ハードウェアの低価格化に歯止めがかからないなか、システムインテグレータのプロジェクト管理体制の強化が、大きな課題となってきた。顧客からの低価格化要求が強まる一方で、システム構築に対する要求は一段と複雑化しており、プロジェクト管理の甘さや仕様書のあいまいさから、赤字案件を生み出すケースが増えている。システムインテグレータにとっては、営業力や付加サービスの企画・開発力により売り上げそのものを伸ばすだけでなく、勝ち取った案件で着実に利益を確保するためのプロジェクト管理体制の確立が求められている。
プロジェクト管理強化が急務に
電子情報技術産業協会(JEITA)の調べによると、サーバーの出荷金額は2002年度(02年4月-03年3月期)、03年度(03年4月-04年3月期)と連続して前年度を下回り、03年度は5312億円(02年度は6192億円)となった。今年度上期(04年4-9月期)は、IT投資が回復基調にあることから、台数ベースでは前年同期比9%増と伸びたが、金額の伸び率は同3%増にとどまり、低価格化傾向が浮き彫りとなっている。
NECの細谷豊造・パートナービジネス営業事業本部長は、「ハードの機能で差別化が難しい状況にあり、価格で選ぶユーザーが増えるのは仕方ない」と説明する。NECの大武章人・執行役員兼第二コンピュータ事業本部長は、サーバーの価格について「付加価値の高い製品と、エントリーモデルで2極化が進むだろう。当社は双方のジャンルで勝負していく。エントリーモデルでは低価格戦略を進める外資系ベンダーに合わせ、競争力のある価格で提供する」と、今後さらなる価格引き下げも示唆する。
民間調査会社、IDCジャパンの柏木成美・ITサービスシニアマーケットアナリストも、「サーバーの価格低下は今後も続く」と予想しており、低価格化に拍車がかかるとの見方は強い。
システムインテグレータにとっては、ハード依存体質から抜け出し、サービスなどの付加価値で稼ぐビジネスモデルをつくり出せるかが明暗を分ける時代を迎えている。加えて、ソフト開発を中心としたプロジェクト管理を徹底しなければ、致命的な損失を生みかねない状況にある。
電通国際情報サービス(iSiD)は、今年度(05年3月期)上期に数件の不採算案件が発生。下期に約5億5000万円の特別損失を計上する。「プロジェクト管理の甘さと、営業担当者が顧客の要求するシステムに見合った金額で受注していなかった」(笠健児・取締役執行役員)ことが主な要因だ。日本電子計算(JIP)も今年度(05年3月期)、ある大型案件で進捗管理の不徹底さから、開発が遅延。遅延損害金として4億5500万円の特別損失を中間期に計上した。
JIPでは、ソフト開発体制の抜本的な見直しに向け、開発者の技術レベルを向上させるため「ITスキル標準(ITSS)」を自社用にカスタマイズして導入したほか、外注先をグループ企業に絞るなどの改革を進めている。
iSiDでは不採算案件発生直後の今年4月、プロジェクト管理専門セクションを設置した。また、下期からは、これまで1億円以上を対象としてきた審査案件を、3000万円以上に引き下げ、小規模案件でも採算割れが発生しないよう対策を講じ始めた。
富士通BSCでは昨年度(04年3月期)、不採算案件の発生で約25億円の特別損失を計上したのを受け、プロジェクトマネージャーの育成施策を強化。併せて、兼子孝夫社長自ら週に1度はプロジェクトの進捗を管理するようにしている。
ハードの低価格化の流れは今後も続くと見られ、システムインテグレータはいかに“箱売り”から脱却し、利益率の高い自社パッケージソフトの開発・販売や、サービスで収益を上げられる体質をつくれるかが焦点になっている。
だが、情報ネットワークの高度化にともないシステムに対する要求は複雑化しているにもかかわらず、顧客からの低価格化要求は厳しさを増すばかり。こうしたなかで、1件1件の案件から確実に利益を上げていくには、プロジェクト管理の徹底、および受注段階での的確な仕様書作成が重要な要素となりつつある。