その他
「映像の東芝」復権へ キーデバイスを続々投入
2004/11/22 21:12
週刊BCN 2004年11月22日vol.1065掲載
東芝が「映像の東芝」を重点課題に掲げ、デジタル家電事業への取り組みを強化している。その背景には、創立130周年という節目を迎える2005年に、次世代のデジタル家電を支えるキーデバイスが東芝から続々と市場投入され、同社の優位性が発揮しやすくなるという変化が見逃せない。このほど発表した04年度(05年3月期)の中間期連結決算では、「映像の東芝」を支える中小型液晶パネルや半導体が牽引役となり、前年同期に119億円に上った営業赤字を、一転して506億円の黒字としてみせた。いま、「映像の東芝」復権に向けた狼煙が上がろうとしている。(大河原克行(ジャーナリスト)●取材/文)
創立130周年の節目に
■岡村社長の“映像へのこだわり”
東芝は、中期経営計画の柱の1つとしてデジタルメディア事業の成長戦略を掲げ、そのなかでパソコン事業の強化とともに、「映像の東芝」の確立を重点方針に打ち出した。
映像技術には強いと言われながらも、この分野ではこれまで他社に先行を許し、かつての高い評価が薄れかけていた時期だけに、岡村正社長自らが“映像へのこだわり”を見せたことは社内にも強烈なインパクトを与えたといえる。
岡村社長が「映像の東芝」を目指すと宣言した背景には、大きな理由がある。それは、「映像の東芝」を実現するために他社と差別化できる技術が、今後続々と投入されることになるからだ。しかも、創立130周年という節目を迎える05年にそれが集中しているのだ。
では、どんな技術があるのだろうか。
1つは、キヤノンとの提携によって推進している「SED(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)」がある。究極のブラウン管テレビと呼ばれるこの技術は、応答性や消費電力などにおいては液晶やプラズマに勝るが、コスト競争力が課題と言われていた。だが、「プラズマ、液晶と十分戦えるコストの目処がついた」(キヤノンの御手洗冨士夫社長)というように、いよいよ市場投入を前提とした生産設備投資が開始され、05年中には月間3000台程度のパネルが生産される。
2つ目が、次世代DVDと呼ばれるHD-DVDだ。同規格は東芝とNECが中心となり、DVDフォーラムで策定されているが、今年度中にROM、RW、Rの基本規格がすべて承認される予定で、これに準拠した光ピックアップなどのキーデバイスが、東芝をはじめ各社から提供されることになる。HD-DVDプレイヤーも05年には製品化され、いよいよハイビジョンを身近に実現する世界がやってくる。これも「映像の東芝」を実現する重要な技術だ。
そして3つ目には、米IBM、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)と共同開発している次世代CPU「CELL」がある。東芝は、これを次世代デジタル家電の心臓部に採用することを明らかにしており、ここにも他社と差別化できる技術が用意されているのだ。これも05年には、量産化に向けた取り組みが開始されることになる。
■マーケティング戦略がカギに
こうした技術のほかにも、燃料電池技術や有機EL(エレクトロルミネッセンス)、小型CMOS(相補型金属酸化膜半導体)、さらには10グラム以下の軽量化を実現した0.85インチHDD(ハードディスクドライブ)といった技術が、いずれも05年には市場投入される予定で、これらもモバイル機器における映像の進化に大きく寄与することになる。
パソコンに関してもテレビ事業部門との連携により、テレビで培った映像技術を活用した「コスミオ」を今年夏に投入。今後、ラインアップを増やすことで、パソコン事業においても映像の強みを発揮したい考えだ。
だが、その一方で、部門間・カンパニー間の壁をより低くして、魅力的なセット商品を提案し、そして、いかに効果的なマーケティング戦略を展開できるかなど、今後の課題もある。創立130周年の節目は、東芝にとって重要な転換の年となるのは間違いない。これを回復しつつある業績に、いかに数値としてつなげることができるだろうか。
東芝が「映像の東芝」を重点課題に掲げ、デジタル家電事業への取り組みを強化している。その背景には、創立130周年という節目を迎える2005年に、次世代のデジタル家電を支えるキーデバイスが東芝から続々と市場投入され、同社の優位性が発揮しやすくなるという変化が見逃せない。このほど発表した04年度(05年3月期)の中間期連結決算では、「映像の東芝」を支える中小型液晶パネルや半導体が牽引役となり、前年同期に119億円に上った営業赤字を、一転して506億円の黒字としてみせた。いま、「映像の東芝」復権に向けた狼煙が上がろうとしている。(大河原克行(ジャーナリスト)●取材/文)
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