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ソフト・ハードともに「漏えい防止」で活況 Winny対策──念には念を 現場任せでは安心できない?
2006/05/15 14:53
週刊BCN 2006年05月15日vol.1137掲載
今年1月から目立ち始めた「Winny」からの情報流出。それを好機とみて、セキュリティソフトメーカーを中心としたITベンダーは、自社のセキュリティ製品・サービスのうたい文句に「Winny対策」を加え、販売強化に乗り出した。一連の情報流出はずさんな管理体制とセキュリティ意識の低さが問題で、ツールがあれば万全というわけではない。パソコンユーザーの側ではそのことに薄々気づきながらも、“Winny対策ツール”に大いなる関心を寄せているようだ。(木村剛士●取材/文)
防衛庁の漏えい事故が引き金に
■前年同期比2倍超の伸びも
Winnyを検出し自動削除する機能を持つ法人向けウイルス対策ソフト「ウイルスバスター コーポレートエディション アドバンス」。Winnyからの情報流出が頻発した今年1-3月の販売本数は、昨年同時期に比べ約2.4倍の伸びを示した。Winny検出・削除機能を搭載しない通常版の伸び率は約10%増止まり。アドバンスの価格は通常版よりも約1万3000円高いが、購入者が飛躍的に増えている。「伸びた理由のすべてが、Winny対策機能目当てではない。だが、Winnyがきっかけでアドバンスに乗り換えるケースが増えたのは事実」と同製品を販売するトレンドマイクロは説明する。飽和感が出始めている法人向けウイルス対策ソフト市場で、顧客単価アップに貢献している。
伸びているのは、ウイルス対策ソフトだけではない。アルプスシステムインテグレーション(ALSI)が教育機関を中心に販売している、Winnyを動作不能にする機能を備えたシステムリカバリソフト「WinKeeper」の今年1-3月の販売本数は、昨年同期に比べ20%増、昨年10-12月と比較すると約2.5倍の実績をあげた。WinKeeperは、システムの変更を元に戻すのが本来の機能で、Winny対策に使えるアプリケーション操作制御機能は、脇役的な存在。加えて、1999年に発売した初期バージョンから搭載しているが、Winny対策をうたった途端、急速に販売が伸びた。目立たなかった黒子役が最大の功労者になった格好だ。
“Winny騒ぎ”はパソコン本体の販売にも好材料となったようだ。「防衛庁に導入したような形で買いたいのだがどうすればよいのか」。デルの営業担当者にはこのような問い合わせ電話が増えている。4月13日、デルは情報流出を起こした防衛庁に、5万6000台のPCを納入したと発表。納入したPCにはウイルス対策ソフト「ウイルスバスター コーポレートエディション」をプリインストールするなど、事前にセキュリティ対策を施したうえで提供した。セキュリティ対策を施したPCというイメージが、一気にユーザーの関心を集めたわけだ。
相次ぐの情報流出のなかでも主役格を演じた防衛庁の漏えいは、業務に使用するPCを貸与せずに、セキュリティ対策を各利用者に任たまま個人PCのアクセスを容認していたのが原因。個人PCのアクセスを認めている企業・団体は少なからずあるはずで、デルはこのマーケットを狙っている。「Winny騒ぎの波及効果は確実にビジネスに結びつく」(デル)と読む。
■実ビジネスはこれからが本番
Winnyからの情報流出原因を調べてみると、個人PCのアクセス許可など情報セキュリティに対する意識の低さが背景にあることは間違いない。適切なセキュリティポリシーをしっかりと運用していれば防げた部分は大きい。ITベンダーの多くが販売に力を入れる「Winny対策ツール」は、必ずしも必要欠くべからざるものというわけではない。
ただ、企業・団体のセキュリティ責任者は、その事実を分かっていても、社員や職員任せでは安心できない気持ちを抱き、念には念を入れて導入しているケースがある。また、「セキュリティやITの知識がない企業・団体が、何かしなければいけないと感じて、わけも分からぬまま導入するケースもある」(セキュリティソフトメーカー幹部)。いずれにしても、ビジネスには確実に結びついているのだ。
一連の“Winny騒ぎ”について、ネットワーク管理ソフト開発・販売のエムオーテックス(MOTEX)の神戸仁・取締役営業部長は、「引き合いの多さや意識改革には効果は絶大。まだユーザーは検討段階。実ビジネスにつながるのはこれからが本番」と今後はさらに販売が伸びるとみている。社会現象ともいえる“Winny騒ぎ”はしばらくユーザーの関心事となり、セキュリティビジネスをけん引する要素となることは間違いないだろう。
今年1月から目立ち始めた「Winny」からの情報流出。それを好機とみて、セキュリティソフトメーカーを中心としたITベンダーは、自社のセキュリティ製品・サービスのうたい文句に「Winny対策」を加え、販売強化に乗り出した。一連の情報流出はずさんな管理体制とセキュリティ意識の低さが問題で、ツールがあれば万全というわけではない。パソコンユーザーの側ではそのことに薄々気づきながらも、“Winny対策ツール”に大いなる関心を寄せているようだ。(木村剛士●取材/文)
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