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松下、新中期経営計画に移行 シャープ、液晶を大規模増産へ
2004/01/19 15:00
週刊BCN 2004年01月19日vol.1023掲載
デジタル家電が最大の注目を集めるなか、大阪に本社を置く松下電器産業とシャープのトップが相次ぎ年頭会見を開いた。松下電器の中村邦夫社長は、2004年度(05年3月期)をスタート年度とする新中期経営計画「躍進21計画」を策定し、「06年度までに連結営業利益率5%を目指す。さらに2010年度には10%を達成したい」とした。一方、シャープは長年続けてきた液晶開発・生産への投資が実を結び、町田勝彦社長は「06年度には液晶の売上高を今年度の2倍、1兆円を目指す」考えを明らかにした。ともにデジタル家電の成長がカギになることは確実で、需要開拓がこれらの目標達成を支えていく。(川井直樹●取材/文)
デジタル家電が成長のカギに
■04年度、「躍進21計画」スタート 「新3種の神器」を成長戦略の要に
03年に火がつき始めた「デジタル家電」が、04年には本格的な需要期を向かえることになりそうだ。「新3種の神器」としてDVDレコーダー、デジタルカメラ、薄型テレビが挙げられ、家電量販店のフロアもこれらを集中して展示・販売している。
電子部品・半導体ベンダーでもこれらに加えて、携帯電話向けにシステムLSIをはじめとした専用の部品生産を拡大しており、来年度の設備投資は、デジタル家電プラス携帯電話向けデバイス生産で、久しぶりの大型投資が計画されている。長らく低迷してきた日本のIT産業復権のチャンスは、デジタル家電にかかっている。
松下電器は今年度が、「破壊と創造」を掲げ01年度から3年間実施してきた中期経営計画「創生21計画」の最終年度にあたる。当初目論んだ「売上高9兆円、営業利益率5%」に対して今年度は売上高7兆4500億円、営業利益率は2%にとどまる見通し。
中村社長は、当初の目標を達成できなかったことについて、「選択と集中を進めるなか、それが徹底できず非効率な部分が残った。売上高9兆円という目標だけが独り歩きした」と強く反省しながらも、「DVDレコーダーや薄型テレビなど、当社の成長を支えるV商品の需要は大きく拡大した」と、デジタル家電へのシフトが「創生21計画」を牽引してきたことを明らかにした。
それでも、「窮地は脱したが、危機的状況には変わりはない」(中村社長)として、04年度をスタート年度とする新中期3か年計画「躍進21計画」のなかでも「破壊と創造」を継続する。松下電工の子会社化も控えており、ホームネットワークなどIT需要の創造の手綱は緩めない。新計画では松下電工の子会社化を織り込んでいないものの、「創生21計画」でやり残した「営業利益率5%」を達成するほか、DVDレコーダー、薄型テレビに加え、手ブレ補正機能を搭載した「LUMIX」が販売好調なデジタルカメラ事業を拡充。これら「新3種の神器」を成長戦略の要に置いた。
そして現在、国内と独工場で月産20万台体制のDVDレコーダーについては、中国・大連やシンガポール工場での生産を開始し、倍増の月産40万台体制とする方針だ。
デルが薄型テレビで市場参入し、年明けに米ラスベガスで開かれたCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)では米ヒューレット・パッカード(HP)のカーリー・フィオリーナ会長兼CEOが家電への本格参入を表明した。
松下電器の中村社長は、「テレビ映像を美しく表現する技術は簡単なことではない。日本メーカーには長年培ったノウハウがある」と、国内家電メーカーの優位性を強調する。その優位性をどこまで生かせるかが、日本の家電メーカーやデバイスメーカーの浮き沈みを分けることになる。
■液晶パネルの生産能力を増強、月産54万台も視野
シャープの町田社長は恒例の年頭記者会見で、「カスタマーオリエンテッドはもちろん大事だが、テクノロジーオリエンテッドな開発がマーケットに受け入れられている。今年は、シャープが独自に開発した技術を製品に応用してニーズを開拓していく」と語り、03年の液晶テレビ「AQUOS」のヒットや、同社の各種液晶デバイスが携帯電話やデジタルカメラなど爆発的に売れた商品に採用されたことで気を良くしている。
シャープは、液晶の生産体制を拡大するために今年初から亀山工場(三重県亀山市)の第2期ラインの稼動を開始した。本格的な量産に入るのは今年夏の予定で、現在の生産能力月間18万台(26インチ換算)に対して32万4000台(同)と2倍近くに拡大することになる。年頭会見で町田社長は、さらに「04年度中に第3期ラインを設置する。04年度中か05年度初めにも稼動開始させる。これで液晶パネルの生産能力は月間54万台になる」と増産計画を明らかにした。
■第2次IT革命はデジタル家電が牽引役に
新工場で使用するガラス基板のサイズは、1500ミリ×1800ミリのいわゆる第6世代。26型換算で12枚の液晶パネルが取れる。ソニーとサムソン電子の合弁会社が、1900ミリ×2200ミリの第7世代を使用するのに比べ、現在の技術では、歩留まりなどの点で有利だという。しかし、半導体ウエハーで300ミリが普及し始めているように、ガラス基板も拡大するのは確実。シャープでは「第8世代という話も出ている」(同社首脳)とし、生産性向上を図っていく方針だ。
第8世代も考慮に入れたうえで、隣接地を使って新たな工場建設を行う意欲も示し、06年度には稼動させたいという。シャープのテレビ用液晶パネルの増産は、町田社長の就任時の“公約”である「テレビをすべて液晶にする」という、98年当時は“夢”と思われたことが現実になってきたため。マーケットではプラズマ・ディスプレイ・パネル(PDP)テレビと競合しているが、薄型テレビへと市場全体が動いており、液晶テレビの需要も拡大していることが大規模増産の自信につながっている。
町田社長は、「第1次のIT革命はパソコンが牽引役となった。今はデジタル家電が第2次IT革命を引っ張る存在になっている」とし、「デジタル家電がパソコンに代わる存在になりつつある」と言い切る。シャープは今後、オリジナル技術開発で成長する分野に注力し、「もはやこれ以上、技術開発できない成熟した分野は縮小する」(町田社長)ことも考えており、デジタル家電への傾注はさらに深まりそうだ。
デジタル家電が最大の注目を集めるなか、大阪に本社を置く松下電器産業とシャープのトップが相次ぎ年頭会見を開いた。松下電器の中村邦夫社長は、2004年度(05年3月期)をスタート年度とする新中期経営計画「躍進21計画」を策定し、「06年度までに連結営業利益率5%を目指す。さらに2010年度には10%を達成したい」とした。一方、シャープは長年続けてきた液晶開発・生産への投資が実を結び、町田勝彦社長は「06年度には液晶の売上高を今年度の2倍、1兆円を目指す」考えを明らかにした。ともにデジタル家電の成長がカギになることは確実で、需要開拓がこれらの目標達成を支えていく。(川井直樹●取材/文)
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