その他
「仕様書」もっと分かりやすく 大手SIerが「標準化」策定へ
2006/04/24 14:53
週刊BCN 2006年04月24日vol.1135掲載
NTTデータや富士通など国内主要の大手SIベンダー6社が、情報システムを受注する際の「業務システム仕様」を、ユーザー企業に分かりやすく記述する方法や合意方法について共同で検討を開始する。6社はNTTデータを事務局とする「発注者ビュー検討会」を発足。参加各社のノウハウや事例を持ち寄り「標準方法」を策定する。他の国内SIベンダーやユーザー企業団体などにも働きかけ普及を目指す。だが、発足段階では日本IBMなど外資系SIベンダーが不参加で、ユーザー企業側の協力が得られるかどうかも不透明だ。実効性を伴うIT業界全体の動きになるまでには紆余曲折が予想される。
発注側とのスレ違い最小限に
検討会には、NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、東芝ソリューション、構造計画研究所の6社が参加。各社が仕様を合意する際に利用しているノウハウを集約し、「標準方法」として体系化する計画だ。具体的には、「システムの画面遷移・定義」「ビジネスプロセス」「データモデル」「業務ロジック」の4分野について、仕様の確認や合意に適した記述方法を策定する。アプリケーションの機能要件が対象で、OSやデータベースなど、技術や製品の実装方法は含まれない。
仕様の記述方法としては、一部でUML(ユニファイド・モデリング・ランゲージ)など、ソフトウェア開発の標準言語を利用した方法が使われているが、「開発者の視点で記述してあり、ユーザー企業には理解しにくい」(NTTデータの山下徹・執行役員副社長)という問題があった。
今回の構想は、こうした受注者と発注者の認識のズレを解消し、開発時の「手戻り」発生を抑制するのが狙い。
数年前まで情報システムは、既存業務の合理化がほとんどで、SIベンダー側が企業側の要件を理解しやすかった。最近では、新たな業務をシステム化する要求が増えたほか、部門単位で発注するケースが多くなり、「必ずしも発注者側の要件を理解して開発に着手しているとは言い難い」(山下副社長)という。こうした状況が、設計段階やシステム構築後の変更要求が増加する要因となっている。 検討会の発足は、こうした両者の誤解を最小限にとどめようというのが目的。他の独立系SIベンダーにも参加を呼びかけ、各社の仕様記述フォームなどを持ち寄り、2007年上期(07年9月)までに4分野の「標準方法」を段階的に提示する。近い将来には、標準団体への申請も視野に入れている。「発注者側と受注側が歩み寄って標準方法を検討するのは、世界的に初の試み」(山下副社長)という。
「標準方法」を決定する前段階では、ユーザー企業による評価・検証も実施する予定。ユーザー企業団体の日本情報システム・ユーザー協会(JUAS、河野俊二会長)にも協力を求める予定だという。
一方で、ユーザー側の反応はいまひとつ。JUASの細川泰秀・専務理事は「こうした動きが出てきたことは歓迎する。しかし、6社の動きは『one of them』であり、SIベンダー側の視点」として、JUAS独自に別途プロジェクトを立ち上げる意向も示唆している。
ユーザー企業では、内部統制強化のため、企業内データの一元化を進める動きが活発化している。このため、発注者には、分散データをどのデータベースに、どう関連づけるかを明確化すべきだという要望が強い。「検討会がOSやデータベースなどの『見える化』を議論しないのは疑問」として、ミドルウェアベンダーを含めた幅広い議論が必要との見方もある。 SIベンダー側でも、検討会の参加呼びかけに対しては、「仕様の見せ方は、他社との差別化部分。自助努力が先」「大手SIベンダーだけの新たな枠組みつくりだ」などと、参加を見送る企業も少なくない。
これに対し、富士通の平田宏通・経営執行役常務は「差別化の道具ではない」と、これを否定する。同検討会が策定する「標準方法」は、業界全体に浸透することで威力を発揮する。発注者側と受注者側、あるいは2次請けベンダーなどが歩み寄って、参加企業の枠組をどこまで拡大できるかがポイントになりそうだ。
NTTデータや富士通など国内主要の大手SIベンダー6社が、情報システムを受注する際の「業務システム仕様」を、ユーザー企業に分かりやすく記述する方法や合意方法について共同で検討を開始する。6社はNTTデータを事務局とする「発注者ビュー検討会」を発足。参加各社のノウハウや事例を持ち寄り「標準方法」を策定する。他の国内SIベンダーやユーザー企業団体などにも働きかけ普及を目指す。だが、発足段階では日本IBMなど外資系SIベンダーが不参加で、ユーザー企業側の協力が得られるかどうかも不透明だ。実効性を伴うIT業界全体の動きになるまでには紆余曲折が予想される。
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