その他
普及するか 新型のソフト提供サービス
2006/04/10 14:53
週刊BCN 2006年04月10日vol.1133掲載
業務ソフトウェア販売の新しい形態として、ソフト機能をホスティング型で提供するサービスモデルが国内に波及しそうだ。米国ではすでに、複数のベンダーが市場を形成し始めている。国内市場には、同モデルを前面に押し出す米セールスフォース・ドットコムが2000年に日本法人を設立して参入。今年4月には、同社と米国で競う米ネットスイートも日本法人を構えた。年内にはマイクロソフトも国内で同モデルを展開する予定で、国産業務パッケージベンダーとの競合も予想される。
米国に続き国内でも本格化 ユーザーの基幹系システムとも連動 セールスフォースとネットスイートが提供するホスティング型のサービスモデルは「Software as a Service(SaaS)」と呼ばれ、注目が集まっている。業務パッケージをユーザー企業のハードウェアへ物理的にインストールするのではなく、両社のようなベンダーが管理・維持するサーバー内にインストールし、ユーザー企業が利用料金を支払う方式である。 SaaSモデルは、導入費用や保守費が安価であるほか、アップグレードの手間がかからず、米国や日本で、IT投資資金の捻出が難しい中堅・中小企業向けに拡大している。ASP(アプリケーションの期間貸し)とは異なり、オンライン上で提供中のソフトとユーザー側の基幹システムを統合し、新たな機能を生み出せる。 ネットスイートの日本法人は、ERP(統合基幹業務システム)、CRM(顧客情報管理)、EC(電子商取引)の機能を備えたスイート製品などを6月に投入する。初代社長に就任した元マイクロソフトの東貴彦社長は「ERP市場では、SAP製品に匹敵するパワーを、より低コストで提供できる」としたうえで、「SaaSモデルは今後5年間で、国内の業務アプリケーション市場の2-3割を占める」と、同社やセールスフォースを含めてシェアの見込みを弾く。 国内市場で先行するセールスフォースは昨年度(06年1月期)、前年比売上高で世界の成長率を上回る85%増を達成した。しかし、設立から2-3年の間は、市場の認知を得るのに苦労したという。ASPと同様に、オンライン上で基幹データを交換する際のセキュリティ面に不安を抱く企業が多いことなどが影響して浸透が遅れたためだ。しかし、日本法人の宇陀栄次社長は「導入先が拡大し、トラブルもゼロで、信頼性が増した」と、今後の成長には自信を見せる。 セールスフォースはCRM製品を主に提供しており、ERPを提供する予定のネットスイートと異なる。そのため、国産ERPベンダーやこうしたベンダーのソフトを売る販売会社とは「共存共栄が可能」(宇陀社長)という立場をとる。同社は今年に入り、同社製品上からISVなどのソフトをオンデマンドで提供できるプラットフォーム製品「AppExchange(アップエクスチェンジ)」を投入。ISVやSIerなどとのアライアンスを強化し、パートナーの得意とする製品やサービスを共同で拡大しようとしている。 最近では、こうした複数の異なる提供元の技術や製品を複合させて提供する新サービスが「マッシュアップ」方式と呼ばれ、ベンダー間の協業が活発化している。マイクロソフト日本法人が「まずは、CRM製品を今年中にも提供する」(ダレン・ヒューストン社長)という業務アプリケーション「Dynamics(ダイナミックス)」は、この方式を柱としているとされる。 ネットスイート日本法人は、直販中心の米国と異なり、製品の拡販に向けパートナー戦略を開始する。このなかには、ISVの製品と組み合わせ拡販するパートナーも募集する計画。東社長は「日本の商習慣に合った製品機能を追加することで、市場を拡大できる。ただ、1、2年で急速に浸透するとは考えていない」と、慎重な姿勢を崩さない。 ネットスイートの参入について、中堅・中小企業向けにERPを提供するISVの多くは「ビジネスモデルが分からず、コメントできない。むしろ、マイクロソフトのほうが脅威に感じる」と口を揃える。「ダイナミックス」は、オフィス製品と組み合わせ使い勝手を考慮したインターフェイスを提供するといわれ、ウィンドウズ上でERPを提供するISVへの影響が懸念されるためである。 ERPのSaaSモデルが日本市場で需要を拡大できるかは、先行例が少なく不透明。だが、同モデルのCRMは、基幹システムや他の業務アプリケーションなどと連携して浸透し始めている。このモデルが新市場を創出するのか注目していく必要がありそうだ。
業務ソフトウェア販売の新しい形態として、ソフト機能をホスティング型で提供するサービスモデルが国内に波及しそうだ。米国ではすでに、複数のベンダーが市場を形成し始めている。国内市場には、同モデルを前面に押し出す米セールスフォース・ドットコムが2000年に日本法人を設立して参入。今年4月には、同社と米国で競う米ネットスイートも日本法人を構えた。年内にはマイクロソフトも国内で同モデルを展開する予定で、国産業務パッケージベンダーとの競合も予想される。
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