その他
ネットショップ、第2ステージへ 総合型と特化型に2極化
2004/02/16 15:00
週刊BCN 2004年02月16日vol.1027掲載
パソコン専門店や家電量販店のオンラインビジネスが第2ステージに入った。大手サイトでは、異なった業種の商品アイテムをサイトに掲載する総合ポータルサイトを目指すか、パソコンや家電製品の品揃えを強化する特化型サイトに注力するかという2極化の方向に進みつつある。総合型と特化型の双方とも、新規顧客を増やすという目標は共通。実店舗への誘導など「リアル」と「バーチャル」の連携強化にもつなげていく。また、これまで獲得した顧客を地域別で分析し、出店計画に結びつけるといった新しい取り組みも動き出している。(佐相彰彦●取材/文)
出店計画への反映など実店舗との連携強化も
■異なった業種の商品アイテムで新規顧客を開拓していく
ソフマップが運営するネットショップ「ソフマップ・ドットコム」では、パソコンおよび関連機器、デジタル家電機器の販売に加え、スタイリッシュなパソコンデスクやヘアードライヤーなども販売している。サイト内には、このほど「セーフティ・ブランケット」というコーナーを設け、女性をターゲットにインテリアや美容などをコンセプトにした商品や情報を提供している。香水やティーカップなど実店舗で扱っていない商品も掲載されている。
松田信行・総合企画部広報・IR室長によれば、「当社のポイントカード『マイソフマップ』会員になる女性も増えているが、それよりもサイトの顧客から、実際に要望があった」ことから同コーナーを開設。このサイトが女性客を引きつけるようになり、サイト購入者全体の約10%を女性が占めるようになった。
東京・有楽町にある「有楽町ソフマップ」でも女性の来店者増に力を入れている。サイトに掲載した商品を全てを扱っているわけではないが、ネットショップで購入しポイントカードを作った女性客が、リアルの店舗に訪れる可能性も考えられる。「今後も、新規顧客を増やすために、さまざまな商品を取り扱っていく。ほかのサイトとの提携で商品アイテムを増やす」(同)と、さらにネットショップを拡大することを検討しており、「総合ポータルサイトとして拡大させていく」方針という。
ムラウチは、「ムラウチ・ドットコム」の売上高が今年度(2004年3月期)で前年度比約54%増の54億円に達する見通しだ。売上高が増加したのは、購買年齢層の裾野が広がったことが要因。サイトに訪れる年齢層は昨年度までは30-40歳代の男性が8割近くを占めていたが、今年度が5割弱と相対的に減少。代わりに、20歳代と50歳代の男性と女性が増えてきた。さらに、これまではビジネスマンを中心に男性の顧客が大半だったが、今年度に入って女性や高齢者の比率も伸びているという。
矢澤克哲・執行役員EC営業本部長は、「アクセス件数は1日平均で3-4万件で、前年度の1.5倍以上」と、サイトビジネスが好調であることを強調する。「ネットショップの売上構成比で5割近くを占めていたパソコンおよび関連機器が3割弱に減った。その代わりに以前は1割程度だった家電が4割を占めるようになった」と、売れ筋商品も変化してきたという。そのため、「今後は、本などサイトで売れる商品を揃えていく。そのために、他のショップサイトとの協業も検討している」と、拡大戦略の手は緩めない方針だ。
■ブランドを認知させるため、特化型を徹底する
ソフマップとムラウチが総合型のポータルサイトを目指す一方で、ヨドバシカメラでは、「サイトが伸びている理由の1つとして、消費者の間で“ヨドバシカメラブランド”の浸透が進んでいる。このブランドイメージを重視していく」(吉澤勉・グッドコミュニケーション本部長)と言い切る。「ヨドバシカメラで扱っている商品をサイトでも購入できることが顧客の信頼を高めることになる」(同)と、パソコンや家電をはじめとして、店舗にある商品の一部をネットで扱うことを徹底していく。
サイトで掲載している商品数は今年2月上旬時点で約7万アイテム。同社の実店舗では、50万アイテムを揃える店舗も多い。「50万アイテムを単に掲載すれば売れるというものではない。品揃えの豊富さを信頼して訪れる消費者に関しては、機種やメーカー名を入力すれば購入できる検索サービスを提供する」(同)ことで対応する。
「ヨドバシドット・コム」は、パソコンやカメラをはじめとして電気製品などの関連商品を販売するネットショップのなかで最大規模といわれており、02年度(03年3月期)の売上高は約150億円。今年度(04年3月期)は昨年度の1.4倍にあたる210億円弱を見込む。
吉澤本部長は、「昨年度まではパソコンを使い慣れたユーザーが購入する傾向があった。しかし、最近では家庭の主婦がサイトを訪れるケースが増えている」ことを挙げる。
1日平均のアクセス数は、平日が500-550万件で、土日が2割前後アップする。「家族が店舗に訪れるのと同じ感覚でネットショップにアクセスするというのが当たり前になっている。これが休日のアクセス数が上がっている理由」(同)とみている。売れ筋商品についても、「食器洗い機やドライヤーなど家電製品を購入するケースが増えている。冷蔵庫や洗濯機など大型商材も売れ筋になってきた」(同)という。
■家電がパソコン周辺機器を上回る伸び
パソコンおよび関連機器の売上構成比は昨年度までネットショップ売上全体の5割弱だったが、今年度は3割弱にダウン。吉澤本部長は、「売れ筋だった記録型DVDや外付けハードディスク、ビデオキャプチャボードなどパソコン関連商品のストレージや映像処理性能をアップする周辺機器は、売上高が落ち込んではいない。しかし家電の売上高がそれを上回るように伸びている」と、ごく普通のユーザーが生活の一部としてサイトを最大限に利用していることを強調する。
また、大手サイトでは地域別でも顧客の変化が表れているため、サイトで獲得した顧客を分析し、出店計画に役立てている。
ヨドバシカメラでは、関東圏や関西圏の消費者が購入するケースが圧倒的に多い。しかし、「関東、関西以外の地方からの購入者も増えてきた。出店していないにも関わらず購入者が増加しているのであれば、そこに出店するのも1つの手ではないか」(吉澤本部長)という。
関東地区からのアクセスが多いムラウチでも、ムラウチ八王子本店のある東京・多摩地区以外の顧客が95%を占めているのが実情だ。「長期的には、関東のなかで高い購入率が継続している地域に店舗を出店することを検討する」(矢澤本部長)と、同じように顧客の所在地への出店の判断材料にしている。
ブロードバンドの加入者増加にともない、ネットショップで購入する顧客の裾野はますます広がっている。しかもサイトでは、細かい顧客分析や実店舗ではできない品揃えを実現できるという強みがある。今後は、サイトで獲得した顧客や情報を、いかに“リアル”店舗に反映できるかどうかが、量販店の腕の見せ所になりそうだ。
パソコン専門店や家電量販店のオンラインビジネスが第2ステージに入った。大手サイトでは、異なった業種の商品アイテムをサイトに掲載する総合ポータルサイトを目指すか、パソコンや家電製品の品揃えを強化する特化型サイトに注力するかという2極化の方向に進みつつある。総合型と特化型の双方とも、新規顧客を増やすという目標は共通。実店舗への誘導など「リアル」と「バーチャル」の連携強化にもつなげていく。また、これまで獲得した顧客を地域別で分析し、出店計画に結びつけるといった新しい取り組みも動き出している。(佐相彰彦●取材/文)
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