その他
国内IT企業 中国でのシステム構築事業拡大へ
2006/07/03 14:53
週刊BCN 2006年07月03日vol.1144掲載
これまで中国を自社製品の生産拠点とみなしていた日本の大手コンピュータ総合ベンダーが、中国国内で急成長するシステム需要の開拓に取り組み始めた。IBMやヒューレット・パッカード(HP)、デルなど世界大手がひと足早く中国向けのビジネスを強化しているうえに、中国の地元SIerの実力も日増しに高まっている。国内ベンダーが活路を見いだすためには、得意業種などに絞り込んだ展開と、中国の地元ベンダーとのパートナーシップの確立が鍵を握ることになる。
問われる国内ベンダーの実力
得意業種などで地元企業と協業
中国の情報システム産業は、ここ数年、国内総生産(GDP)の伸び率のおおよそ1.5-2倍にあたる年率15-20%の勢いで急成長している。順調な経済発展に伴いIT投資が活発化。世界トップクラスの有望市場と変わりつつあることから、日本を含む世界の有力ITベンダーが資本を投下し、ビジネス拡大に向けた競争を激化させている。日本国内では景気好転が見られるものの「国内の潜在力で見れば中国はけた違いに大きい」(日系ベンダー幹部)と、グローバル展開の切り札と見る。
NECは中国市場を「ファーストプライオリティ」(NECソリューションズ〈中国〉の木戸脇雅生・総裁)と位置づけ積極的な投資を進める。富士通はグループ売上高全体に占める海外での売上比率を現在の約3割から2010年には5割にまで引き上げる計画で、「中国ビジネスの成否がカギを握る」(富士通〈中国〉の武田春仁・総経理)と北米と同様に力を入れていく方針だ。
日立製作所はグループ全体の情報通信システム事業の売上高のうち、2010年まで約10%を中国国内で売り上げる目標を掲げる。4年後の情報通信システム事業の連結売上高が仮に昨年度(06年3月期)の約2兆3600億円から3兆円規模に拡大していたとすれば、このうち3000億円規模の売り上げを中国で見込むことになる。
しかし、現実には課題も少なくない。IBMなど世界大手ベンダーとの競争や地元大手SIerと協業関係の構築、官公庁関連の大規模SI案件をどう受注していくかなどの壁が国内ベンダーの前に立ちふさがっている。金融分野に強いIBMは、一般産業分野でも中国全土で数百社のSIパートナーと組んで積極的なビジネスを展開しており「圧倒的なパワー」(国内ベンダー幹部)を誇る。他にもSAPやオラクルなど売れ筋ソフトを担ぐ地元大手SIerも急速に勢力を拡大している。
国内ベンダーは世界市場で名の通った業務ソフトが少なく、ハードウェア面でもオープン化の流れのなかでHPやデル、地場ベンダーに押され、厳しい闘いを強いられている。情報サービス産業における日本の国際競争力の弱さがそのまま露呈している格好だ。
こうしたなか、国内ベンダーはターゲットとする業種やエリアを絞り込み、当該分野に強い地元ビジネスパートナーと組むことでビジネス拡大を狙う。いきなり全面展開のぶつかり合いを仕掛けるのではなく、海外でも通用する自社の強みを明確化し、その分野で確実にトップシェアを獲る“グローバルニッチトップ”戦略を軸に据える。
NECは流通業をメインターゲットに位置づけ、同分野で3年以内にトップSIerの座を確実なものにする。中国の流通業は成長途上で、全国を網羅する総合小売業(GMS)はまだ出現していない。中国各地で頭角を現している流通業に魅力的な提案ができれば「トップシェアも夢ではない」(木戸脇総裁)と自信をのぞかせる。
日立製作所は得意とする社会インフラに焦点を当てたビジネス展開を重視する。たとえば、首都北京では年率10%余りの勢いで自動車保有台数が増加し、交通渋滞が深刻化している。市当局は2008年の北京オリンピックに向けて渋滞緩和の具体的な対策に力を入れていることから、日立製作所では交通統制関連のシステム提案に力を入れている。同社は、日本国内では幹線道路や高速道路などで車の流れを制御するシステム開発に実績がある。
また電子政府関連で北京工業大学と03年に合弁会社をつくるなど公的機関との関係強化に努めてきた。北京で交通制御やITS(高度道路交通システム)関連での成功事例をつくれば、「全国各都市への横展開もしやすくなる」(山中大三郎・日立〈中国〉副総経理)と期待を寄せる。中国には神戸や名古屋クラスの人口を擁する中核都市が100以上あるとされ、横展開の意義は大きい。
日本を上回るSI市場に
日系単独での受注が難しい官公庁案件や業種・業務ノウハウが必要な領域はビジネスパートナーとの協業が不可欠である。NECは従来の販売パートナーなども含めて、出資によるガバナンスの強化を推し進める。「数%出資しても影響力は限定的であるため、49-50%程度の出資を資本提携の基本方針としている」(NECソリューションズ〈中国〉の木戸脇総裁)と、SIビジネスの分野で製造や流通に強いビジネスパートナーと資本提携を進めている。
富士通はパートナーを前面に据え、自社はバックアップに回る形で体制の整備に取り組み、「中国市場に打って出る販売体制が整ってきた」(富士通〈中国〉の武田総経理)と胸を張る。
中国国内のSI市場は4-5兆円とされ、その伸び率の高さから日本国内の同約14兆円を追い抜くのは「時間の問題」(日系ベンダー幹部)と目されている。現にパソコンや携帯電話の販売台数では日本市場を追い抜き、PCサーバーの販売台数もほぼ肩を並べる規模まで急成長した。このなかで日系ベンダーのシェアは競合他社に比べて格段に低く、今後の追撃が強く求められている。
自社の強みをより明確化し、まずは業種やエリアでトップシェアを獲る。有力パートナーとの協業を通じて官公庁大型案件に関わり、民需においても全国展開をより迅速に展開することがトップグループに加わるカギと言えそうだ。
これまで中国を自社製品の生産拠点とみなしていた日本の大手コンピュータ総合ベンダーが、中国国内で急成長するシステム需要の開拓に取り組み始めた。IBMやヒューレット・パッカード(HP)、デルなど世界大手がひと足早く中国向けのビジネスを強化しているうえに、中国の地元SIerの実力も日増しに高まっている。国内ベンダーが活路を見いだすためには、得意業種などに絞り込んだ展開と、中国の地元ベンダーとのパートナーシップの確立が鍵を握ることになる。
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