リコーが「新世代MFP」論を積極的にアピールしだしている。MFPはマルチ・ファンクション・プリンタの略で、多機能デジタル複合機と呼ばれることもある。コピーだけの機能から出発したアナログ複写機は、1980年代後半にデジタル化が図られ、それと同時にファクシミリ、プリンタ、スキャナ、通信などの機能を取り込み「複合化」の道を走ってきたが、「新たな進化の方向」としてリコーが打ち出しているのが「新世代MFP」である。「一言でいえば、イメージとデータを融合して取り扱えるゲートウェイとしての発展方向だ」と語るのは天野宏昭・販売事業本部課長(ソリューションマーケティングセンターネットワークシステム推進室ソリューション企画グループ)である。リコーの考える新世代MFPのコンセプト、具体的な活用方法などを聞いた。
■文書管理と基幹業務システムをつなぐ 
リコーが販売している最新MFPは、ネットワーク対応コピー、ファクシミリ、プリンタ、スキャナの機能を持っている。
「紙文書をスキャナで読み込み、文書の電子化を図ることなどが簡単にできる」(天野課長)のが現在のMFPなのである。こうした機能を生かし、「紙文書を電子化し、ドキュメント管理する動きは着実に高まっている」が、問題は基幹システムとの連動はほとんど図られていないという点である。
「オフィスの中を流れる情報は、大きくはイメージとデータに分けることができるが、イメージ処理は文書管理システム、データ処理は基幹システムという全く別のシステムで運用されている。このため、IT化は部分最適化にとどまっているが、両システムを融合活用できるようにしようというのがわれわれの提案だ」と天野課長。
■人間の介在を減らす 「例えば」として次のような例を挙げる。 「見積書があるとする。証拠として保管しなければならないので、文書管理システムを利用して、紙のままあるいはPDFなどで電子化して保管している。これがイメージ処理だが、一方データ処理では、顧客管理や販売管理用に見積書を見ながら入力している。発注書などの処理も全く同じで、ドキュメントが電子化されていてもイメージとデータ処理では二重の作業をしている。なぜこうなっているかというと、人間の判断が絡んでくるためだ。イメージ処理されている契約書の場合、商品名・数量・契約金額、支払い条件、契約社名などを人間が見て、確認や判断をしている。一方、売上処理のデータについていえば、売上先名、売上明細と金額、請求回収条件などを、やはり人間が見て、確認・判断しながら入力している。われわれはこれをヒューマンインタフェースと呼んでいるが、この人間に頼らざるを得ないということが問題なので、人間を介在させないシステムはできないかを追求してきた。そして得た結論が、MFPのさらなるインテリジェント化」だったという。

■MFPの液晶パネルを活用 MFPは操作指示をするため液晶パネルをもっているが、この液晶パネルを有効活用すれば、人間の介在をできる限り減らしながら、イメージとデータの融合が図れると考えたのである。
「見積書の処理でいえば、紙の見積書をスキャンして読み込むとき、顧客データベースと連動させながら、MFPの液晶パネルに顧客情報をデータとして表示、確認しながら顧客データベースの情報を属性として取り込んだ形でイメージ保管する。イメージとデータの紐付けをここで行うわけだが、こうしておくと、業務アプリケーションから文書イメージの確認ができるようになる。例えば、販売管理のアプリケーションから顧客データベースに入り、顧客名、支払い条件などを確認しながら、文書管理データベースに保管されている見積書も呼び出すことができるようになる」というわけだ。
じつはこうしたシステムはこれまでは個別対応で開発してきており、すでに稼働実績もある。ある製造業の場合、実際に製造指示を出すまでに4工程必要だった。「製造指示書の検索」、「対象図面の検索」、「製造指示書の印刷」、「図面の印刷」の4工程である。これを、製造指示データが入っているホストコンピュータと、文書管理システムであるリドック・ドキュメント・サーバー(Ridoc Document Server=RDS)を連携させることで、1工程で印刷可能にしたのである。ホスト内の製造指示データを読みとり、RDS内の図面を製造指示データに基づき検索、図面と製造指示書を合成してMFPから出力という流れを1回の指示だけで可能にしたわけである。
「製造業で工程を飛ばせるというのは非常に大きな意味を持つ」というが、その通りであろう。
■2つの新テクノロジー こうしたイメージとデータの融合に当たって、リコーが開発した新しいテクノロジーは2つある。
1つは、エンベデッド・ソフトウェア・アーキテクチャ(Embedded Software Architecture=ESA)である。 「ESAは、MFP上でさまざまなアプリケーションを動かすための基盤となる仕組みだ。われわれの提供するアプリケーション、あるいはユーザーが独自開発したアプリケーションをESAの上に載せることで、ユーザーの業務内容に即したMFPの活用が可能になる。当然、基幹システムとの連携も可能だ」という。
もう1つは、インテグレイテッド・ソフトウェア・アーキテクチャ(Integrated Software Architecture=ISA)である。 文書管理システムであるリドック・ドキュメント・サーバーの上にこのISAを載せることで、販売管理システム、会計システム、顧客管理システムなどとの連携を可能にする。
■すでに「スマイルα」では実現 こうした新世代MFPを体現したシステムとしては、リコーと大塚商会が共同開発、3月に発売した「DB-DocLink」がある。リコーのMFPを大塚商会の統合型基幹業務パッケージソフト「スマイルαAD」の入力端末として利用できるようにしたソリューションである。MFPで紙文書を読み込むのに際し、液晶パネルでコメント、備考情報などを入力、スマイルαのデータとの紐付けが簡単にできるようにした。
「DB-DocLinkは基幹業務システムとの連動を実現したが、リコーとしては様々なソリューション開発に全力を挙げて取り組んでおり、パートナー支援プログラム『RiDP(Ricoh Developer Program)』の提供も開始した。パートナーが連携アプリケーションを開発するのに際して、それを支援するためのツール(文書管理SDK、配信SDK等)、サポートなどを提供する」意向だ。
「新世代MFPによって、イメージとデータの融合処理を実現すれば、新たな業務変革をもたらすことができる。文書管理システムと顧客管理や生産管理など基幹業務システムとの連動が簡単に可能になるので、TCO(システム総所有コスト)削減、知的生産性向上、セキュリティなどの面で特に大きな効果をもたらすだろう」と天野課長は強調する。いま、オフィス機器が大きく変貌しつつあることは確かなようだ。