その他
北洋情報システム、“ソフト工場化”推進 北海道のソフト開発空洞化に歯止め
2005/08/15 21:10
週刊BCN 2005年08月15日vol.1101掲載
札幌のソフトウェア開発ベンダーの北洋情報システム(村椿雅俊社長)は、グループ企業を中心とした“ソフトウェア工場化”を推進する。北海道のソフト開発産業は、首都圏などの需要地へ人材を送り出す人材派遣方式や中国など海外へソフト開発を移行するオフショア開発などが相次いでいることから、産業の空洞化が懸念されている。同社では、発注元の企業と連携して、北海道におけるソフト開発体制や人材育成の仕組みを構築することで、道内のソフト産業の空洞化に歯止めをかける考えだ。(安藤章司●取材/文)
ビデオ会議システムなどを駆使
■首都圏への「人材派遣方式」に対抗
北海道や九州、北陸など、IT産業の集積が比較的進んだ地域では“ソフトウェア工場化”を推進する動きが活発化している。ソフト開発産業の基盤を強化することで、国際的な競争力を高めるのが狙いだ。しかし、地方から首都圏に人材を集めてソフトの開発を行う「人材派遣方式」を重視する首都圏の大手発注元企業が依然として多いことや、オフショア開発で人件費の安い中国やベトナムなど海外へソフト開発が移行する動きなどにより、思うように進んでいないのが現状である。
例えば首都圏で開発要員が30人足らない事態が発生すると、「Java言語を習得した中級以上のSE(システムエンジニア)が欲しい」などの一定の条件をつけて地方のソフト会社から人材を首都圏に集めるのが人材派遣方式。この方法で、一定条件の人材だけがごっそりと首都圏にもって行かれてしまい、地方の人材バランスが著しく損なわれる欠点がある。バランスが崩れると、地方でのまとまったソフト開発が困難になり、生産力が低下する。
SEやプログラマーの1か月にかかる費用を表す「人月単価」は、札幌市の上級SEの平均値で約60万円だが、首都圏の上級SEの人月単価は70万円以上と言われている。価格差は10万円以上あるにも関わらず、人材派遣方式を採用するために、コストの魅力が十分に生かされていないケースが見られる。とはいえ、札幌から首都圏へ長期出張した時の滞在費や手当を含めても、人月単価は首都圏の同等水準の人材と比べて「同等か、さらに数%安い」(関係者)ことが人材派遣方式がなくならない理由の1つになっている。
ソフト開発では、上級SEや初級SE、プログラマーなどがバランスよく揃ってこそ、「コストを抑えて、生産性のよい開発体制が組める」(村椿社長)と、一定条件のSEやプログラマーが首都圏へ抜き取られることによる弊害を指摘する。発注元にしてみれば、首都圏よりも人件費が割安な人材が集められ、なおかつ自分の目の届く範囲におくことで利便性が高いという認識がある。
■いずれ国内回帰が本格化
北洋情報システムでは、こうした問題を解決するため、首都圏の発注元企業などとブロードバンド網を活用したビデオ会議システムの導入や、ソフトの開発状況を遠隔地からリアルタイムで管理できるシステムなどを開発することで、人材派遣方式の比率を減らして、北海道でソフトを開発する体制づくりを強化する。ビデオ会議はすでに一部導入しており、インターネットを使ってリアルタイムで開発状況を管理するシステムはここ2-3年の内に本格稼働させる。
中国やベトナムなどでのオフショア開発に移行する動きが加速していることについては、「中国の人件費は、今後高騰することはあっても安くなることはない。ベトナムについては人口が中国ほど多くなく、IT従事者の数に限りがある」(同)とし、いずれ国内回帰の動きが本格化すると予測する。こうした国内回帰の需要を受け入れるためには、北海道でのソフト開発基盤を強化し、人材を外部に流出させない“ソフトウェア工場”の体制を構築する必要があると考えている。首都圏の大手発注元の中にも理解を示す企業が増えているという。
北洋情報システムは、開発体制強化に向けて1993年頃からグループ経営に乗り出し、現在は11社のグループ会社を形成。東京・港区に本社があるアイエックス・ナレッジも資本参加している。グループ全体の社員数は約420人。売上高は93年当時が約7億円だったのに対して、現在のグループ全体では約30億円にまで拡大した。グループ会社が中心となって設立した札幌情報処理技術者協同組合を軸に、仕事量に応じた人材の融通を行うなど、高い生産効率の実現とコスト削減に努めている。
札幌のソフトウェア開発ベンダーの北洋情報システム(村椿雅俊社長)は、グループ企業を中心とした“ソフトウェア工場化”を推進する。北海道のソフト開発産業は、首都圏などの需要地へ人材を送り出す人材派遣方式や中国など海外へソフト開発を移行するオフショア開発などが相次いでいることから、産業の空洞化が懸念されている。同社では、発注元の企業と連携して、北海道におけるソフト開発体制や人材育成の仕組みを構築することで、道内のソフト産業の空洞化に歯止めをかける考えだ。(安藤章司●取材/文)
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