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インド、中国でのオフショア開発 “一国集中型”の傾向強まる
2004/07/12 15:00
週刊BCN 2004年07月12日vol.1047掲載
インドと中国。日本のITベンダーが開発コストの削減を目的に、ソフト開発の海外発注先として筆頭に挙げるのが両国。コストが安い点は共通しているが、技術者の日本語スキルや開発規模など違いは多い。大手企業を中心に両国のソフト開発会社に委託するケースが増えているが、インドと中国のそれぞれの特色を捉え、両国に委託先を分散させるのではなく、“一国集中型”が目立つ。また、国だけでなく委託先企業も絞り、少数の企業と連携を強化することで、効率的なオフショア開発を図ろうとする動きも出てきた。大手企業のオフショア開発は、委託先を開拓してきた時期を経て、“集中”の時代に入ってきた。(木村剛士●取材/文)
委託先開拓から“集中”の時代へ
■インド、開発コストは日本の約半分
インドは、オフショア開発拠点として世界トップの開発規模を誇る。開発コストは、日本のソフト開発会社に比べ約半分といわれる。インドのソフト技術者は約60万人で、新規技術者の輩出も年間約19万人と、その規模はさらに拡大している。中国のソフト技術者が約30万人で、毎年増える新規技術者が年間約6万人であることをみても、インドの開発規模の大きさが分かる。
このインドにオフショア開発を集中させるのが富士通だ。ミドルウェアなどを開発するソフトウェア事業本部が海外ソフト会社に発注する案件のうち、インドは約70%を占める。
富士通の池田敬昭・ソフトウェア事業本部開発技術統括部主席部長は、インドに集中させる理由について、「インドのソフト会社は、数千人から1万人の技術者を保有する企業が多く、中国は1000人以下がほとんど。確かに中国は日本から近く、日本語に長けている技術者も多いので、トラブルが発生してもすぐに対処できる。しかし、富士通独自のソフト開発手法のノウハウや知識に対応するには大規模な企業でなければならない。インドの大企業に集約する方が、中長期的に見てコスト削減効果は大きい」と話す。
富士通は、1990年前半からオフショア開発を進めているが、一貫してインドへの発注を重視。発注先は調査やトライアル発注などを経て、02年に提携した2社に今も固定しており、「今後も増やすつもりはない」(池田主席部長)という。これは、オフショア開発を始めた当初、「さまざまな企業に委託した結果、コストがかさんだ」(富士通幹部)という反省から。
一方、NECは中国を重要視している。海外発注案件の中で中国企業が占める割合は80%。江崎宏・システム・サービス企画本部ソフトウェア購買部海外ソフトウェア企画マネージャーは、「距離、コスト、日本語の習熟度、全てにおいてインドよりも中国の方が長けている。加えて、中国は日本から進出する企業が増えており、中国企業と付き合っていることはプラスになる」と説明する。NECは、05年に中国の開発要員を4000人規模に増やす(03年実績は3100人)計画で、今後も、さらに中国での開発体制を拡充する。
ソフトの受託開発専門のビートックは、2003年3月に中国大連市に現地法人を設立、この1年間で技術者を100人揃えた。堀口大典社長も、「中国のエンジニアは、インドよりも日本語を話せる技術者が多く、開発手法も日本に似ている」と“中国派”だ。
■余分な費用が発生する場合も
富士通とNECが重要視する委託先は違うが、委託先を“絞る”というのは両社に共通する戦略。富士通はインドの2社に集中して委託する方針を今後も貫き、NECは開発委託先を現在の40社から、今後20社まで減らす計画を打ち出している。理由はともに、優秀なソフト開発企業に自社の開発ノウハウを蓄積させることと、委託先企業との連携強化による開発の効率化だ。
オフショア開発の問題は、開発手法の違いやコミュニケーションの欠如がもたらす再開発などの無駄なコストの発生。中国のソフト開発技術者の人件費は平均日本の7分の1だが、再開発のコストが発生していることで、NECのコスト削減効果は3分の1となり労働コストの安さを生かしきれていない。
委託する国や企業を限定して、自社のノウハウを特定の委託先に蓄積するというのは、効率的な開発によりコスト削減をさらに進めるための方策だ。これを生かさなければ、オフショア開発の意味はなくなる。委託先の絞り込みは、国内大手メーカーが闇雲にオフショア開発での発注先を拡大していた時代の終焉を告げている。この戦略の如何で、コスト競争力での明暗が分かれることになる。
インドと中国。日本のITベンダーが開発コストの削減を目的に、ソフト開発の海外発注先として筆頭に挙げるのが両国。コストが安い点は共通しているが、技術者の日本語スキルや開発規模など違いは多い。大手企業を中心に両国のソフト開発会社に委託するケースが増えているが、インドと中国のそれぞれの特色を捉え、両国に委託先を分散させるのではなく、“一国集中型”が目立つ。また、国だけでなく委託先企業も絞り、少数の企業と連携を強化することで、効率的なオフショア開発を図ろうとする動きも出てきた。大手企業のオフショア開発は、委託先を開拓してきた時期を経て、“集中”の時代に入ってきた。(木村剛士●取材/文)
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