第3世代への移行加速がカギに
巨大市場・中国への期待高まる
国内携帯電話機市場の飽和感が顕著になってきた。電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、日本国内の携帯電話の出荷台数は、2004年1月から9月まで9か月連続で前年同月を下回っている。テレビ電話や電子マネー機能を付加した最新モデルを投入するものの、一向に回復の兆しが見えてこない。メーカー各社が需要の起爆剤として期待する第3世代携帯電話が予測に比べ伸びない状況は、今後も続くとの見方が強い。中国を中心とした海外市場に活路を見出す動きは、より一層高まりそうだ。(木村剛士●取材/文)
■9か月連続で前年同月を下回る 軒並み生産台数を下方修正 JEITAによると、日本国内の携帯電話出荷台数は04年1月を境に、前年同月を9か月連続で下回り続けている。
最近2年間で最も出荷台数が多かった03年7月の510万4000台(前年同月比39.0%増)に対し、今年9月は360万9000台(同10.0%減)まで落ち込んでいる。04年度上期(04年4-9月期累計)で見ても2170万8000台(前年同期比16.1%減)となり、マイナス成長に終わった。JEITAではこの低迷要因を、「昨年度はカメラ付き携帯電話ブームで買い替え需要が活発化し、その需要が一巡したため」と説明している。
03年はカメラ付き携帯電話が火付け役となり、停滞感のあった携帯電話市場を復活させたが、カメラ付きブームが去り、その反動で低迷期を迎えている状況にある。
国内トップシェアのNECは、今年度(05年3月期)中間期の決算説明会に、携帯電話の開発・販売事業を統括する中村勉・取締役常務が緊急参加。携帯電話の販売が思うように伸びず、携帯電話の開発・販売事業が減収減益を強いられた理由と、今後の方針について自ら説明を行った。
NECの携帯電話開発・販売事業は今年度中間期に、売上高が前年同期に比べ約470億円減り、総出荷台数は前年同期を170万台下回る600万台と、大幅に前年水準を割り込む厳しい結果となった。
中村常務は、不振に終わった最大の要因を、「日本国内の第3世代携帯電話が思うように伸びなかったことに加え、2.5世代携帯電話でも販売店の取り扱い量で競合他社に大きく水をあけられた」と語った。
富士通も同様に厳しい環境下にある。今年度(05年3月期)中間期で、携帯電話の出荷台数は、前年同期を25万台下回る153万台。これを受けて、通期の出荷台数見通しを当初の360万台から323万台に下方修正せざるをえない状況だ。
低迷の理由はNECと同じく、「第3世代携帯電話の新機種を豊富に投入したが、買い替え需要を促進するまでに至らなかった」(富士通)という。
各社とも、第3世代携帯電話への買い替えニーズが今年度には顕著になってくると予測していたが、実際には、メーカーが期待していたほど、第3世代への買い替えが進んでいない状況だ。
電子マネーやテレビ電話機能など新機能を追加した第3世代携帯電話が、アプリケーションの充実などで今後買い替えニーズを促進できれば良いが、現状では、一般消費者の多くは第3世代携帯電話に関心を示していないとの見方もある。
■国内市場に“あきらめ”ムードも 海外での事業展開に活路 民間調査会社のインフォプラントが一般消費者1500人を対象に行った調査によれば、NTTドコモが他社に先駆けて投入した、電子マネーやポイントカードなどの機能を盛り込んだ第3世代携帯電話に「関心がある」と回答した人は約30%にとどまった。また、NECの中村常務は、「日本国内の携帯電話機市場は、今後も大幅な回復は見込めない」と危機感を募らせており、国内市場への“あきらめ”ともとれる見方も示す。
国内市場に暗雲が垂れ込めるなか、携帯電話機メーカー各社がいま目を向け始めているのが海外市場だ。特に中国を中心としたアジア地域での販売に力を入れる日本メーカーが増えている。
NECは今年5月、中国・北京市に、携帯電話のマーケティングから商品企画、開発、製造、販売までを一貫して管理するNEC通信(NECテレコミュニケーションズチャイナ)を設立。同社を核に海外での携帯電話事業を積極推進する体制を築いた。「今後の携帯電話事業の中核拠点」(中村常務)として、中国でのビジネス拡大にリソースを集中させていく方針だ。
中国市場ではハイエンドモデルを中心に提供していたNECだが、「下期からはミドルレンジの製品投入も計画しており、販売店の数も現在の3-4倍に相当する3000-4000店舗に拡充する計画」(中村常務)だ。
シャープも中国でのビジネスを視野に入れており、「パートナーを通じた販売となるかもしれないが、大きな魅力があるだけに進出しない手はない」(松本雅史・常務取締役通信システム事業本部長)としている。
第3世代携帯電話に対する国内の買い替え需要の先行きに不透明感があり、今後は中国を中心とした海外販売をいかに伸ばせるかで、携帯電話メーカー各社の明暗が分かれることにもなりそうだ。
 | | 停滞感、今後も続く | | | 野村総合研究所 情報・通信コンサルティング一部 上級コンサルタント 柳澤花芽 | |  | 優れた端末や、「着うた」や電子マネー機能を付加したモデルなど、新製品を積極投入しているが、需要の底上げに大きく寄与していない。今後も、国内携帯電話市場の停滞感は続くと見ている。 一方、2006年にはナンバーポータビリティ(電話番号を変更せずに異なる通信事業者の携帯電話サービスに機種変更できる仕組み)の実施が予定されており、一時的には特需が期待できるだろう。 だが、メーカーにとってこの特需は、逆にリスクとも考えられる。一時的な生産能力の確保はどのメーカーにとっても、大きな課題になり、在庫超過や在庫不足といった状況を招く恐れがあるからだ。 | 日本国内の携帯電話市場は、第3世代携帯電話がようやくユーザーに認知され、一部のユーザーで買い替え需要が出ているものの、市場を活性化させる要因にはなっていない。成熟市場であることは間違いない。 メーカー各社は、第3世代携帯電話への買い替えを促進しようと、デザイン性に | | |