売では、どの大手ITメーカーも「デルの攻勢」に翻弄された。昨年は、各社が打ち出した対抗策で「低価格競争」が激化。しかし、それも年末には一巡し、「低価格は当り前、高付加価値で勝負する」時代へと転換が図られた。従来型のシステム構築では“費用対効果”が明確に計れないユーザー企業の不満が、大手IT各社に高付加価値化を迫り、実際にシステム構築を担うパートナー施策に変革を求めている。各社のパートナー戦略は新たな段階に入ったようだ。
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