その他
札幌市、高度IT人材を600人育成へ 人材登録し、発注者に公開
2006/04/03 21:10
週刊BCN 2006年04月03日vol.1132掲載
札幌市は2006年度から3か年計画で、高度IT技術者を育成する新規事業を開始する。ITスキル標準(ITSS)に示された「ITアーキテクト」のほか、「組み込み」「セキュリティ」の各人材を3年間で600人育成。全国共通の指標で認証した技術力に加え、システム構築やソフトウェア開発の経験年数、開発実績などの人材情報を登録し、ウェブサイトなどで公開する。高度IT人材がどの程度在籍しているかが分かれば、道内や首都圏などでシステム開発する企業は、道内ITサービス企業へ案件を安心して発注しやすくなる仕組みだ。自治体主導のこうした事業は全国初。市内のITサービス企業が「下請け」を脱し、「元請け」に転じるための人材育成事業として注目される取り組みだ。(谷畑良胤●取材/文)
自治体主導では全国初
■道内外からの受注獲得を狙う
札幌市は06年度の新規事業「高度情報通信人材育成・活用事業」の予算を5500万円計上した。同事業では、さっぽろ産業振興財団に人材育成全般を受け持つ「人材育成・活用センター」と、市内ITサービス企業に所属する高度IT技術者の情報を道内や首都圏に発信する「企業情報提供センター」を新設。道内外に札幌の技術力を示し、案件を受注することを狙う。
人材育成・活用センターでは、プラットフォームベンダーなどの協力を得て、札幌の実情に応じて策定した高度IT人材像「札幌スタンダード」に基づき、育成講座などを開始する。
同市とマイクロソフトは昨年9月、「札幌ITアーキテクト育成プロジェクト」を立ち上げ、市内ITサービス企業の技術者17人が「札幌に必要なIT人材」やスキルの定義、教材作成などを終えた。新年度からは、ここに参画したメンバーとITアーキテクト育成プロジェクトコミュニティ「Next Stage Produce」を設立し、「ITアーキテクト育成講座」を開始する。
札幌市は「マイクロソフトだけでなく、日本オラクルなどプラットフォームベンダーの協力を得て、多様なプラットフォームに対応できる人材を育成する」(福井知克・経済局長)と、人材育成を通じ、全国でもトップレベルのITサービス企業の振興につなげる考えだ。
■下請けIT企業を元請けに育成
ただ、IT業界で受注機会を得るには、こうしたプロジェクトを通じて育成した技術力をもつ人材情報を道内外に発信することが不可欠になる。このため、新設する「企業情報提供センター」では、全国共通の指標で技術者を認証した人材情報を登録し、ウェブサイトなどで発信する。これを基に、道内外の企業は、案件を発注する。
札幌市内のITサービス企業の顧客は、約6割が道内で、残りが首都圏を中心とした道外だ。「他の地域に先行して高度IT技術者を育成すれば、国内外のソフト開発にも対抗でき、案件が増え、アドバンテージになる」(福井・経済局長)と分析している。
市経済局によると、市内のITサービス産業は、04年度(05年3月期)の売上高が約2800億円に達し、前年比7-8%伸びるなど、全国的に成長が著しい。しかし、7-8割の市内ITサービス企業は、年商5億円以下で、同業他社や大手ITメーカーからの「下請け受注」に頼っているのが現状。市では、産業振興を図る上で、この大半を年商10億円以上の「元請け」に育てるためにも、システム開発に幅広い見識をもつ人材を輩出することが重要と考えた。そのために、はじき出した高度IT人材の必要数が冒頭の600人という。
■受注・ノウハウ蓄積を循環
市内のあるITサービス企業幹部によれば、「下請けだけの仕事では、元請けの仕様書に従い仕事するだけで、ノウハウが自社に蓄積しない。しかも、元請けの仕様書に誤りがあっても指摘できず、変更要求をするにも知識がない」という問題を抱えているという。「下請け」から「元請け」へ脱皮する第一段階として、高度IT人材の育成が急務であるというのだ。
今回の事業は、高度IT人材を育成するだけでなく、発注側の企業ニーズに沿った研修カリキュラムなどを実施するほか、自治体自ら企業側へ情報を発信するところにも意義がある。「技術力を磨くには、さらに豊かな経験が必要になる」(福井・経済局長)と、産官学で「人材育成→案件発掘→直接受注→ノウハウ蓄積」のサイクルを実現させようとしている。日々変化するIT技術や企業ニーズを、市ぐるみでどうキャッチアップするか課題は少なくない。だが、全国トップレベルのIT集積地となるための礎を築く上で、貴重な一歩を踏み出したことは間違いない。
札幌市は2006年度から3か年計画で、高度IT技術者を育成する新規事業を開始する。ITスキル標準(ITSS)に示された「ITアーキテクト」のほか、「組み込み」「セキュリティ」の各人材を3年間で600人育成。全国共通の指標で認証した技術力に加え、システム構築やソフトウェア開発の経験年数、開発実績などの人材情報を登録し、ウェブサイトなどで公開する。高度IT人材がどの程度在籍しているかが分かれば、道内や首都圏などでシステム開発する企業は、道内ITサービス企業へ案件を安心して発注しやすくなる仕組みだ。自治体主導のこうした事業は全国初。市内のITサービス企業が「下請け」を脱し、「元請け」に転じるための人材育成事業として注目される取り組みだ。(谷畑良胤●取材/文)
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