その他
<動き始めた巨大市場 Document Solution>ドキュメントと基幹系の融合へ 市場規模は早くも5000億円に
2006/01/09 14:53
週刊BCN 2006年01月09日vol.1120掲載
リコー、キヤノン、富士ゼロックスなどOA機器メーカーと呼ばれた企業群が「ドキュメントソリューション」メーカーへの脱皮を本格化させている。大手SIerでは、「ODS(Otsuka Document Solutions)21」を擁する大塚商会が極めて積極的な動きを見せる。「単品売りのままでは生き残れない。ドキュメントを切り口に、総合ソリューションを売れる体制を作る」というのが共通した認識だ。第1ステップでは、「電子と紙の統合処理によるペーパーレスオフィスの実現」が共通テーマだったが、一昨年後半から「ドキュメントと基幹システムの連携」という新たなテーマが浮上、その実績づくりを競い合い始めている。ドキュメントソリューション業界の現状を追った。
OAメーカー、SIerが実績競う
■第一ステップはペーパーレス
「単品売りからシステム販売へ」といううねりの背景にあるのは、デジタル複合機の進化だ。
コピーするだけの機械だった複写機が、まずファクシミリ機能を持ち、デジタル化によってプリンタ、スキャナ機能、ネットワーク機能も持つようになった。多機能デジタル複合機(MFP=マルチ・ファンクション・プリンタ)に進化したわけだ。
当初、各社が指向したのは紙文書をスキャナで読み込み、電子データとして保存する「紙と電子の統合処理」「ペーパーレスオフィスの実現」といった方向だった。
いかに簡単に電子化を図るか、保存した電子データをいかに有効に活用するか、といった方向で努力が払われ、各社はさまざまなソフトウェアを開発していった。そうしたソフト群は、スキャン系、ドキュメント管理系、プリント系と大きく分けることができる。文書管理システムでいえば、富士ゼロックスは「DocuShare」「ArcSuite」などが、リコーは「Ridoc Document System」、キヤノンは「imageWARE」、大塚商会はリコーのRidocシリーズを活用する一方、ドキュメント管理システムとしてはVisualFinderを自社開発した。
■紙とデータの一元管理を実現
実際にどんなソフトを揃えてきたかをキヤノンの例で列挙してみよう。
紙文書とアプリケーションデータの一元管理で、効率的な文書管理を実現する「imageWARE Document manager」、紙文書からのデータ抽出をサポートし、快適なデータ入力を実現する「Scan manager」、ビジネスドキュメントの作成を手軽にスピーディに、しかも美しく仕上げる「Publishing manager」、プリント、コピー、FAXなどの利用状況を集計・分析する「NetSpot Accountant」、情報流出を防止するためにドキュメントに地紋を付加して同時にプリントする「Trust Stamp」などである。
各社ともほぼ同様の品揃えを図ってきたといってよい。
「スキャン系では入力のしやすさ、管理系では取り込んだ膨大なデータをいかに管理し、情報共有の実をあげるか、また、バックアップはどうするかなど、どんどん進化している。プリント系では帳票出力や、中綴じ、ホチキス止めまでを含めた後処理機能の強化が進んでいる。特に、セキュリティ対策は重要になっており、暗号化しての保存、電子署名の付加などの機能強化が図られている」(キヤノン販売ビジネスプロダクト企画本部DS商品企画部DS販売企画課・宮坂晃生課長)という。
こうした紙と電子の統合処理は、大手企業が積極的な姿勢を見せてきたが、大手企業に強い富士ゼロックスでは「データハンドリング用ツールDocuWorksの累計ライセンス数は100万を超えた。突出した数字のはずだ」(富士ゼロックス広報宣伝部広報グループ・坂下寿紀マネジャー)と胸を張る。
■基幹系と文書系をつなぐ
こうしたペーパーレスオフィスの指向に加えて、04年には新たなテーマとして「基幹システムとの連携」が浮上した。
富士ゼロックスは、04年11月25日、「データ情報とドキュメント情報をシームレスにつなぐ」という新たなコンセプトを打ち出し、それを実現するツールとして「Apeos」シリーズを発表した。Apeos(アペオス)は、ラテン語でオープンという意味のAperireとOffice Systemを組み合わせた造語で、「超越した開かれたオフィスを実現する場」という意味を込めたと説明している。この時、強調したのは、次の4点で、ドキュメントソリューションに求められる要点をほぼ網羅している。
(1)e文書法の成立や企業会計の透明性が問われるようになり、文書の電子化ニーズが急速に増加している(2)これを真に解決するには、データを取り扱う基幹システムと、契約書・領収書などの紙情報を取り扱う文書系システムの連携が必須になる。だが、この2つの情報を従来の情報機器を使用して日常的な運用の中で、定常的に結びつけることは困難だった(3)これを解決するには、どこのオフィスにもあって誰でも使えるインフラであり、しかも、紙文書を電子文書にして高速に取り込め、さらにネットワーク内で情報処理ができる機器が必要になる(4)こうしたニーズに応えるために、ハードウェアとしての「ApeosPortシリーズ」と、ドキュメントをマネジメントする技術を結集してソフトウェア群を開発した、と説明した。
そして昨年1月31日には、大塚商会とリコーが共同記者会見、「業界ではじめてデジタル複合機をERP(統合基幹業務)システムの入力端末として利用する連携ソリューションDB-DocLinkを開発した」と発表した。基幹システムとMFPの連携が具体的に動き出すことになったわけだ。
それまで、ERPシステムでは、営業履歴や取引明細といった情報を電子データで蓄積・管理してきた。一方、関係する仕様書や図面、FAXによる注文書といった紙文書は、そのまま紙文書として保管するか、文書管理システムなどを用いて管理しているのが一般的だった。このため、ERPシステム上のデータと紙文書を統合管理するには、それぞれのデータを関連付けるため、人間が介在しての作業が必要だった。
DB-DocLinkでは、PCサーバーに保存されているERPの顧客データを、MFPの液晶パネルで指定し、それに関連する紙文書(仕様書や図面など)をMFPでスキャンするだけで、自動的に関連付けしてERPに保存できるようにした。MFPの液晶パネルからコメントや備考の入力もでき、デジタル化した文書をより容易に管理できるようになった。
発表会の席上では、初年度の目標として、1000本、30億円という数字を公表した。実績は「まだ、かわいいというレベル」と大塚商会の大塚裕司社長は苦笑するが、先行きについては「大きなビジネスになる」と自信を見せる。
「今年は500本は絶対に売る」と目標を示すのは、販売を担当する大谷俊雄・営業本部ODS・CTI特販グループ部長である。顧客管理システムとの連携に加え、よりマーケットサイズの大きい販売管理システムとの連携などを視野においているようだ。
システム系ベンダーも参戦
■統合処理実現に企業連合を形成
こうしたシステム連携にあって大きなテーマとして浮上しているのが、コンピュータ系ベンダーとの協業である。
富士ゼロックスは05年2月、8社と連携、「ApeosPartner」を結成したと発表した。提携相手は、eBASE(対象アプリケーションはeBASE)、NTTデータ(OpenCube Lite)、NTTデータイントラマート(intra-mart)、日本オプロ(OPRO X Server)、デジタルマトリックス(idDesk)、パナソニックソリューションテクノロジー(GlobalDoc)、日立ソフトウェアエンジニアリング(秘文)、内田洋行(スーパーカクテル)の8社。
このほかにもNECとグループウェア「StarOffice21」で、IBMとSAPの協業組織である「IBM SAP ALL-in-Oneパートナー会(MAX会)」との協業なども発表している。リコーもこうした協業には熱心で、05年12月のカラーMFPの新シリーズの発表に当たっては、別表のような16社とのアライアンスを発表した。
「1社で展開するには限界がある。当面、基幹業務システム、ワークフローシステム、セキュリティシステムとの連携が大きなテーマになるが、それぞれ専門知識を持ったベンダーとアライアンスを組んで、最適なシステムを迅速に提供する」(リコー販売事業本部ソリューションマーケティングセンターソリューション企画室・平岡昭夫室長)というのが狙いだ。
■つなぎの技術は方針分かれる
こうしたシステム連携では、つなぎの技術が重要になるが、リコー、キヤノンと、富士ゼロックスは各々違うアプローチを取っている。
キヤノンは「MEAP(Multifunctional Embedded Application Platform)」というソフトをJavaで独自開発、MFP本体に組み込むようにした。また、リコーもESA(Embedded Software Architecture)をJavaで独自開発、MFP本体に組み込めるようにした。
それに対して富士ゼロックスは、Webサービスをベースにしたオープン仕様を指向、XML言語を用いたApeos iiXを開発した。SOAPプロトコルをサポートしている環境であれば、プラットフォームには依存しない、としている。
「MEAPはMFP本体に組み込まれた、アプリケーションのためのプラットフォームだ。これを介することで、MFPは簡単にいろいろな機能を持ったマシンに変身していける。アプリケーション間の連携も簡単に図れるようになる。Color ImageRUNNER MEAP Applicationシリーズとして20本ほど開発済みだが、今後もどんどん増やし、成長できるMFPとのイメージを確立していく」(キヤノン販売ビジネスプロダクト企画本部DS商品企画部MEAP商品企画課・児玉秀郷課長)と意欲を示す。
3社とも仕様はパートナーに公開しているが、独自仕様か、オープン仕様に沿った方が好まれるか、パートナー拡大の一つの要素になるかも知れない。
周知の通り、MFP業界では御三家と呼ばれるリコー、キヤノン、富士ゼロックス3社が競り合っているため、その他メーカーの影は薄くなりがちだが、当然各社ともドキュメントソリューション市場の動向には敏感だ。「ドキュメントソリューションとしては、セキュリティまわりの機能強化を図ることを一つの切り口にしている。1月に発売する新製品には、フェリカカードを利用した個人認証システムを搭載したが、これはサーバー連携を意識したからだ」(東芝テックビジネスソリューション・尾崎清士常務)など、今後動きが活発化してきそうだ。
■業界規模と販売ルートの変化
ドキュメントソリューションの市場規模については、各社とも確たるデータを持ち合わせていないようだ。
唯一ODS21事業として数字を公表しているのは大塚商会だが、同社の場合1-9月累計実績が前年同期比33.6%増の244億円だった。「今年度は400-500億円規模を狙う」(大谷部長)意向だ。
同社の場合、複写機の販売台数も公表しているので、国内全体の出荷台数の比較してみると、複写機全体の台数シェアは約4%、カラー複写機に絞れば約7%のシェアを持っている。ドキュメントソリューションに絞ればさらにシェアは高まり、10%を超すことは確実だ。
仮に10%として業界全体の規模を逆算すると、今年で4000-5000億円規模の業界だと推定できる。実は、社団法人ビジネス機械・情報システム産業会(JBMIA)が公表している複写機の出荷データと大塚商会のデータを見ていると、興味深いことが分かる。図は、JBMIAベースの平均単価と大塚商会の単価推移を比べたものだが、業界平均もカラー化で多少上がってはいるが、大塚商会の単価はぐんぐん上がっているのである。ODS21による付加価値がこのような形で現れているといってよいだろう。
MFPがネットワーク端末に組み込まれるということは、購入の窓口が総務から情報システム部門に変わることを意味する。プリンタの販売では、MFPメーカーはこぞってSIerの開拓に当たってきたが、新世代MFPにあっても同じ現象が起こるだろう。
メーカー直販部隊を持つ富士ゼロックスは、昨年大規模な営業体制の刷新を行ったが、売り方の変化に備えた社内人材の育成はリコーも同じで、全国の直系販社で積極的に行っている。問題は、ディーラーと呼ばれる層である。システムを売れる人材を育てられるのかどうかで、明暗は大きく分かれていきそうだ。
OAメーカー、SIerが実績競う
基幹連携が現在のテーマに
■第一ステップはペーパーレス
「単品売りからシステム販売へ」といううねりの背景にあるのは、デジタル複合機の進化だ。コピーするだけの機械だった複写機が、まずファクシミリ機能を持ち、デジタル化によってプリンタ、スキャナ機能、ネットワーク機能も持つようになった。多機能デジタル複合機(MFP=マルチ・ファンクション・プリンタ)に進化したわけだ。
当初、各社が指向したのは紙文書をスキャナで読み込み、電子データとして保存する「紙と電子の統合処理」「ペーパーレスオフィスの実現」といった方向だった。
いかに簡単に電子化を図るか、保存した電子データをいかに有効に活用するか、といった方向で努力が払われ、各社はさまざまなソフトウェアを開発していった。そうしたソフト群は、スキャン系、ドキュメント管理系、プリント系と大きく分けることができる。文書管理システムでいえば、富士ゼロックスは「DocuShare」「ArcSuite」などが、リコーは「Ridoc Document System」、キヤノンは「imageWARE」、大塚商会はリコーのRidocシリーズを活用する一方、ドキュメント管理システムとしてはVisualFinderを自社開発した。
■紙とデータの一元管理を実現
実際にどんなソフトを揃えてきたかをキヤノンの例で列挙してみよう。
紙文書とアプリケーションデータの一元管理で、効率的な文書管理を実現する「imageWARE Document manager」、紙文書からのデータ抽出をサポートし、快適なデータ入力を実現する「Scan manager」、ビジネスドキュメントの作成を手軽にスピーディに、しかも美しく仕上げる「Publishing manager」、プリント、コピー、FAXなどの利用状況を集計・分析する「NetSpot Accountant」、情報流出を防止するためにドキュメントに地紋を付加して同時にプリントする「Trust Stamp」などである。
各社ともほぼ同様の品揃えを図ってきたといってよい。
「スキャン系では入力のしやすさ、管理系では取り込んだ膨大なデータをいかに管理し、情報共有の実をあげるか、また、バックアップはどうするかなど、どんどん進化している。プリント系では帳票出力や、中綴じ、ホチキス止めまでを含めた後処理機能の強化が進んでいる。特に、セキュリティ対策は重要になっており、暗号化しての保存、電子署名の付加などの機能強化が図られている」(キヤノン販売ビジネスプロダクト企画本部DS商品企画部DS販売企画課・宮坂晃生課長)という。
こうした紙と電子の統合処理は、大手企業が積極的な姿勢を見せてきたが、大手企業に強い富士ゼロックスでは「データハンドリング用ツールDocuWorksの累計ライセンス数は100万を超えた。突出した数字のはずだ」(富士ゼロックス広報宣伝部広報グループ・坂下寿紀マネジャー)と胸を張る。
■基幹系と文書系をつなぐ
こうしたペーパーレスオフィスの指向に加えて、04年には新たなテーマとして「基幹システムとの連携」が浮上した。
富士ゼロックスは、04年11月25日、「データ情報とドキュメント情報をシームレスにつなぐ」という新たなコンセプトを打ち出し、それを実現するツールとして「Apeos」シリーズを発表した。Apeos(アペオス)は、ラテン語でオープンという意味のAperireとOffice Systemを組み合わせた造語で、「超越した開かれたオフィスを実現する場」という意味を込めたと説明している。この時、強調したのは、次の4点で、ドキュメントソリューションに求められる要点をほぼ網羅している。
(1)e文書法の成立や企業会計の透明性が問われるようになり、文書の電子化ニーズが急速に増加している(2)これを真に解決するには、データを取り扱う基幹システムと、契約書・領収書などの紙情報を取り扱う文書系システムの連携が必須になる。だが、この2つの情報を従来の情報機器を使用して日常的な運用の中で、定常的に結びつけることは困難だった(3)これを解決するには、どこのオフィスにもあって誰でも使えるインフラであり、しかも、紙文書を電子文書にして高速に取り込め、さらにネットワーク内で情報処理ができる機器が必要になる(4)こうしたニーズに応えるために、ハードウェアとしての「ApeosPortシリーズ」と、ドキュメントをマネジメントする技術を結集してソフトウェア群を開発した、と説明した。
そして昨年1月31日には、大塚商会とリコーが共同記者会見、「業界ではじめてデジタル複合機をERP(統合基幹業務)システムの入力端末として利用する連携ソリューションDB-DocLinkを開発した」と発表した。基幹システムとMFPの連携が具体的に動き出すことになったわけだ。
それまで、ERPシステムでは、営業履歴や取引明細といった情報を電子データで蓄積・管理してきた。一方、関係する仕様書や図面、FAXによる注文書といった紙文書は、そのまま紙文書として保管するか、文書管理システムなどを用いて管理しているのが一般的だった。このため、ERPシステム上のデータと紙文書を統合管理するには、それぞれのデータを関連付けるため、人間が介在しての作業が必要だった。
DB-DocLinkでは、PCサーバーに保存されているERPの顧客データを、MFPの液晶パネルで指定し、それに関連する紙文書(仕様書や図面など)をMFPでスキャンするだけで、自動的に関連付けしてERPに保存できるようにした。MFPの液晶パネルからコメントや備考の入力もでき、デジタル化した文書をより容易に管理できるようになった。
発表会の席上では、初年度の目標として、1000本、30億円という数字を公表した。実績は「まだ、かわいいというレベル」と大塚商会の大塚裕司社長は苦笑するが、先行きについては「大きなビジネスになる」と自信を見せる。
「今年は500本は絶対に売る」と目標を示すのは、販売を担当する大谷俊雄・営業本部ODS・CTI特販グループ部長である。顧客管理システムとの連携に加え、よりマーケットサイズの大きい販売管理システムとの連携などを視野においているようだ。
システム系ベンダーも参戦
専門知識を軸に協業体制で
■統合処理実現に企業連合を形成こうしたシステム連携にあって大きなテーマとして浮上しているのが、コンピュータ系ベンダーとの協業である。
富士ゼロックスは05年2月、8社と連携、「ApeosPartner」を結成したと発表した。提携相手は、eBASE(対象アプリケーションはeBASE)、NTTデータ(OpenCube Lite)、NTTデータイントラマート(intra-mart)、日本オプロ(OPRO X Server)、デジタルマトリックス(idDesk)、パナソニックソリューションテクノロジー(GlobalDoc)、日立ソフトウェアエンジニアリング(秘文)、内田洋行(スーパーカクテル)の8社。
このほかにもNECとグループウェア「StarOffice21」で、IBMとSAPの協業組織である「IBM SAP ALL-in-Oneパートナー会(MAX会)」との協業なども発表している。リコーもこうした協業には熱心で、05年12月のカラーMFPの新シリーズの発表に当たっては、別表のような16社とのアライアンスを発表した。
「1社で展開するには限界がある。当面、基幹業務システム、ワークフローシステム、セキュリティシステムとの連携が大きなテーマになるが、それぞれ専門知識を持ったベンダーとアライアンスを組んで、最適なシステムを迅速に提供する」(リコー販売事業本部ソリューションマーケティングセンターソリューション企画室・平岡昭夫室長)というのが狙いだ。
■つなぎの技術は方針分かれる
こうしたシステム連携では、つなぎの技術が重要になるが、リコー、キヤノンと、富士ゼロックスは各々違うアプローチを取っている。
キヤノンは「MEAP(Multifunctional Embedded Application Platform)」というソフトをJavaで独自開発、MFP本体に組み込むようにした。また、リコーもESA(Embedded Software Architecture)をJavaで独自開発、MFP本体に組み込めるようにした。
それに対して富士ゼロックスは、Webサービスをベースにしたオープン仕様を指向、XML言語を用いたApeos iiXを開発した。SOAPプロトコルをサポートしている環境であれば、プラットフォームには依存しない、としている。
「MEAPはMFP本体に組み込まれた、アプリケーションのためのプラットフォームだ。これを介することで、MFPは簡単にいろいろな機能を持ったマシンに変身していける。アプリケーション間の連携も簡単に図れるようになる。Color ImageRUNNER MEAP Applicationシリーズとして20本ほど開発済みだが、今後もどんどん増やし、成長できるMFPとのイメージを確立していく」(キヤノン販売ビジネスプロダクト企画本部DS商品企画部MEAP商品企画課・児玉秀郷課長)と意欲を示す。
3社とも仕様はパートナーに公開しているが、独自仕様か、オープン仕様に沿った方が好まれるか、パートナー拡大の一つの要素になるかも知れない。
周知の通り、MFP業界では御三家と呼ばれるリコー、キヤノン、富士ゼロックス3社が競り合っているため、その他メーカーの影は薄くなりがちだが、当然各社ともドキュメントソリューション市場の動向には敏感だ。「ドキュメントソリューションとしては、セキュリティまわりの機能強化を図ることを一つの切り口にしている。1月に発売する新製品には、フェリカカードを利用した個人認証システムを搭載したが、これはサーバー連携を意識したからだ」(東芝テックビジネスソリューション・尾崎清士常務)など、今後動きが活発化してきそうだ。
■業界規模と販売ルートの変化
ドキュメントソリューションの市場規模については、各社とも確たるデータを持ち合わせていないようだ。
唯一ODS21事業として数字を公表しているのは大塚商会だが、同社の場合1-9月累計実績が前年同期比33.6%増の244億円だった。「今年度は400-500億円規模を狙う」(大谷部長)意向だ。同社の場合、複写機の販売台数も公表しているので、国内全体の出荷台数の比較してみると、複写機全体の台数シェアは約4%、カラー複写機に絞れば約7%のシェアを持っている。ドキュメントソリューションに絞ればさらにシェアは高まり、10%を超すことは確実だ。
仮に10%として業界全体の規模を逆算すると、今年で4000-5000億円規模の業界だと推定できる。実は、社団法人ビジネス機械・情報システム産業会(JBMIA)が公表している複写機の出荷データと大塚商会のデータを見ていると、興味深いことが分かる。図は、JBMIAベースの平均単価と大塚商会の単価推移を比べたものだが、業界平均もカラー化で多少上がってはいるが、大塚商会の単価はぐんぐん上がっているのである。ODS21による付加価値がこのような形で現れているといってよいだろう。
MFPがネットワーク端末に組み込まれるということは、購入の窓口が総務から情報システム部門に変わることを意味する。プリンタの販売では、MFPメーカーはこぞってSIerの開拓に当たってきたが、新世代MFPにあっても同じ現象が起こるだろう。
メーカー直販部隊を持つ富士ゼロックスは、昨年大規模な営業体制の刷新を行ったが、売り方の変化に備えた社内人材の育成はリコーも同じで、全国の直系販社で積極的に行っている。問題は、ディーラーと呼ばれる層である。システムを売れる人材を育てられるのかどうかで、明暗は大きく分かれていきそうだ。
リコー、キヤノン、富士ゼロックスなどOA機器メーカーと呼ばれた企業群が「ドキュメントソリューション」メーカーへの脱皮を本格化させている。大手SIerでは、「ODS(Otsuka Document Solutions)21」を擁する大塚商会が極めて積極的な動きを見せる。「単品売りのままでは生き残れない。ドキュメントを切り口に、総合ソリューションを売れる体制を作る」というのが共通した認識だ。第1ステップでは、「電子と紙の統合処理によるペーパーレスオフィスの実現」が共通テーマだったが、一昨年後半から「ドキュメントと基幹システムの連携」という新たなテーマが浮上、その実績づくりを競い合い始めている。ドキュメントソリューション業界の現状を追った。
続きは「週刊BCN+会員」のみ
ご覧になれます。
(登録無料:所要時間1分程度)
新規会員登録はこちら(登録無料) ログイン会員特典
- 注目のキーパーソンへのインタビューや市場を深掘りした解説・特集など毎週更新される会員限定記事が読み放題!
- メールマガジンを毎日配信(土日祝をのぞく)
- イベント・セミナー情報の告知が可能(登録および更新)
SIerをはじめ、ITベンダーが読者の多くを占める「週刊BCN+」が集客をサポートします。 - 企業向けIT製品の導入事例情報の詳細PDFデータを何件でもダウンロードし放題!…etc…
- 1
