BCN(社長・奥田喜久男)は11月5日、東京・四谷の主婦会館プラザエフで「第3回BCNフォーラム」を開催した。今年7月に続き3回目となる今回は、野村総合研究所(NRI)の中村博之・情報・通信コンサルティングニ部上級コンサルタントグループマネージャーから、「デジタル情報機器・ネット家電の将来像」をテーマに、2008年の北京オリンピックを踏まえて3-5年後、さらに2010年に向けたユビキタス情報についてマクロ的な視点での分析を講演頂いた。また、BCN総研シニアアナリストの田中繁廣は、「04年PC市場の分析と今後の見通し」と題し、BCNのPOSデータと在庫、滞留在庫、属性データをカギにパソコンの購買行動について講演を行った。講演要旨は以下の通り。(田澤理恵●取材/文)
野村総合研究所・中村博之氏講演
■魅力ある製品が増加 ネットに接続される機器が増加し、中長期的には、家電がネットにつながっていくことで今までと違う価値を生み出す。将来的には白物家電や住設機器とのつながりも重要になってくるとみている。
以前にも、パソコンが持っている機能を家電に代替するという試みがなされたことがある。しかし、かえって操作が複雑化し失敗に終わった。その後パソコン代替のトレンドはなくなっていた。しかし、近年のインターネット常時接続を背景に、ネットに接続することで家電自体が新たな機能・サービスを提供するという方向に動いている。
野村総合研究所の「消費者1万人アンケート調査」によると、2000年と03年を比べると家電への支出意欲は増加傾向にあり、消費者にとって魅力のある家電製品が増えてきたといえる。また、家での余暇の過ごし方についても、「ビデオ・DVD鑑賞」が00年に比べて03年は4.9ポイントも増加している。直近のキラーコンテンツとして考えられるのはDVDの普及であり、DVDレコーダーなどのAV(音響・映像)系家電の活用が挙げられる。

そのほか、AV家電以外のニーズとして、健康や安心・安全に対する不安を解消するサービスが求められている。人々が現在直面している不安や悩みで1番多いものは「自分の健康」、次に「親の健康」、その次に「治安の悪化、犯罪の増加」となっている。健康へのニーズの高まりは、温水洗浄便座や体脂肪計などの健康器具の世帯保有率の増加傾向にも表れている。
また、住環境では、高齢の両親との同居が減少していることを背景に、高齢者世帯を遠隔で監視するなどの「みまもり系」サービスが注目されている。長期的に見ると、この潜在ニーズの掘り起こしが高まっていくだろう。
■DLNA標準化の動きも また、DVDレコーダーなどでテレビ番組を録画しても、それを見るための時間がない、という一方で、通勤電車内での過ごし方をみると、「ぼうっとしている」という人が全体の34%を占めており、時間を有効に活用していないことがわかる。これらから、電車のなかでコンテンツを見るニーズは確実にあるだろう。
これに対応するソリューションを提供していけば、潜在ニーズを掘り起こせる。それには、ハードもソフトも簡単に使える仕組みが必要。例えば外から自宅のサーバーへアクセスすることで、「こんなに楽しくなる」という提案が必要だ。また、ホームネットワークの煩雑な配線は普及の障害になるため、ホームゲートウェイなどの技術での解決も図られるが、人的サポートも重要となる。これもショップやネットワークプロバイダのビジネスチャンスだ。
これらを考えるうえで、パソコンや家電をどうつなぐか、家電、モバイル、パソコンなど相互接続性を実現させるための標準化活動を推し進めるDLNA(デジタルリビングネットワークアプライアンス)をはじめ、いくつかの規格が標準化を推進している。標準化が進むことで、会社の労務管理、病院での健康管理、スポーツジムでのエクササイズのアドバイスなど、個人が自分のデータを持ち歩くことで、シームレスなサービスを受けることができる。今後は相互接続性が実際の生活に本当に必要なものとなるよう、人々に受け入れられるものを作っていくことが課題となる。

BCN総研・田中繁廣講演
■DVDを核とした市場に
パソコンの不振は、携帯オーディオなど一部を除き、ソフトや周辺機器の減少を招いている。以前は新製品が発売されると盛り上がった商戦も、今ではユーザーは新製品に飛びつかなくなっている。顧客を引きつける商材が減ってきているといえる。
この要因を分析すると、DVD・HDDレコーダーとパソコンの年齢別購入者層が類似していることが分かった。DVD機器が売れることで、パソコンの販売に大きな影響が出るといえるだろう。
デジタル家電の購入については、30-40歳代が9-10月の運動会シーズンにデジタルビデオカメラを購入し、次いで年末商戦でDVD機器を買い足す傾向が顕著になっている。また、50歳代では高額な薄型テレビを購入する傾向がある。総じて1つのデジタル家電の購入が連鎖的に別のデジタル家電購入につながるという傾向が出ている。
これらのことから、DVDを核とした次世代大容量DVD搭載パソコンがカギとなるだろう。また、オンデマンド型のブロードバンドテレビがキラーコンテンツとなることにより、次世代大容量DVD搭載パソコンの本格的な需要拡大が期待できる。
パソコン市場は、多機能と複合化を求めないユーザーがデルやショップブランド、中古パソコンへと流れており、メーカーブランドのパソコン離れが顕著となっている。しかしながら、パソコン市場自体が大きく縮小していくわけではない。