クレオ(川畑種恭社長)が変身中だ。6月に、3年間で売り上げ倍増を骨子とし「変革への挑戦」をうたった「2005-2007年度中期経営計画」を公表したが、その変革の一環として8月には新ブランド「eCREO(イークレオ)」を発表した。「変革しなければこの業界では生き残っていけない。そのための時間もあまりないので、3年間で思い切った体質転換を図る」と語るのは川畑種恭社長だが、同社長と大谷武彦会長、土屋淳一・取締役常務執行役員経営企画室長のトップ3人に変身の背景と具体的な戦略を聞いた。
■大赤字に直面 
同社の創業は1974年3月で、東海クリエイトとして発足、89年4月に現在のクレオに社名を変更した。90年9月には株式を店頭公開、2004年12月に店頭からジャスダックに市場を変えた。
事業は紆余曲折をたどりながらも、基本的には成長を続けてきたが、05年3月期決算では、売上高(連結ベース、以下同じ)が前年度比6.0%減の110億1000万円、経常損失が4億1600万円(前年度は経常利益2億4900万円)、当期純損失が8億2600万円(前年度は当期純利益4800万円)という赤字決算を余儀なくされた。
同社の現在の事業区分は、システム開発事業、CBMS事業、プロダクトサービス事業、サポート&サービス事業、その他からなる。システム開発事業は、企画提案からシステム要件定義やシステム設計、プログラム作成、その後の保守まで一貫したサポートサービスを提供する受託開発事業がメインである。CBMS事業は、会計、人事給与など業務ソフトの開発販売を行っている。プロダクトサービス事業は、筆まめを代表とするパッケージソフト事業を受けもっている。サポート&サービス事業は子会社のクリエイトラボが行っている保守サポート、教育の受託などだ。

05年3月期決算での事業別売り上げは、(1)システム開発事業が売り上げ構成比57%で62億8100万円、(2)CBMS事業が同12.7%の13億9300万円、(5)プロダクトサービス事業が12.8%の14億1000万円、(4)サポート&サービス事業18.7%の20億6200万円だった。
「システム開発事業は当社のメイン事業だが、かなり大型の不採算プロジェクトが2つ発生してしまった。CBMS事業は期待部門だったが、新製品投入の告知で買い控えが発生した」(土屋取締役)という事情から、赤字決算を余儀なくされた。
■企業30年説身近に 「当社は04年3月に30周年を迎えたわけだが、それを越えたところで、俗にいう1企業30年説に直面することになった。ここは創業の精神に立ち戻るしかないということで、中期経営計画をまとめた」と大谷会長。
「受託開発業界はここ数年冬の時代を経験しているわけだが、開発コストの圧縮圧力は強まることはあっても弱まることはないだろう。50歳定年制でも導入すれば、企業そのものは存続できるかもしれないが、それで経営者といえるか。体質を変えるしかない。3年で売り上げ倍増というのはいまの時代に合わないという声も聞こえそうだが、私は拡大戦略のなかで社員の意識を変え、どんな時代が来ても生き残れる会社を目指すことにした」と川畑社長。
■ヤフーとの資本提携 6月に打ち出した中期経営計画では、05年度の売上高目標132億円を07年度には220億円にするというのが骨子である。各事業部門の売り上げ目標は図の通りだが、最大の伸びを見込んでいるのはヤフー向けシステム開発事業である。
ヤフーとは、今年1月に資本・業務提携を結んだが、当面はヤフーの社内システムの開発に要員を割きつつ、さまざまなコラボレーション効果を期待している。「ヤフーの社内では1万台以上のサーバーが稼働しているが、セキュリティなどの問題を考えると運用管理は身内に任せたいということで、資本提携にまで踏み込んだ。現在100人を超える当社の社員を派遣、システム開発、サポート&サービスを行っているが、当社の持っている法人向け製品、個人向け製品もヤフー会員向けに手直しするなどして拡販に当たりたい」(土屋取締役)としている。
■業務ソフト「ZeeM」に高い伸び期待 2番目に大きな伸びを見込んでいるのはCBMS事業である。ZeeMシリーズを昨年12月に発売したが、「順調な出足を見せている」(土屋取締役)という。
CBMSは93年にスタートした業務ソフトで、これまでに人事給与システムは850社、会計システムは800社に導入されている。「中堅以上の企業向けに開発した業務ソフトだが、人事・給与は大企業にも相当入っている。ZeeMはこれまでのノウハウをすべて注入、約20億円かけて開発したが、マイクロソフトの.NET(ドットネット)フレームワークに完全対応していることが大きな特徴だ。ここまで、.NETに対応している業務ソフトの競合製品はまだなく、大きなアドバンテージだ。現実に大規模ユーザーが着実に増えている。CBMS時代は直販中心だったが、ZeeMでは特にSIパートナーの強化を図り、カスタマイズのニーズにも応えていく」(土屋取締役)意向だ。
■M&Aは積極的に 事業規模として最大なのはシステム開発事業だが、あまり高い伸びは見込んでいない。「開発コストの削減要求が続くなかで、重要なのはプロジェクト管理だ。不採算プロジェクト根絶のために手を打っていくし、オフショア開発による原価低減にも取り組む。ただ、成長戦略のためにM&A(企業の合併・買収)はきわめて重要だと考えており、良い会社があれば積極的に投資していく」(土屋取締役)という。
その1つが、8月に発表した中央システムへの出資で、100%の株式を取得、子会社化した。「中央システムは、NECに強く、半導体卸のノウハウがあるなど、当社とは違った分野のノウハウを持っているので、相乗効果を発揮できる」(土屋取締役)と見ての子会社化だ。
また、ZeeM拡販に当たっての営業拠点、カスタマイズ化への戦力としても期待している。
■筆まめ技術を横展開 クレオといえば「筆まめ」があまりにも有名だが、「基本的には成熟市場。売り上げ増よりも利益確保を重点に、筆まめの技術の新たな展開に力を入れる。例えば、携帯電話関連事業、エプソン販売と提携したインハウスプリンティング分野など、新しいジャンルを開拓していく」(土屋取締役)意向だ。
■新ブランド「eCREO」 こうした手を打ちつつ、8月17日には、新ブランド「eCREO」を打ち出した。「eはEnhancing(エンハンシング)、つまり生まれ変わるの意味を込めた。創業精神を維持しつつ、時代に即した経営を実践し続けるために、果敢に挑戦していく」というのが大谷会長、川畑社長以下、全社員の決意だという。

激動の30年を生き抜き、新たな挑戦を始めたクレオの変革が注目される。