その他
京セラ、PHS事業を強化 DDIポケットを買収
2004/07/05 15:00
週刊BCN 2004年07月05日vol.1046掲載
京セラ(西口泰夫社長)は、米投資ファンドのカーライル・グループと組み、KDDIからPHS最大手のDDIポケットを買収、PHS関連機器事業の拡大に乗り出した。DDIポケットは足元のキャッシュフローは順調なものの、auに経営資源の集中投入を図りたいKDDIと、アジアでのPHS事業拡大を図りたい京セラの思惑が一致した形。しかし、投資ファンドが50%以上の資本を持つ格好でのLBO(買収先資産を担保にした借金による買収)である以上、3年程度の遠くない将来には、イグジット(投資の出口)がやって来る。今後の京セラのPHS関連機器事業にとって安定的なイグジットにたどりつけるのか。第一歩を踏み出したばかりだが、タイムリミットまでの時間は長くない。(山本雅則(大阪駐在)●取材/文)
イグジット時に安定性確保できるか
■実質的にはMBO
DDIポケットは、稲盛和夫・京セラ名誉会長が育てた事業。音声通話で携帯電話に水を開けられたPHSも、定額データ通信サービスの有用性は認知されている。加入者数は290万人台を維持、営業利益も2003年3月期、04年3月期と連続して200億円を超えている。しかし、KDDIグループの中では売上高の6%に過ぎず、投資の優先順位は低くなる。KDDIグループのくびきから脱しないと、苦戦する他のPHS事業者の二の舞だ。今回の京セラ、カーライル・グループによる買収で、年内に予定している高速データ通信の開始やその他の先行投資も担保されるため、経営自由度を高める意味で、実質的にMBO(経営陣による企業買収)に近い。
一方、端末や基地局を供給している京セラにとっては、日本での技術やサービス開発が加速すれば、中国を含むアジアでの技術的優位やプレゼンスを高められる。パートナーを組むのも「得意業種はテレコム」と公言するカーライル・グループ。安達保・日本代表自身、三菱商事から第二電電(現KDDI)に出向し、立ち上げに携わった経緯がある。買収合意会見でも「PHS事業の潜在性に注目した中長期的な投資が前提。短期での転売は考えていない」と強調したことも頼もしい。
しかし、投資ファンドの本質は、投資対象の価値を最大化し、資金を回収すること。かつて安達代表は、「一般論として、日本企業への投資から得られるリターンが少ないことはありうるが、カーライルのリターンが少ないこととイコールでない」と指摘した。
実際、初のテレコム系企業投資となったイー・アクセスは、投資2年後の03年10月に東証マザーズ上場、その後04年6月にカーライルは株式を売却し、イグジット。31億円の投資は4倍のリターンを生んだ。
■アジア市場を見据える
DDIポケットの場合、投資額は2200億円で、イー・アクセスとはケタ違い。カーライルが60%、京セラが30%を分担する。京セラには、リターンよりPHS事業強化という目的の方が重要だ。KDDIが引き続き10%の出資比率を維持するため、株主総会の重要事項の拒否権は保有できるが、経営のハンドリングにはカーライルの力が影響を及ぼすことも考えられる。
仮に3年後のイグジットを想定した場合、画期的な技術上のブレークスルーがなければ、第3世代普及に注力する携帯電話と、パソコンなどでのデータ通信を前提としたPHSがバッティングすることは考え難い。「通信量の多いパソコンベースの顧客は、当面取り込みたくない」のが携帯キャリアの本音。また、料金的に折り合わない可能性が高く、雪崩を打って携帯電話に置き換わることはなさそうだ。「すでにPHSは、インフラが整備されており、日銭が入る。イグジットの受け皿に手を挙げるスポンサーが出ないことはない」(国内金融機関アナリスト)との見方もある。しかし、日本市場の拡大も考えにくい。
西口・京セラ社長は合意発表会見で「キャリアになることを避けるため、マジョリティを持たなかった」、「ハードベンダーの地位を確保するため30%にとどめた」と語った。しかし、アジア市場を見据え、ハードベンダーとしての安定を確保するため、もう一度同じ選択を迫られる可能性はある。
京セラ(西口泰夫社長)は、米投資ファンドのカーライル・グループと組み、KDDIからPHS最大手のDDIポケットを買収、PHS関連機器事業の拡大に乗り出した。DDIポケットは足元のキャッシュフローは順調なものの、auに経営資源の集中投入を図りたいKDDIと、アジアでのPHS事業拡大を図りたい京セラの思惑が一致した形。しかし、投資ファンドが50%以上の資本を持つ格好でのLBO(買収先資産を担保にした借金による買収)である以上、3年程度の遠くない将来には、イグジット(投資の出口)がやって来る。今後の京セラのPHS関連機器事業にとって安定的なイグジットにたどりつけるのか。第一歩を踏み出したばかりだが、タイムリミットまでの時間は長くない。(山本雅則(大阪駐在)●取材/文)
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