開発、販売の両面で融合メリット
来年上期には融合戦略の第2ステージへ
米シマンテックが、旧米ベリタスソフトウェアとの合併による統合効果を見せ始めた。今月1日に行った同社のプライベートイベント「Symantec VISION Xchange 2005」で、旧両社の製品を組み合わせた第1弾を披露するとともに、販売面でも統合したことによる具体的なメリットを明示。木村裕之日本法人社長は、「今回の内容は第1弾に過ぎない。来年には第2ステージ、第3ステージへと突入する」と強調。今後の統合計画にも自信を見せる。旧両社の合併が完了してから4か月半、“新生”シマンテックがようやく動き始めた。(木村剛士●取材/文)
■恒例のプライベートイベントを開催 統合成果に注目集まる 「Symantec VISION Xchange 2005」は、シマンテックが毎年行っている恒例のプライベートイベントだが、今回は例年に比べその意義は大きかった。今年7月2日に旧ベリタスソフトウェアと合併し、新生シマンテックとして初めてのプライベートイベントだったからだ。
「ベリタスを飲み込んだことによる具体的な効果をどれほど示せるのか」──。合併完了から4か月半。これまでは統合・相乗効果があまりみられなかったこともあって販売パートナーは、その具体的な成果を今回のイベントに期待していたのは確かだ。事前登録者は2500人以上にもおよんだことがそれを裏付けている。米シマンテックからは、アジア地域担当副社長や最高マーケティング責任者などの幹部が来日。日本のパートナーや顧客に向けて自ら新生シマンテックのビジョンを説明した。
基調講演をはじめ、旧両社の持つソリューションを説明する15種類のセッションを用意したほか、合併後初となる旧両社の製品を組み合わせた第1弾「Symantec Email Security& Availabilityソリューション」を披露。スパム(迷惑メール)やメール経由ウイルスの防御から、バックアップポリシーに基づいたメールの自動保存までを一貫して提供するソリューションで、まずは製品開発面での統合効果をアピールした。
米シマンテックのスティーブ・レオナルド・アジア・パシフィック/日本地域担当シニアバイスプレジデントは、新ソリューションについて「両社の製品を組み合わせたというよりも、両社の技術の融合と新技術を使うことで生まれたソリューション。単純に連携させただけではない」と説明。「協業ではなく合併したからこそ実現した」(米シマンテックのジャニス・チャフィン・最高マーケティング責任者)ことを訴えた。
■シマンテックの販売パートナーもベリタス製品の取り扱い開始 販売の面でも統合したメリットが現われてきた。販売パートナー向けに、旧シマンテックの販売パートナーが旧ベリタスのバックアップソフトを販売できる仕組みを用意し、11月30日から旧シマンテックが組織していた販売パートナーが旧ベリタス製ソフトを担ぎ始める。また、エンドユーザー向けには、クライアント向けセキュリティソフト「Symantec Client Security」または「Symantec AntiVirus Corporate Edition」のライセンスを新規で購入したユーザーに、旧ベリタスの主力製品「Symantec Backup Exec 10d for Windows Servers CPS スターターパック」を1ライセンス無償で提供する施策を年内に始める計画を明らかにした。
レオナルド・シニアバイスプレジデントは、新生シマンテックのフォーカスポイントとして、(1)Eメールのセキュリティ確保と可用性、(2)ビジネスの継続性確保、(3)コンプライアンス(法令遵守)の3つを挙げている。今回、まずはEメールのセキュリティ確保と可用性を実現した融合ソリューションを発表した形だ。10月17日に日本法人の新トップに就任した木村裕之社長は、「今回のソリューションは合併したことで生まれた第1弾に過ぎない。来年の上期(06年1-6月)には第2フェーズ、下期には第3フェーズに入り、新たなソリューションをパートナーや顧客に示す」と今後のロードマップを説明。合併計画が順調に進んでいることをアピールした。
セキュリティとバックアップのそれぞれでリーディングカンパニーの位置付けにあった2社の大型合併の統合効果としては、多少物足りなさは否めないが、製品開発・販売の両面でまずは第1弾の統合効果をようやく示した。
ただ、日本法人では「発表の2週間前に決めた」(レオナルド・シニアバイスプレジデント)という突然の社長交代劇があり、日本法人の統合は来年1-3月の予定で、まだ完了していない。木村新体制での“シマンテック・ジャパン”には、米本社の示す統合ビジョンを日本市場に浸透させるとともに、日本法人としてのオペレーション体制を早急に構築することも求められる。
 | ウイルス解析のエキスパートが 分析する不正プログラムの「今」 | | | | ケビン・ホーガン氏が来日 | |  | 74%を占めている。この数字は前年の下半期(04年6-12月)に比べ37%増加している。 今後、さらに注意を払わなければならないのは“非パソコン”分野だ。代表的なのが携帯電話だろう。04年6月に、「Bluetooth」搭載携帯電話を狙ったウイルスが初めて登場し、今年1月には実被害をもたらしたワームが発生した。今後はさらに本格的に携帯電話を狙ったマルウェアが発生すると予測している。また、「PSP(プレイステーションポータブル)」を対象としたマルウェアも発生している。(談) | | 2005年は前年に比べ、大規模感染を巻き起こすマルウェア(ウイルス、ワーム、トロイの木馬の総称)が少なかった。04年は「NetSky」や「Mydoom」などの強力な不正プログラムが多く登場し、異例の被害を出したが、今年は大幅に減少している。当社が特定する大規模なマルウェアは今年、現段階で昨年に比べ約6分の1の5件にとどまっている。 |  | 一方で増加傾向にあるのは、知らぬ間にパソコンを他人に操られてしまう「ボット」、情報を盗み出すことを狙いとしたマルウェア、そしてトロイの木馬だ。 トロイの木馬は、全報告件数の78%を占めており、過去4年のうち最悪となった。また、情報取得目的のマルウェアは、報告された不正プログラムの上位50種のうち、 | | |