ディストリビュータは、06年の市場環境について「明るい兆しが立ちこめている」と展望する。SMB(中堅・中小企業)のシステムに対する投資意欲や個人消費の活発化で、PCサーバーやパソコンの販売が順調に推移していることが最大の要因だ。
法人ビジネスはサーバーが堅調
個人向けPC販売は後半が勝負
一方、価格下落が続いているのも事実。「晴れ」とはいかないまでも「薄曇りのち晴れ」というのが大部分の予想だ。
法人向けビジネスでは、PCサーバー、パソコンともに見通しは明るく、この点では「晴れ」に近い。ダイワボウ情報システムでは、「05年度(06年3月期)は、パソコン120万台、PCサーバー5万台を達成、その勢いを06年度につなげる」(松本紘和社長)と強気。
丸紅インフォテックでも、「個人情報保護法の全面施行により、セキュリティの観点から企業がITシステムを見直す動きが強まっている。チャンスを逃さず、確実に顧客企業を獲得したい」(梅哲雄社長)と意欲を燃やす。
個人向けパソコンの販売についても、「05年夏頃から家電量販店などのパソコンコーナーに活気が出始め販売も順調だ。06年に入っても、この傾向は続く」(NECパーソナルプロダクツ・片山徹社長)や、「一時期の低迷を脱して、成長段階に向かいつつある」(富士通・山本正己経営執行役)と、雲間から日射しがのぞき始めた。
しかし、「6月にサッカーのワールドカップを控えているだけに、前半は薄型テレビに需要が集中する可能性が高い」との指摘もある。
04年のアテネオリンピックで、薄型テレビの需要が爆発的に拡大した経緯があるだけに、上半期はデジタル家電にパソコン需要回復の足もとをすくわれる懸念もないわけではない。
むしろ、上半期を無難に乗り越えれば、秋口の新OS「ウィンドウズ ビスタ」の登場に向けて、青空が広がる可能性は高い。「後半が勝負」といえそうだ。
個人用パソコンソフトについては、市場の成熟を受けて、めざましい好転を望むのは難しい。
パッケージビジネスでローコスト化を徹底することに加えて、「ASPでの提供などサービス指向のビジネスが利益を確保することにつながる」(ソフトバンクBB・宮内謙副社長)と、ネットのオンライン販売に軸足を移す動きが本格化しそうだ。
一方、他の業種と同様、単価の下落は頭の痛い問題だ。
「サーバーに対する価格要求が厳しく、台数は増えても金額が伸びない危険性もある」(ダイワボウ情報システム・松本社長)、「買い替えが多いため、安さありきで購入するユーザーが多いのも確か」(NECパーソナルプロダクツ・片山社長)と法人、個人ともに価格下落は依然として続く。
「仕入れた製品をそのまま卸す」というこれまで通りのビジネスでは利益確保は難しい。ディストリビュータの存在感を示す新しいビジネスモデルの構築が課題となる。
●大手ディストリビュータ各社がウェブEDIを一段と強化。
●個人向けパソコンでテレビ機能つきモデルの人気が高まった。
●セキュリティをベースとしたシステムの提供などソリューション提案が出始めた。
●ソフトウェア販売でASPサービスの機運が高まる。
●オリジナル製品の提供など他社との差別化を図る動きが活発化。
景気が回復基調に入っているだけに、市場環境に悪い材料は見あたらないない。しかし、パソコン市場のメインは買い替え需要であるため快晴とは言えない。
ソフトウェアビジネスは、ASPでソフトを提供するなど、パッケージ販売からインターネットを活用した新しいサービス指向が強くなっている。ブロードバンドが急速に普及しているためだ。こうした環境の変化に対応したビジネスが展開できれば晴れとなるだろう。しかし、変化に対応できない企業が多ければ大雨になる危険性もある。
個人向けパソコン市場に関していえば、06年前半は厳しい状況になるだろう。サッカーのワールドカップをはじめとしたイベントが多く、薄型テレビに需要が集中するためだ。アテネオリンピックの時も、薄型テレビ市場が急拡大し、パソコン関連需要が振るわなかった。前回と同じとはいえないまでも、やはり需要の中心はデジタル家電に向かい、パソコンは厳しいといわざるを得ない。パソコン市場の拡大はウィンドウズビスタが登場する06年後半が勝負。