NECのパソコンを除く大型コンピュータ、サーバー事業で唯一の国内開発・生産拠点が、NECコンピュータテクノ(山梨県甲府市、那須賢治社長)だ。ここでは、スーパーコンピュータ「SX-8」やメインフレームサーバーACOSシリーズ「i-PX9000」などの大型コンピュータから、サーバー「Express5800シリーズ」まで受注生産している。1998年に導入したトヨタ生産方式(かんばん方式)によるSCM(サプライチェーンマネジメント)改革で、過剰な棚卸資産や欠品を防ぐことを実現し、資材調達と生産ラインの改革、品質保証の徹底、出荷物流の改革を実現している。
生産性が3倍に向上

■「後工程引取り」方式を採用
NECコンピュータテクノは、2002年4月に当時の甲府日本電気が茨城日本電気を吸収合併して発足した。現在、同社の工場は、本社・甲府事業所と茨城事業所(茨城県関城町)で稼動しており、スーパーコンピュータ、メインフレーム、ハイエンドサーバー、UNIXサーバー、IAサーバー、ワークステーション、ストレージ製品、銀行ATMやパネルコンピュータなどの特注専用端末製品を生産している。
生産ラインは、受注に合わせた「後工程引取り」方式を採用し、かんばん方式により必要なものを必要な時に必要なだけ調達する。顧客の注文の段階で納期が決まり、納期を起点にして物流便を自動計算している。
工場内では、生産を円滑にするために、部品を1.5日分ストックしておく資材ストアを設け、「水すまし」と呼ばれる部品の運搬要員を巡回させて必要部材の適正な配分と効率化を図っている。

■4つのラインが稼働
Expressシリーズは、甲府工場では1日に300台、月に5000台、甲府、茨城両工場を合わせると月間8000-8500台の生産能力を持つ。従来は1ライン40メートルあったが、現在は10メートルに短縮。合計4ラインが稼動しており、山梨県らしく、それぞれ「風・林・火・山」と名づけている。
各ラインでは、セル方式を用いて5-6人体制で作業が行われている。部品の欠品により作業を中断しないように、部品の運搬作業員「水すまし」が、部材を保管する「ストア」とラインとの間を巡回している。
Expressの生産リードタイムは03年末の段階で、96年と比較して5分の1に短縮、生産性は98年に比べると3倍に向上した。現在は、リードタイム6日間のうち、工場内で要する作業日数は実質2日間まで短くなった。
■ハードの利益率7%目指す 大型コンピュータの生産工程は、全8工程のうち各工程を1人で担当。工程進行に従って本体を移動する「1台流し生産」を行っている。筐体を回転台の上に乗せ、作業者は同じ位置で無駄なく組み立てられるようにし、また、操作を軽くすることで女性でも扱いやすいように工夫されている。生産能力は、メインフレームが月間約20台、スーパーコンピュータが同約15台。ここでも水すましが組み立てに同期して各ステーションへ部材を供給している。
各種製品の出荷前には、電子機器が動作する際に発生する電波が他の機器に妨害を与えないか、また外部の電波により誤動作しないかの確認、評価試験を行う。これには電波暗室の「EMCセンター」(電磁的な半無響室)で評価試験を行っている。
NECでは、「ハード事業の利益率は5%(04年度上期)」としており、生産革新の効果により「中期的には7%レンジを目指している」(近藤忠雄・執行役員常務)という。那須NECコンピュータテクノ社長によれば、「まだ完成の域に達していないが、RFIDを使った生産管理の導入も検討している」段階で、一層の生産性向上を目指している。