WAN経由のファイルアクセス高速化が可能なWAFS（ワイド・エリア・ファイル・サービス）システムに普及の兆しが見えてきた。ファイルサーバーをセンターなど1か所に集約するニーズが高まっていることに加え、ウェブを通じたアプリケーションサービスの増加が要因。ネットワーク系SIerのなかには、WAFSシステムの拡販に加え、他分野の事業を拡大しようとする動きも出てきた。（佐相彰彦●取材／文）

拡販を図るSIerが増加

■アクセスの遅延解消が顕著に

　WAFSは、WANを介したファイルアクセスを現状より10倍程度に高速化できる技術で、擬似的に回線帯域を拡大できる。ナローバンドが主流の米国では導入が進んでおり、ファイルサーバーの集約化によるアクセス遅延を解消している。

　日本では、1拠点にサーバーを集約することはあっても、WAFSシステムの導入が少なかったといわれている。ブロードバンド環境が整っていて、米国に比べ回線帯域が大きいためだ。WAFSシステムの価格は、一般的にセンター側の装置が300－400万円、拠点側の装置が100－150万円。まずは、WAFSを導入せずにファイルサーバー集約の新システムを稼働させるのが一般的だったようだ。そのため、WAFSシステムを販売するネットワーク系SIerは苦戦を強いられていたといえる。

　しかし、最近ではサーバーのセキュリティ強化や運用管理コスト削減などを実現するため、大企業や中堅企業でサーバーの統合化を意識するようになってきた。しかも、ウェブを通じたアプリケーションサービスの普及が加速していることも相まって、アクセス遅延防止のニーズが高まってきている。そのため、WAFSシステムが脚光を浴び始めているというわけだ。

　WAFS製品を販売するSIerにとっては、こうした状況をビジネスチャンスと見ており、WAFSシステムの拡販体制を整える動きが出てきた。

■他分野へのビジネスチャンスも

　沖電気ネットワークインテグレーションは、今年6月にWAFS搭載のアプライアンス製品「レース」シリーズのラインアップを増やす。これまでは、WANやファイルアクセス、アプリケーションすべての機能を1製品で提供してきたが、各顧客企業のニーズに合わせて機能を搭載。製品の価格は搭載機能数によって異なるが、「これまでの半額程度で提供できるようになる」（栗原希典・ネットワーク営業本部営業第一部営業第一チームリーダ）としている。

　機能の細分化により、販売代理店を増やせる可能性が出ており、「アプリケーションやファイルサーバーの分野では、サーバー統合を重視してストレージメーカー2社とアライアンスを組んだ。アライアンスメーカーの販売代理店経由で、製造業やサービス会社など全国に多くの拠点を持つ企業に対して拡販できる」という。WAN高速化機能では、データセンターが販売代理店となり帯域不足の解消サービスに向けて提携を急ぐことにしている。

　一方、ネットマークスでは、米リバーベッドの製品「スチールヘッド」シリーズを昨年7月から発売しており、「ブロードバンド環境で回線が太くなっているとはいえ、データ量が膨大になっているため、WAFSの導入を意識する企業が増えている」（広報関係者）としている。同製品の年間売上高は5億円以上と見込んでいる。

　また、最近では災害時などのビジネス継続対策であるディザスタリカバリー製品や、ネットワーク検疫製品などの拡販にもつながっている。「セキュリティやストレージ分野のニーズからWAFSシステムを導入するケースもある」（同）という。

　WAFSシステムの拡販をベースに他分野の事業を拡大する動きが出ている。そういった点では、SIerにとってWAFSシステムがセキュリティやストレージなど新しい事業領域開拓の商材になりえる可能性を秘めている。