「無線の死角を無くす」──。バッファロー(斉木邦明社長)の無線LAN事業に拍車がかかっている。8月中旬から、ルータやメディアコンバータなど無線LAN機器の戦略製品11モデルを順次市場に投入。利用率がまだ約19%(2004年10月現在、バッファロー調べ)にとどまっている家庭向け無線LAN市場で、潜在需要の掘り起こしに努める。BCNランキングの無線LAN部門で首位をひた走る同社にとって、家中隅々まで高速でつながる無線LAN環境の提供にはリーダーとしての威信もかかっている。
世界標準「11a」対応の高出力機も
■「安心感を提供していきたい」 「アンケート結果によると、『セキュリティが不安』、『本当につながるのかどうか不安』といった声が非常に多かった。バッファローの無線LANなら家中どこにいてもつながるという安心感を提供していきたい」。山口英利・常務取締役事業本部長は、デジタル家電や携帯ゲーム機、無線IP電話などが今後ますます家庭に普及していくなかで、無線LAN環境の向上がバッファローの使命だと強調する。
今回市場投入する製品群は、通信距離を従来比で2.1倍に向上した第3世代無線LANルータ「Air Station BroadBand ルータ HighPowerモデル」をはじめ、既存の無線LAN環境を高出力化するメディアコンバータ、電波感度を向上させるための外付けアンテナなど計11モデル。これらにより、「無線LANを導入したいけど、本当につながるの?」、「すでに使っているけど、どうもつながらない」、「スピードが遅い」といった不満を解消していきたい考えだ。
あわせて今回の製品発表会見では、今年5月16日の電波法改正により5ギガヘルツ帯を使った無線LAN規格「IEEE802.11a」が世界標準に準拠した規格に移行したのを受け、世界標準11aに対応した高出力タイプモデルや無線LAN中継機を、今秋に出荷開始する計画も明らかにした。
これにより、従来の11a規格では通信に使用できるチャンネルが4つにとどまっていたのに対し、世界標準の11a規格は8チャンネル分が使えるようになり、同じチャンネルの電波が互いにぶつかり合う電波干渉が生じにくくなるなど、さらに快適な無線LAN環境を提供できる体制が整うことになる。
■累計販売台数1000万台も視野に バッファローは、今年1月の
「BCN AWARD 2005」の無線LAN部門で3年連続の最優秀賞を受賞。さらに、05年上期(1-6月)も無線LAN部門で51.5%と過半シェアを獲得し、2位以下を大きく引き離す独走体制に入っている。こうした結果、00年4月の発売以来、昨年12月の時点で600万台に達した「Air Station」の累計販売台数は、そのわずか半年後の今年5月には700万台を突破。早くも1000万台の大台乗せも視野に入ってきている。
野村総合研究所(NRI)の調査によると、全国各地で公衆無線LANサービスを展開する事業者のうち、アクセスポイント数が1000を超える企業は3社あり、なかでもバッファローの「FREE SPOT」は2834か所と、NTT西日本「フレッツスポット」の1799か所、NTTコミュニケーションズ「ホットスポット」の1543か所を大きく上回る(05年7月末時点)。
NTT西日本の「フレッツスポット」の場合、1エリアに複数のアクセスポイントを設置しているケースもあり、実際のアクセスポイント数は3000を超えるが、バッファローが大手通信事業者と肩を並べる規模のサービス拠点を展開していることに、無線LANにかける同社の並々ならぬ意気込みが感じられる。
「家庭内に無線LANを今後もっと普及させていきたい」(山口常務取締役)。無線LANの普及・拡大に向け、バッファローの戦略は今後ますます熱を帯びていきそうだ。