その他
ソフト会社の下請け構造脱却を 北海道IT推進協会が後押し 経営力強化へ戦略提携を加速
2006/03/06 21:10
週刊BCN 2006年03月06日vol.1128掲載
北海道内の行政機関やIT関連団体が旗振り役を務め、ITサービス企業の合従連衡が加速している。中小ソフトハウスの「下請け構造脱却」を目的とする動きだ。道内のITサービス企業は、売上高5億円以下の小規模企業が約7割を占め、大型プロジェクトを受注できず、完成商品を販売する力が不足している。この打開策として、道内各社が得意分野の製品やノウハウを持ち寄り、共同でシステム構築を行うなかから、資本参加やM&A(企業の合併・買収)といった戦略的アライアンスを進める。経営力を強化し「下請け」から「元請け」へ転換させる狙いだ。北海道の取り組みは、全国の「下請け受注構造」を見直す上での先行事例といえる。(谷畑良胤●取材/文)
モデルケースの誕生なるか
■まずは“隣の技術”を知ることから
2003年に道内の主要IT関連団体が統合して発足した「北海道IT推進協会」(山下司会長=エス・アイ・ユゥ社長)は2月21日、札幌市内で、医療・福祉、流通分野のIT製品の展示説明会「北のITシーズフェア」を開いた。同フェアは昨年11月に続き2回目。経済産業省の出先機関、北海道経済産業局から「北海道におけるIT企業地域連携活性化事業」の助成金を受け、道内各地のITサービス企業が協力して、需要を掘り起すためのイベントである。
同フェアでは、地場ITサービス企業が開発したGIS(地理情報システム)を使った流通システムや無線IP電話を使った呼び出し・介護記録システムなどを展示し、道内から100人以上が来場した。
この事業は、来場者に最新システムを紹介するほか、ITサービス企業が必要とするシステムなどに関する情報交換の場として重要な役割を果たしている。経済産業局の高橋育男・地域経済部情報政策課情報産業係長は「道内では、隣のITサービス企業がどんな技術を持っているのか知らないことが多い。得意技を持ち寄れば、大手IT企業に対抗できるシステムを構築できる可能性がある」と、こうした取り組みによって“ビジネスマッチング”が進むことを期待する。
同局が昨年11月に集約した「北海道ITレポート」によると、道内のITサービス産業の売上高は4年連続増加し、05年度(06年3月末)は3208億円に達する見込み。道内の産業別では、鉄鋼業(3464億円)に次ぐ第6位の規模だ。しかし、ITサービス企業は、同業他社や大手ITメーカーからの受託によるソフト開発の割合が高く、依然として「下請け受注構造」にあるという。
ソフトハウスの顧客は、約6割が道内で、残りは東京圏を中心とした道外となっている。昨年6月には、同局が首都圏のIT企業と連携を促進する仲介窓口を東京に配置。仲介役はIT市場を調査し、報告書を道内に配信したり、月1回来道して道内ITサービス企業と面談することで、首都圏向け販路の拡大を支援している。しかし、「システムを発注する企業の多くは、体力が不足しているところに仕事を出さない」(高橋係長)のが現実。道内ITサービス産業の活性化に向け、地域をあげてITサービス企業の経営力強化に取り組むことの必要性を指摘する。
先の「北海道ITレポート」によると、同協会の活動などが奏功し、道内ITサービス企業の3割強が技術連携や資本参加など「企業連携」を実践している。「今後、積極的に取り組みたい」とする約2割を合わせ約6割が、企業連携を志向している。このうち、05年中にM&Aをしたのは、6社あった。
■道庁でも経営力強化策を指南
今年に入り、北海道庁では同局の動きに呼応して、コンサルタント会社と協力し「IT産業経営力強化支援事業」を開始。戦略的なアライアンスによる直接受注強化策のほか、M&Aを活用した経営力強化方法や株式上場の手法などの指南をする。この一連の事業により、06年度(07年末)までにITサービス産業の売上高を4000億円に高めるほか、新規株式上場企業を12社、売上高10億円超企業を全道約400社のうち60社(現在45社)に増やす数値目標を掲げている。
北海道では20年前、産業創出の一環として、産官学が協力して札幌市内にIT集積地「札幌バレー」の形成を開始した。だが、中小ソフトハウスが多く、季節変動の影響を受けやすく、受注単価も下落し、安定した経営基盤をもって直接受注できる自立した企業が育っていない。
こうした企業が「下請け受注構造」から脱却し、次のステージに移るためには、ユーザー企業のニーズを踏まえた開発と提案型のビジネスへの脱皮が必要。“ビジネスマッチング”を積極化し、合従連衡することで経営力を高める北海道の取り組みが全国へ波及すれば、「下請け受注構造」問題の解決の糸口となりそうだ。
北海道内の行政機関やIT関連団体が旗振り役を務め、ITサービス企業の合従連衡が加速している。中小ソフトハウスの「下請け構造脱却」を目的とする動きだ。道内のITサービス企業は、売上高5億円以下の小規模企業が約7割を占め、大型プロジェクトを受注できず、完成商品を販売する力が不足している。この打開策として、道内各社が得意分野の製品やノウハウを持ち寄り、共同でシステム構築を行うなかから、資本参加やM&A(企業の合併・買収)といった戦略的アライアンスを進める。経営力を強化し「下請け」から「元請け」へ転換させる狙いだ。北海道の取り組みは、全国の「下請け受注構造」を見直す上での先行事例といえる。(谷畑良胤●取材/文)
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