NEC(金杉明信社長)は、パートナーが行う中堅・中小企業市場向け情報システム構築を、今後3年間ですべてIPベースに切り替える。現在、販売網はデータ系と音声系に分かれているが、パートナーには両方を扱えるよう徹底する。中堅・中小企業市場で、同社はこれまで安定した成長を遂げてきた。だが、ここにきて他の大手ITメーカーが中堅・中小市場を狙い、新たな戦略を打ち出している。NECは強みである情報システムとネットワークを融合させ、短期間で低コストなIPベースのシステム構築を展開する。(関連記事12面)
中堅・中小向け、今後3年間で

NECは今後3年間で、IPベースのシステム構築パートナーを育成し販売を拡充するため、「セールスパートナープログラム」を本格稼動した。3年間でパートナー各社に、IPベースのシステム構築、運用、保守などの技術者資格「IPTPC」の取得者を2人以上育成する。また、企業の業種・業態に応じて、NECのIP製品とパートナー各社のオープン系ソリューションを組み合わせた新たなシステム構築の投資対効果(ROI)を算出する作業を開始。これにより、IPベースのシステム構築に関する新規テンプレート(ひな形)などの開発を進める。
今年6月には、データ系と音声系と融合した「ユニバージュソリューション」の中堅・中小企業向けソリューションパックの提供を開始した。
NECはユニバージュソリューションで今後3-5年内に年間約3000億円の売上高を目指していくが、このうち「大半を中堅・中小企業向けの販売で稼ぐ」(服部高明・企業第二ソリューション事業部統括マネージャー兼UNIVERGEパートナープログラム推進部長)とし、中堅・中小企業向けソリューションパックを約4000システム販売する計画だ。
中堅・中小企業の業務に役立つ新製品の共同開発では、「アプリケーションパートナープログラム」を開始。6月時点で、オービックビジネスシスコンサルテント(OBC)など、業務ソフトやセキュリティ、携帯電話、コンタクトセンターなどに関連するISV(独立系ソフト会社)などから250余りのアプリケーション開発案件が寄せられた。NECでは、「他社に先行した分、有益なアプリケーションが製品化できる」(服部部長)と期待する。
中堅・中小市場では現在、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)や富士通などが戦略強化に乗り出し、NECを追い上げている。また、NECの既存販売パートナーのうち、PBX(構内交換機)の設置や社内電話網の構築、保守・サービスを担う音声系の販売パートナーは、需要低下に苦戦している。この両面を打開するため、最も強みを生かせるIPベースの戦略を中堅・中小企業向けビジネスの柱にした。
NEC以外でも、日立製作所が「コミュニマックス」というIPベースのソリューションを6月下旬から提供開始するなど、大手ITメーカーの動きが活発化している。日立は、「当社のソリューションも中堅・中小企業市場が中心」(木原史朗・ネットワークソリューション事業部IPテレフォニー事業推進センタセンタ長)としており、NECと同様に中堅・中小企業向けにIPベースのシステム構築を拡大する。
NECの有力パートナーである大塚商会は、「当社はすでにIPベースと従来のシステム構築の両面で実績のある企業なので、NECの方針転換に期待は大きい」(君島博明・企業通信システム営業部部長)と、7月1日付で通信システム専属の部門を新設するなど、本格的な活動を開始している。
中堅・中小企業向けのIPベースによるシステム構築は、国内でまだ導入事例が少ないため、企業ニーズに合わせROIを明確にしたシステム提案ができるかが成否を分けそうだ。