その他
「内部統制」支援ビジネス 中小企業に需要あり
2006/06/12 14:53
週刊BCN 2006年06月12日vol.1141掲載
日本版SOX法(企業改革法)の施行を前に、IT企業で内部統制の支援事業が活発化している。当面は、大企業の取引先やグループに属する中小企業が主な対象。だが、会計、財務に関わる基幹業務システムの透明性確保は「どの中小企業も対象になる」と、将来の需要を見越し、コンサルティングや診断、社内教育など啓蒙活動が相次ぎ始まっている。調査会社IDCジャパンは、同法対策のIT関連市場は2008年に2607億円に伸びると分析している。その多くは、大企業が対象だが、中小企業にも波及し、さらに市場規模が膨らむとの見方をするIT企業は少なくない。
会計の透明性確保が必須に
大企業の系列、取引先も対応を検討
08年3月に施行予定の「日本版SOX法」や今年5月に施行された「会社法」は、主に上場する大企業や関連するグループの中小企業に対して、「内部統制システム」の構築を義務づけるものだ。だが、「会社法」では、中小企業への内部統制強化を推奨するなど、実質的にすべての企業が対象になっているといえる。ソフトウェア開発のビーエスピー(BSP)は「取引先や金融機関、顧客など、ステークホルダー(利害関係者)のすべてが企業の透明性を求める時代」(古川章浩・常務取締役コーポレート企画部部長)と、非上場企業でも内部統制を強化する必要性を訴える。
BSPと子会社のITコンサルティング会社、ビーエスピーソリューションズは今年に入り、内部統制上で重要となる会計、財務にかかわる基幹業務システムの運用統制を支援する事業を開始した。企業の会計処理の透明性を高めるために「誰が決裁、更新し、どのような業務プロセスで管理しているか、手順や内部規定の作成などをコンサルティングしている」(藤原達哉・ITサービスマネジメントグループマネージャー)という。
必要に応じてデータ追跡できる運用方法を伝授したり、証跡や保存した記録を管理する自社ソフトを販売する。「団塊世代の大量退職に伴う2007年問題を控え、汎用機を導入する中小企業は、システム運用・管理方法の見直しを迫られている。中小企業に対しては、啓蒙活動が中心だが、内部統制を強化する機運に乗じて、システムを変更する中小企業は増える」(藤原マネージャー)と、分析している。
それでも、中小企業では、内部統制を強化する動きが鈍い。この認識を改めるため、BSPと同じ手法で、コンサルティングや教育事業をまず提供し、システムの再構築を促すITベンダーは少なくない。福岡市のITコンサルティング会社、ナレッジネットワークは、6月から大手企業を取引先とする中小企業を対象に「日本版SOX法対策診断サービス」を開始した。診断サービスを受けた中小企業に対し、内部統制上の弱点を指摘し、必要に応じてSIerやISV(独立系ソフトベンダー)を仲介し、システム構築に結びつける。
福岡県では、学識経験者を中心に「自動車100万台新戦略委員会」を立ち上げ、九州地域内に自動車メーカーの誘致を進めている。すでに九州の自動車関連産業の約5割を地場産業が占めている。しかし、人材や資金、技術、情報システムなどの経営資源に限りがあり、部品調達先の“ファミリー”としての地位を確保するのに困難な地場の中小企業が多い。
受発注や売掛などのデータを適切に処理できる内部統制上のシステムが不備であり、「自動車メーカーに受け入れられない場合も少なくない」と、ナレッジネットワークの森戸裕一社長はいう。九州地区に限らず、他の地域でも大手製造業の取引先に加わろうとする場合、同じ問題が発生するのは必至だ。
中堅・中小企業向けのERP(統合基幹業務システム)「Smileα」を発売する大塚商会には、同製品のセミナーを開催するたびに、中小企業の情報システム担当者などから「この製品は内部統制に対応しているか」という問い合わせが舞い込むようになった。「大手企業の系列会社は、内部統制強化の必要性を認識し始めている。当社でも、内部統制を強化するシステムを中小企業に推奨するための仕組みを検討している」(石井ふみ子・スマイルプロモーション部次長)と、会計システムのコンサルティングなどを通じ、需要があるかを見極めていく方針だ。
一方、大企業向けに統合システム運用管理システム「JP1」で、内部統制強化に向けた支援を打ち出す日立製作所は「中小企業は法律の規制を受けないこともあって、内部統制のシステムづくりを急ぐ例はまだ少ない」(八木敬之・BCMビジネスセンタ部長代理)と、当面、中小企業向けは様子見の状態という。しかし、「将来的には、上場企業の有価証券報告書に『コンプライアンス』に関する記述が登場するはず。そうなれば、取引先などの中小企業は内部統制を厳しく問われるようになる」と、警鐘を鳴らす。
中小企業を対象に業務ソフトを提供するオービックビジネスコンサルタント(OBC)なども、自社製品が「日本版SOX法」に対応していることを各媒体を通じ宣伝している。PRと並行して「何が必要かまだ分からない」という中小企業を対象に、セミナーなどを開催し、将来的な需要期に備えている。こうした啓蒙活動次第では、中小企業の内部統制強化の動きが、来年3月の決算期にも活発化しそうだ。
日本版SOX法(企業改革法)の施行を前に、IT企業で内部統制の支援事業が活発化している。当面は、大企業の取引先やグループに属する中小企業が主な対象。だが、会計、財務に関わる基幹業務システムの透明性確保は「どの中小企業も対象になる」と、将来の需要を見越し、コンサルティングや診断、社内教育など啓蒙活動が相次ぎ始まっている。調査会社IDCジャパンは、同法対策のIT関連市場は2008年に2607億円に伸びると分析している。その多くは、大企業が対象だが、中小企業にも波及し、さらに市場規模が膨らむとの見方をするIT企業は少なくない。
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