その他
組み込みソフト開発 各社、独自戦略を打ち出す
2005/01/17 15:00
週刊BCN 2005年01月17日vol.1072掲載
組み込み(エンベデッド)ソフト開発に新たな動きが出てきた。ソフトウェアの開発にとどまらず、顧客企業のニーズに合わせてハードウェアを開発したり、共通部分のコンポーネント化によるコスト削減、品質向上による優位性の確保など、各社さまざまな戦略でエンベデッド事業の拡大に乗り出している。デジタル家電の登場で参入企業が増え、価格競争が激しくなっていることから、得意分野の創出で収益向上につなげようという狙いだ。
新サービスや品質で勝負
低価格化の波に対抗
コア(井手祥司社長)は、EMS(電子機器の受託生産)企業を活用してハードウェアを開発し、そのハードにソフトを組み込むという「EMSビジネス」を、エンベデッド事業の新サービスに加えることで新規顧客の開拓を図っている。
あるマーケティング調査会社からのソフトの組み込み依頼に加え、消費者の購入分析が行える特殊な端末の製造を受注。約8000台の端末を開発するという大型案件を手がけている。
井手社長は、「EMS企業との提携で“エンベデッドソリューション”を提案できるようになった」と自信をみせる。同ビジネスの売上高を2004年度(05年3月期)に前年度比約10倍にあたる2億円、来年度(06年3月期)に4億円の規模にまで引き上げる。
富士通ビー・エス・シー(富士通BSC、兼子孝夫社長)では、00年からスタートした組み込みソフト開発事業が右肩上がりで成長。今年度(05年3月期)は、62億円の売上高を見込む。今後は利益率を高めるために、「開発手法を見直し、共通部分はコンポーネント化していく。これにより、開発工数の低減が可能で、開発コストも削減できる」とし、06年度(07年3月期)に売上高を90億円にまで高める方針だ。
東芝情報システム(六反田喬社長)では、「ソフト開発で品質を保つことは当たり前」(六反田社長)と、品質による差別化を強調する。
このスタンスのもと、基幹業務システムを構築する「SIソリューション」分野で「ITSS(ITスキル標準)の早期導入を行い、資格の取得を進め、着々と資格取得者が増えている。また、CMM(能力成熟度モデル)レベル4を取得し、早い段階で問題点を見つける開発プロセスの構築を目指している」(同)という。これらの施策と歩調を合わせる形で、組み込みシステムを設計・開発する「エンベデッドシステム・ソリューション」分野でも同様の体制を整えていきたい考え。
さらに同社では、「情報処理推進機構(IPA)が設置した先進ソフト開発プロジェクト『ソフトウェア・エンジニアリング・センター』に参画している」(同)など、企業の枠を超えた産学官プロジェクトにも積極的に取り組んでいる。
組み込みソフト開発で新たなビジネス領域に踏み出したり、高品質の組み込みソフト開発に各社が力を注ぐのは、「デジタル家電向けの組み込みソフト需要が高まっており、参入企業が増え、顧客企業からの価格に対する要求が厳しくなっている」(コアの井手社長)という背景がある。
富士通BSCでは、「組み込みソフトは価格競争が激しくなっている。これまでのビジネスモデルでは利益捻出が難しい」(兼子社長)としたうえで、まだまだ成長が見込める領域であるものの、楽観はできないことを認める。
最近では、メーカーを中心に海外企業や海外子会社にソフト開発を委託するオフショア開発が進んでいることも、低価格化に拍車をかける要因になっている。今後は、低価格化の波に飲み込まれないために、どのような得意分野を切り開いていけるかが、事業拡大へのカギを握るといえそうだ。
組み込み(エンベデッド)ソフト開発に新たな動きが出てきた。ソフトウェアの開発にとどまらず、顧客企業のニーズに合わせてハードウェアを開発したり、共通部分のコンポーネント化によるコスト削減、品質向上による優位性の確保など、各社さまざまな戦略でエンベデッド事業の拡大に乗り出している。デジタル家電の登場で参入企業が増え、価格競争が激しくなっていることから、得意分野の創出で収益向上につなげようという狙いだ。
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