その他
韓国で定着する電子政府サービス キオスク端末使い各種申請可能に
2004/07/19 15:00
週刊BCN 2004年07月19日vol.1048掲載
日本の電子政府構築は、お世辞にも急速に進んでいるとは言えない。中央政府や地方自治体でも、行政サービス向上のためにITを取り入れる動きは着実に進んではいるが、それが広がりを見せるところまではいかない。しかし、お隣の韓国はいち早く電子政府サービスを開始し、それが市民生活にも定着しているという。国の置かれた現状や文化の違いと言ってしまえばそれまでだが、ワンストップサービス実現のためのテクノロジーや制度に国境はない。韓国で行政IT化の現状を見てきた。(川井直樹●取材/文)
調達庁、政府案件から自治体事業までカバー
■国家プロジェクトでネットワーク整備
「日本は高速道路を作りながら、そこに信号を作りたがる」。高選圭・世宗研究所日本研究センター研究委員は、日本の電子政府構築をこう例えて言う。情報ネットワークなどのインフラを整備しながら、個人情報保護といったセキュリティを重視することや既存の行政事務のルールを生かそうとするなど、せっかくの“高速道路”も宝の持ち腐れになっているという指摘だ。同様の指摘は、かつて本紙コラムの執筆者でもあった趙章恩・JIBC(ジャパン・インターネット・ビジネス・コミュニティ)会長も、「韓国は“とにかくやってみよう”という意識がある。インターネット文化が発達したのもそのため」とし、ネット利用に、ある面では消極的になる日本の文化をいぶかっている。
韓国の電子政府構築やインターネットを活用したビジネスが普及した要因として、1997年の経済破綻とその後のIMF(国際通貨基金)管理体制への移行を挙げる専門家は多い。韓国が国際競争力を回復するための1つとして、98年5月に制定した「国家情報化促進基本法」に代表される、情報利用の促進があった。
この国家プロジェクトに沿って高速ネットワーク整備が急速に進み、02年11月には本格的な電子政府サービスの利用が始まった。すでに、税金の電子申告と納付、証明書の発行、国民年金など社会保険の電子化、住民票、印鑑証明、戸籍謄本などの申請・交付がすべて電子的に行える。
■ワンストップサービスが実現
電子化の最大のメリットは、ワンストップサービスの実現だ。たとえば転居申請を出すと、その住所情報に基づいて自動車の登録地から学校、社会保険などすべての住所情報が書き換えられる。それぞれを所管する役所に出向かなくても、何枚もの届けを提出しなくても済む。
こうした手続きは、自宅のパソコンだけでなく、役所や地下鉄の駅といった公共施設をはじめ百貨店などにも置かれたキオスク端末からも可能だ。利用者は17歳以上の国民が所持できるIDカードがあれば、指紋認証で本人確認し、住民票などの交付が受けられる。
日本でも電子入札・調達がスタートしているが、韓国政府は政府および自治体の調達案件について、調達庁が運営するGePS(ガバメント・e-プロキュアメント・システム)で一元的に行っている。GePS上で対象となるのは、6万ドル以上の購入案件、250万ドル以上の公共工事で、地方自治体は750万ドル以上の事業となっている。
韓国政府が電子調達に乗り出したのは、「予算の効率的な使用と入札の透明性を確保するため」(調達庁情報管理課担当者)。日本でも電子入札に積極的なのは過去に不公正な入札で事件を起こしたような自治体が多いが、そのあたりは日韓に違いはなさそう。
応札する企業から見れば、すべてシングルウィンドウで情報を把握でき、効率的に事業参加の意思を表明できるとあって好評だ。「競争に参加する機会が増えている」と数千社もの企業がGePSに入ってきている。
また、特許庁では特許出願を電子化し、特許情報もデータベース化したことで年間2500万ドルの経費削減につながったという。特許庁の担当者によれば、「日本の特許出願をモデルにした」というが、専用線を使用する日本とインターネット経由の韓国では、運用コストも自ずと異なってくる。
世界に、日本に“追い着き追い越せ”という勢いで進んできた韓国の電子政府構築。誰もがIT先進国と認めるポジションを確立している。振り返って日本の電子政府構築は…。住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)および住基カードの利用1つとっても進んでいるとは言えない。国内の新聞報道によれば、住基カードの初年度発行枚数は当初計画の300万枚どころか25万枚にとどまっているという。
このままでは、2005年度に最先端IT国家の実現という目標も厳しいだろう。
日本の電子政府構築は、お世辞にも急速に進んでいるとは言えない。中央政府や地方自治体でも、行政サービス向上のためにITを取り入れる動きは着実に進んではいるが、それが広がりを見せるところまではいかない。しかし、お隣の韓国はいち早く電子政府サービスを開始し、それが市民生活にも定着しているという。国の置かれた現状や文化の違いと言ってしまえばそれまでだが、ワンストップサービス実現のためのテクノロジーや制度に国境はない。韓国で行政IT化の現状を見てきた。(川井直樹●取材/文)
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