ブレードサーバーの新製品が一部のコンピュータメーカーから投入され始めた。各社とも、コスト削減、運用業務の効率化、データの一元化というニーズを満たす製品としてブレードサーバーを位置づけ、本腰を入れて取り組み始めた。とくに、シェア3位以下のメーカーの攻勢が目立つ。日本ヒューレットパッカード(日本HP、小田晋吾社長)、デル(ジム・メリット社長)、富士通(黒川博昭社長)はその代表例で、同じタイミングで新製品を発表した。IAサーバーにおけるブレードの販売台数比率はまだ小さいが、メーカーの拡販戦略はにわかに動き始めている。
サーバー統合で成長力に期待
SIerとの連携で拡販体制を強化
IAサーバーのなかで、ブレードサーバーが占める比率は昨年度(2005年4月─06年3月)5.7%とまだ小さいが、01年の登場以来、着実に成長している。調査会社ノーク・リサーチの伊嶋謙二社長は、「急速というよりも今は徐々に伸びている分野。今年度の販売台数は4万6000台くらいで、IA全体の8%程度を占める」と予測する。
情報システムの複雑化は企業にとって深刻な問題になっている。そのため、サーバーを統合してシステムを簡素化し、運用コストの削減と運用管理業務の効率化を図りたいユーザーは多い。ブレードは、同等スペックのサーバーよりも初期投資はかかるが、通常のサーバーに比べると省スペースで管理も容易。運用コストを削減するメリットがある。
メーカーが開発・販売を強化する理由は、「サーバー統合」という旬のニーズを満たす打ってつけの製品だからだ。今は一般企業よりもIDC(インターネットデータセンター)を保有・活用するSIerの需要が強いが、それでも「今後は着実に一般企業にも浸透する」と伊嶋社長は分析する。
ブレードの昨年度メーカー別シェア順位は、ノーク・リサーチの調べによると1位はNEC(28.7%)、2位が日本IBM(24.5%)、3位が日本HP(21.0%)。その後にデル(15.1%)、富士通(8.4%)が続く。日本IBMの場合、IAサーバー全体では5位で、ブレード市場での強さが際立つ。ただ、ブレードは、「まだ市場規模が小さいだけに大型案件が1つ決まれば、すぐに順位は入れ替わる」と、日本HPの上原宏・インダストリースタンダードサーバ製品本部本部長と、デルの松原裕典・エンタープライズシステムズマーケティング本部プロダクトマーケティングマネージャは、異口同音に市場の状況を語る。シェア獲りはこれからが本番という意気込みだ。
今月中旬に新製品を立て続けに発表したのは、3位以下の日本HP、デル、富士通。6月から新製品の投入が始まっている。日本HPの上原宏本部長は、「シェア40%を目指す」と挑戦的な数値をぶち上げた。一方、富士通は「早期にシェアを20%まで高めたい」(山中明・経営執行役サーバーシステム事業本部長)と強調。デルは、「まずはトップ3。長期的には当然首位を狙う」(松原マネージャ)。
富士通は「これまで当社がブレードを売っていることすら知らなかったユーザーもいるのではないか」という問題意識のもとに、まずはブランドの知名度向上に乗り出す。IAサーバーにかけるプロモーション費用を「前年に対し3倍使う」(増田実夫・サーバシステム事業本部IAシステム事業部長)。そのなかでも「ブレードは中核」という。また、ブレードの用途を8つのケースに分けたテンプレートサービスも用意。このサービスをエンドユーザーと代理店に提供する体制を整えた。
ブレードをSIの切り札に
日本HPは昨年10月にブレードに特化した教育・販売支援制度を開始し、大塚商会など13社のパートナーが集まったことを強みにする。1年前は販売台数のほぼすべてが直販だったが、今では「約70%は代理店経由」(山中伸吾・インダストリースタンダードサーバ製品本部ブレード・バリュープロダクトマーケティング部)と、間接販売の実績が出始めている。ブレード特有の技術を徹底して教えるプログラムを武器に、新たな代理店を集めるとともに既存の代理店との距離を縮める施策に力を入れる。デルは、強化中の導入コンサルティングサービス「DPS」との組み合わせを武器にSIerとの連携を模索する。
ブレードサーバーの市場規模はまだ小さく顧客層も限られるが、各社は今後の成長力を見込んで、本格的な普及期を前に他社を引き離したい考えだ。米国市場では、すでにIAサーバーのなかでブレードは約15%を占めているという。今の企業のニーズを考慮すれば、飛躍的に成長する可能性もないとはいえない。ブレードを担ぐSIerにとっても、大きなビジネスチャンスであることは確かだ。「ブレードサーバーのメリットをしっかりと伝えて売れるSIerはまだ少ない」(サーバーメーカー各社)。SIerにとっては、価格低下が止まらないIAサーバーのなかで、ブレードに対するスキルを身につけることで、SI事業の差別化、売り上げアップを図れる可能性もある。