その他
手を組むマイクロソフトとサン 包括的技術提携で合意
2004/04/19 15:00
週刊BCN 2004年04月19日vol.1036掲載
長年の宿敵、マイクロソフトとサン・マイクロシステムズが和解し、さらに包括技術提携を発表した。サンのスコット・マクネリー会長は、マイクロソフトへ繰り返し敵意発言していたので、提携は大きな驚きであった。サンは和解金と自社ライセンス料前受けで巨額の20億ドルを手にし、当面苦境を脱することができる。一方、マイクロソフトは、.NET覇権を狙うウェブサービスで先行するJavaとの相互運用性を高められるというメリットを手にする。同時にJavaでサンとIBMの関係に杭を打ち込む。米国では、一方的にマイクロソフトが莫大な金額を払うこの和解・提携は「株移動をともなわない買収だ」と評し、サンの独自路線弱体化を危惧する声も強い。(中野英嗣●取材/文)
IT業界の構造再編が加速か
■アップル救済劇に似た動き
4月2日、マイクロソフトとサン・マイクロシステムズが1997年から始まった両社間の独禁法や知的財産権に絡む訴訟すべてを和解し、かつ10年間にわたる包括的技術提携で合意した。
マイクロソフトはサンに和解金16億ドル、サン特許使用前払い3億5000万ドルの合計19億5000万ドル(約2100億円)を払う。マイクロソフトはEU独禁法違反など数多くの訴訟戦線を整理するため、まずサンと和解した。
一方、サンは同社の業績がピークだった01年と比べて売上高が40%近く激減し、2004年6月期決算も大幅赤字になることは避けられず、抜本的再建を投資筋から迫られていた。和解はともかく、宿敵同士の提携は業界に大きな驚きを与えたが、サンはとりあえず、巨額資金を手にして大規模人員削減に踏み切り、マイクロソフトプラットフォームとの共存という新しい環境で再建策を模索する。
あるウォール街アナリストは語る。「今回のマイクロソフトの行動は、97年に経営危機になったアップルコンピュータに出資し、救ったことに似ている。これは、米司法省の独禁法包囲をかわす戦略だった。現在のマイクロソフトも独禁法違反の常習イメージを払拭しなければならないので、サンと和解したのだろう。しかし、一方的にマイクロソフトが支払うことは、株が絡まない買収に近い制約をサンに与える」
マイクロソフトは、.NETでウェブサービス覇権を狙うが、今回の提携で先行するJavaユーザーに接近することができる。技術提携で.NETとJavaの相互運用性が高まれば、両プラットフォームが混在するシステム開発や検証コストも下がり、ユーザー、システムインテグレータともにメリットを与えることになる。このように両社、業界、ユーザーすべてにメリットをもたらせることをマイクロソフトは周到に計算したといえよう。
■共通の敵はIBMとLinux
サン経営悪化の要因は、売上高激減と巨額な研究開発(R&D)費だ。自社OSとMPUに固執するサンは、R&Dが売上高の16%を超え収益を圧迫した。しかしサンは、独自路線を放棄しない限り、巨額R&D呪縛から逃れられない。今回の提携で、R&Dも両社負担となり、サンのマクネリー会長は、「18億ドルのR&Dの30%近い5億ドルが削減でき、収益大幅改善が見込める」と期待を語る。
しかし、米ヤンキー・グループのアナリスト、ダナ・ガードナー氏は次のようにサンの独自路線が弱まることを危惧する。
「サンは、シングルアーキテクチャでユーザーを惹き付けてきた。しかし、一方的に巨額を支払ったマイクロソフトは、自社戦略にサンが歩み寄ることを強要するだろう。結果的にサンは独自商品重点からAMDのオプテロンでウィンドウズサーバー拡販をせざるを得なくなり、いずれサンのアーキテクチャが消えることも想定される」
米業界幹部の多くは、両社共通の敵はIBMとLinuxになると語る。マイクロソフトに歩調を合わせるサンの反Linux色が鮮明になれば、Linux盟主を自認するIBMはマイクロソフト・サンへの対決姿勢を強め、世界のIT業界構造再編が加速されるだろう。
長年の宿敵、マイクロソフトとサン・マイクロシステムズが和解し、さらに包括技術提携を発表した。サンのスコット・マクネリー会長は、マイクロソフトへ繰り返し敵意発言していたので、提携は大きな驚きであった。サンは和解金と自社ライセンス料前受けで巨額の20億ドルを手にし、当面苦境を脱することができる。一方、マイクロソフトは、.NET覇権を狙うウェブサービスで先行するJavaとの相互運用性を高められるというメリットを手にする。同時にJavaでサンとIBMの関係に杭を打ち込む。米国では、一方的にマイクロソフトが莫大な金額を払うこの和解・提携は「株移動をともなわない買収だ」と評し、サンの独自路線弱体化を危惧する声も強い。(中野英嗣●取材/文)
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