開発系SIerは、旧来の受託ソフト業を中心とする企業群を指す。メーカー系、商社系、ユーザー系、独立系と資本系列はさまざまだが、ここではザックリと、仕事を進めるうえで元請け的か下請け的かという位置づけを基準にする。
不採算案件処理は一段落
利幅薄くサービス型への脱皮がカギ
気圧配置を見ると、官公庁や民間のIT投資意欲は売上原価削減型から販管費圧縮型、新規分野開拓型へ向かいつつあって、引き合いが活発になっている。Y2K問題クリア後に構築したシステムのリプレース期に差しかかり、IPベースのWebアプリケーションへの移行が鮮明になった。
こうしたなかで元請け的位置づけにある企業群(社歴30年以上、従業員3000人以上でメインフレーム時代を謳歌したような企業)は、明暗がくっきりしている。要因は(1)元請けであるために不採算プロジェクトの損失を被るリスクが増大していること(2)団塊世代の大量退職者を控えていること(3)価格低減圧力に歯止めがかかっていないこと(4)受注競争の激化が予想されること─などだ。
「当社のビジネスは『晴れ』だが、業界全体は曇り」「薄日が差す晴れ」といった回答が多いなか、「台風一過の快晴」という声もあった。不採算プロジェクトの処理を終え、正面から新規受注案件に取り組める体制を整えた企業は、景気回復業種の追い風を受けることになる。
一方、下請け的な位置づけにある企業群は、「薄日」の状態が続く。「土砂降り」にもならない代わり、「快晴」も期待できない。価格低減圧力はあるものの、元請け企業のような不採算プロジェクトの悩みはなく、安定した人月単価が期待できる。元請け企業が新規案件を多く獲得すれば自ずから需要が上向く。ただし少数の大口ユーザーに依存している企業は、「にわか雨」に遭う危険性をはらんでいる。
全体にいえるのは、第1に「人材」、第2に「経営改革」という課題。人材の課題は、Web/エンベデッド系アプリケーションの需要にどう対応するかだけを意味していない。団塊世代が現場から退いたあと、そのノウハウをどのように継承するか、というテーマが、退職慰労金というもう一つの課題と同期している。それと関連して、元請け企業では外注比率の見直しや外注先の絞り込みが進むと見られるため、下請け企業には風向きや温度の変化を機敏に読み取る努力が欠かせない。
経営改革は、近視眼的には売上原価を70%台に圧縮し、販売・一般管理費を15%以内に収め、不採算プロジェクトを発生させない管理体制などがある。価格低減圧力に歯止めがかかっていないため、利幅の「薄皮饅頭」現象に拍車がかかっているためだ。
長期的には受託型からサービス型への質的転換、独立系に限れば経営者(経営陣)の意識改革とM&Aへの対応などをあげることができる。「薄日」が差しても、たまった洗濯物や布団を干す作業が待っている。
●05年10月1日付でCSKがCSKホールディングス、CSKシステムズに分割、CSKグループが再編されるなど、大手企業を中心にホールディング・カンパニー制への移行を検討する企業が増えた。06年中に実施する企業が増えると予想される。
●不採算プロジェクトの清算が進んだ。外注先の絞り込みを含めたプロジェクトの見直し、受注条件の厳格化といった体制整備が進む一方、減益要因が解消し収益増に転じるか。
●大型M&Aをにらんだ業界再編の動きが活発化。住商情報システムと住商エレクトロニクス、ソランと日本タイムシェアなど系列企業を統合したのは大型M&Aの準備と見られる。
●外注先の絞り込みとも関連し、個人情報保護法の施行もあって、労務管理当局による実質派遣業務への監視が強まった。派遣法セミナーは毎回定員オーバーで、業界大手は外注管理を強化しつつある。
●不採算プロジェクトの清算、受注条件の厳格化、外注先の絞り込みなどで収益性が改善した。しかしネット系IT企業との格差は大きく、オフショアの拡大、07年問題とあいまって業態改革に踏み出す企業が増えそう。
SI案件の増加を実感している。特需ではなくて、全体的な設備投資への意欲そのものが高まってきた。イメージとしては、00年前後の“ITバブル期”の水準に戻ってきた印象を受ける。
企業はすでにIT化されているなかで急に業界が大ブレイクするとは思えない。競争は激化し、勝ち組、負け組みがはっきりしてくるだろう。
受託開発は、価格要求が厳しく暗雲が立ちこめている。受託開発だけに集中していたのでは成長はない。開発のノウハウを生かし、ソリューション提供が行えるベンダーは強いのではないか。