沖データ(前野幹彦社長)がワールドワイドのビジネス展開を加速させている。今年11月に英国でプリンタ関連の新工場を開設し、欧州で市場が拡大しているカラープリンタの事業拡大に力を入れる。主力地域の生産拠点を強化することで世界市場でのシェア拡大につなげていく考え。欧州ビジネスの成功事例をアジアや米国にも応用することを念頭に、ワールドワイドで07年度(08年3月期)に売上高2000億円以上、営業利益200億円を目標に掲げる。(佐相彰彦特派員)

07年度に2000億円以上の売上規模へ
■欧州新工場の開所式を開催 スコットランド首相も参加 2005年11月9日、沖データは英国スコットランドのエジンバラ郊外カンバーノールドでプリンタ関連の新生産工場を稼働させた。
開所式では、沖データの篠塚勝正会長(沖電気工業社長)が、「当社は、カンバーノールドに製造能力を有しているだけでなく、顧客価値を創造することを目指している」と挨拶。「沖グループが当地に進出したのは87年。以来、ビジネス環境は大きく変化を遂げ、グローバル化や技術革新はさらに加速している。欧州地域における各国の顧客ニーズを的確に把握し、顧客企業のビジネスを高めるためのソリューションを提供していく」と、新工場開設の狙いを語った。
さらに、「当社の製品やサービスを模倣することは可能だが、従業員の態度や技能、知識まではまねできない。新工場の開設を踏まえ、従業員の能力を向上させることで、革新的なリーダーシップを築いていく」と強調した。開所式には、スコットランドのジャック・マッコーネル首相も駆けつけ、「スコットランドで日本企業が一段と成功していくことに期待したい」と祝辞を述べた。
本格稼働の初日は、雨の日が多いスコットランドでは珍しい雲一つない快晴。「幸先の良いスタートが切れた」と、関係者は顔をほころばせていた。
■生産能力は30%向上、プリンタのカスタマイズが主流 欧州の生産拠点は、80年代にはドットインパクトプリンタの量産やLEDプリンタの生産などが主流だったが、94年のタイ工場、02年の中国工場の設立にともない、消耗品やオプション類の生産と欧州各国向けプリンタのカスタマイズが主流となった。
そのため、新工場はプリンタ関連の消耗品を開発するほか、アジアの量産拠点で生産したプリンタを欧州各国向けにカスタマイズする役割も担う。アジアと英国の工場が機能分担することで、製造からエンドユーザーに届くまでのプロセスを短縮させ、生産効率の向上を図るのが狙い。旧英国工場と比べて30%以上も生産能力を引き上げるという。
欧州市場ではカラープリンタのカスタマイズを要求する企業が増えているため、顧客のニーズに合わせた細かい仕様変更が必要となる。このため組み立て工程では、1台の製品を熟練したスタッフが1人で最終組み立てまで行うセル方式を採用している。こうしたカスタマイズに適した生産方式の導入により、今年度(06年3月期)のプリンタと複合機の販売は60万台を予定している。
■欧州の売上比率は約50% 主力地域の成功を世界へ
欧州地域の売り上げは、ワールドワイドの約50%を占めているだけに、同社の業績全体に及ぼす影響は大きい。05年度(06年3月期)の同地域の売り上げは好調で、739億円(前年度比3.6%増)に達する見通し。これは、「パートナー各社と個別にアライアンスを築き、顧客企業の各ニーズに合ったソリューションを提供する」(アンドリュー・モンゴメリー・オキヨーロッパ社長)という施策が定着してきた成果といえる。
販売面では、新しいチャネルとして大型スーパーマーケットを開拓したことや、車内をショールーム化したトレーラーで欧州地域を全国行脚するなどの施策がブランド力の向上につながった。加えて、欧州工場責任者のニール・マクドナルド・オキヨーロッパマネージングディレクターは、「顧客のニーズをくみ取り、それに対応した製品をいち早く生産できるようになったことが最大の強み」と、生産と販売の強固な連携体制をアピールする。
沖データグループでは、ワールドワイドの戦略として、「マーケットシェアが高い欧州市場に新製品を投入し、その成功事例を他の地域にも展開する」(前野社長)という方式を採用している。そのため、まず欧州の工場でカスタマイズ能力を高め、他社に先駆けて迅速に新製品を投入できる体制を整えて、売上高を着実に伸ばしてきた。こうした取り組みのひとつとして、欧州で先行販売してきたカラー複合機を、06年1月中旬から日本でも発売することになった。欧州での成功体験をひっさげて、国内カラーMFP市場に本格参入するという構図だ。
一連の生産と販売の強化によって、07年度を目標とした中期計画の達成に挑戦中だ。「売上高2000億円以上、営業利益で200億円をクリアし、世界市場でカラープリンタのシェアを20%に、SIDM(シリアルインパクトドットマトリクス)のシェアを世界2位に引き上げる」(前野社長)というのが目標だ。この実現に向けて、今回の欧州工場は生産面での重要な役割を担うことになる。