その他
「内部統制強化」でY2K以来の特需到来か
2005/11/07 14:53
週刊BCN 2005年11月07日vol.1112掲載
内部統制の強化に伴う“特需”でITベンダーの動きが活発化している。株式を公開している企業を中心に今後2-3年間で2兆円規模の資金を投じることも予想されるだけに、IT業界では「西暦2000年問題(Y2K問題)以来の特需」(ITベンダー各部)と期待を膨らませる。一方で、要員不足や内部統制を優先して既存のIT投資プロジェクトが先送りになるケースも見られ、手放しでは喜べない側面もある。
今後2-3年の投資規模は2兆円
要員不足や既存案件先送りに懸念
内部統制の強化は、株式を公開している企業約3800社が対象になると見られる。内部統制を実現するツールとしてITがフルに活用される見通しだ。ITベンダーなどの試算によれば、現行の業務プロセスの調査費用などで、1社あたりの平均的な外部流失費用は約2億円、社内の人件費などの費用で約2億円、これにITツールの導入や会計士による外部監査費用などを加えて平均5億円の費用がかかるという見方もある。ここ2-3年のうちに単純計算で2兆円近い投資が行われる可能性がある。
このうち、業務プロセスの調査費用などを除いたITシステムへの直接的な投資は、数千億円程度になるものと予測される。だが、調査対象となる業務プロセスが膨大な量である上、実際にはさまざまなITツールを活用しなければ、内部統制強化の実現は事実上困難であることから、ITベンダーが活躍する領域は大きいと予想される。IT業界にとっては、「Y2K問題以来の特需」(ITベンダー幹部)と位置付け業務プロセスの見直しに伴うERP(統合基幹業務システム)の刷新も視野に入れて、提案活動を活発化させている。
企業改革法(サーベンス・オクスリー法=SOX法)の導入など、内部統制の強化で先行する米国では、業務プロセスの見直しなどで企業の負担の増大が問題になった経緯がある。国内においても、株式公開企業が直接の対象であるものの、連結対象子会社などを含めると内部統制の影響が及ぶ企業数は「8万社近くになる」と、内部統制強化に詳しいNECグループのコンサルティング会社・アビームコンサルティングの永井孝一郎・プリンシパルは指摘する。
反面、こうした作業に従事する要員不足が懸念されている。 アビームコンサルティングでは、約2000人の社員のうち、今後1年間で約300人を内部統制のビジネスに投入する計画だ。大手ITベンダーの富士通も、来年度(2007年3月期)、内部統制の専門知識を持った要員を「300人に増やす」(小村元・富士通コンサルティング事業本部プリンシパルコンサルタント)と、内部統制関連ビジネスに携わる要員増を計画している。大手システムインテグレータ(SI)の住商情報システムでは、今年4月に内部統制を担当するタスクフォースを立ち上げており、来年度以降、顧客企業への対応を順次進める方針だ。
早い企業では、2008年3月期の決算から内部統制に対応する見通しだが、このスケジュールに合わせようとすれば、「来年度下期(2006年10月-2007年3月)から内部統制関連システムの試験的な運転を始め、2007年4月からの本格運用に間に合わせなければならない」(同)という。試運転までの作業時間は実質あと1年もない。作業が間に合わない企業が続出すると見られ、これに伴って既存のIT投資プロジェクトが後回しにされ、ITベンダーの業績に悪影響を与えることも考えられる。
内部統制の対象となる企業数が多く、システム供給側の要員増だけでは対応しきれないことが予想されるため、各社とも中堅クラスの顧客に対しては、あらかじめ国内の内部統制の基準に合わせたテンプレートを製作し、短期間で導入する手法などを模索中。外資系大手ERPベンダーは、先行する米SOX法の経験を踏まえたテンプレートを投入することも予想される。
金融庁では、現在、内部統制の評価や監査基準の確定作業を進めている段階で、この基準が最終的に確定し、対応したテンプレートがITベンダー各社から出てくるのは「早くても今年度末から来年度初め頃」(ITベンダー関係者)になる見通しだ。
こうした展開からさらに踏み込んで、内部統制で見直された業務プロセスに見合う新しいERPへの刷新など“ポスト内部統制”への戦略的な対応も求められることになりそうだ。潜在需要は大きいが、それだけにITベンダーには早急な対応が迫られている。
内部統制の強化に伴う“特需”でITベンダーの動きが活発化している。株式を公開している企業を中心に今後2-3年間で2兆円規模の資金を投じることも予想されるだけに、IT業界では「西暦2000年問題(Y2K問題)以来の特需」(ITベンダー各部)と期待を膨らませる。一方で、要員不足や内部統制を優先して既存のIT投資プロジェクトが先送りになるケースも見られ、手放しでは喜べない側面もある。
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料)
ログイン
週刊BCNについて詳しく見る
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。
- 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…