新体制では、全国を6ブロックに分け、各ブロックに母店販社を置く。「地域の伝統や文化を重視しつつ、ネットワークの普及による広域化にも対応するには、一種の〝道州制〟がよいと考えており、ブロック制を取り入れた」(石束執行役員)という。
地域販社が担当するのは「稼働台数ベースでいうと83%になる。これまでの約50%だったのに比べ、比重は相当高くなるが、そのために2700人を移管する」(同)。
富士ゼロックス直販と34販社は、これまでは情報システムを別々に運用していたが、これを完全に統合。顧客情報や商談情報を一元的に管理し、販売会社でも直販同様のレンタル・サービスを開始する。
来年4月1日には各販社の社名を変更、例えばこれまでの「千葉ゼロックス(株)」は「富士ゼロックス千葉(株)」と表記する。
富士ゼロックス(有馬利男社長)は、「サービス事業の加速」に向けて、国内営業体制の再編に踏み切った。同社のこれまでの販売体制は、富士ゼロックス直販、資本を入れた34の地域販売会社、他人資本だがゼロックスの名前を冠するなど密接な関係にある11の県特約店、約3000社の特約店からなっていた。今回の再編は、34の販売会社を完全子会社化するとともに2700人の人材を富士ゼロックスから移管、直販部隊は東京、名古屋、大阪に集約するというのが骨子。「複写機、複合機の機能は多機能化、また、ユーザーの要望も多様化している。ユーザーに本当の効用をお届けするには、われわれが変わらねばならない」と語る石束正明・執行役員販売本部副本部長に、国内営業体制再編の狙いを聞いた。
■地域販社を強化、直販部隊も再編 
富士ゼロックスの設立は1962年だが、設立当初大きな特徴としたのは「直販」だった。代理店販売がメインの国産メーカーと異なり、直販によって大手企業を開拓してきた。
80年代に入ると「販売量の拡大を目指して」(石束執行役員)、地域の有力会社との共同出資(富士ゼロックス51%、地域有力会社49%)による地域販売会社を34社設立してきた。「地域には独自の文化、伝統があるので、それを生かすには地域に根ざした有力企業と組むことが最適」(同)との判断からだった。
今回、この34社を完全子会社化、直販部隊の再編にも踏み切った、
具体的には、①直販部隊は東京、名古屋、大阪に集約、大手企業を核とする国内外の企業群に対する営業に特化。コンサルティング専門部隊の配置、バックオフィスの強化などにより、顧客のより高度な要求に応えられる体制をつくり、「ハイバリューサービス営業力の創造」を目指す、②地域の顧客はすべて販売会社が担当、直販で鍛えられた人材を投入するとともに、保守サービス機能を販売会社に統合し、営業・保守サービスを一体化させる。また、全国を6ブロックに分け、地域ブロックによるマーケティングの統合的な展開を図る――体制にした。
■市場環境の変化に対応 20数年ぶりの大改革になるが、こうした再編に踏み切った背景について、石束執行役員は、市場環境と商品機能の変化、ユーザーニーズの多様化に応えるためと語る。
「富士ゼロックスのメイン事業は、複写機、複合機の製造、販売だが、市場環境は変化し、顧客の要望も多様化している。市場環境でいえば、成熟化のなかで、低価格化への要求は恒常的に続くだろう。そのなかで、成長を続け、利益を高めて行くには、われわれが変わらねばならない。幸い、そのための道具立ては揃ってきている。いまの複写機、複合機は大きく進化しており、複写するだけの機械ではなくなっている。それを分かりやすく表現するため、“ザ・ドキュメントカンパニー”を標榜してきたが、これには文書処理作業の効率化だけでなく、ドキュメント処理を通じて、ユーザーの開発力強化、営業力強化など、企業体質強化のお手伝いをするのだという意味を込めていた。そしていま、ドキュメントと基幹システムは連携する時代を迎えようとしている。例えば、パソコンを介さずに複合機と基幹システムを直接つなぐゲートウェイとしての機能などを持ちだしているが、こうした機能を最大限に生かすには、個々の顧客ごとに最適なシステムを提案できる能力をわれわれが持たねばならない。機械を買ってくださいではなく、御社の場合でしたら、こうしたシステムにすればこんな効果を期待できますよということを提案していかなければならない。そのための体制づくりが今回の再編だ」と石束執行役員は強調する。
実際、同社の支援サービス群を見ると、「レコードマネジメント」、「ドキュメント・プロセス・マネジメント」、「オンデマンドプリンティング」、「セキュリティ」などの言葉が並び、コンサルティング、サービスの構築、運用・管理がきわめて重要になっていることが分かる。
■ユーザーニーズの多様化にも応える 一方、ユーザーニーズの変化は、個人情報保護法の完全施行、e文書法の施行、SOX法(サーベンス・オクスレー法、米国で施行されている組織の内部統制に関する文書化、評価、監視などを規定した法律。08年3月には日本でも施行される予定)など、まず法律の面から新たな社会的要請が生まれている。
「顧客のニーズも多様化、高度化している。コンプライアンスの強化、内部統制の徹底、説明責任への対応、さらには連結経営の強化、地域経済の振興、広域化/グローバル化などが求められているが、こられはいずれもわれわれのシステム提案に絡んでくるテーマだ」と石束執行役員。
■ドキュメントと基幹システムの連携 現在、複写機・複合機業界では、「カラー後」をにらんだ動きが活発化しており、その次世代テーマとして「ドキュメントと基幹システムの連携、融合」は、ほぼ各社の共通認識になりつつある。
この分野で先行している1社が富士ゼロックスだが、この課題実現には営業体制の大改革にまで踏み込む必要があることを示したといえる。