その他
ソフトウェア技術者育成 高等教育界にも新たな動き 「3K産業」イメージ払拭へ
2006/09/18 14:53
週刊BCN 2006年09月18日vol.1154掲載
会津大学(角山茂章学長)は、マイクロソフト(ダレン・ヒューストン社長)、エフコム(酒井良信社長)の協力を得て、10月に「.NET公開講座」を開設する。また文部科学省は、18年度から大学院を対象にした「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」を導入する。日本では「大学あるいは大学院で教育を受けても実践教育の欠如で、採用した側が再教育しなければならない」のが現実だったが、ようやく教育界にもこうした現実とのかい離を是正する動きが出てきた。若者の間に広がる「3K産業」のイメージの払拭につながる可能性も秘めている。(石井成樹●取材/文)
会津大学が.NET公開講座開設
■若者離れ阻止で環境整備
図は情報処理技術者試験の受験者・合格者数の推移である。2002年をピークに受験者・合格者はともに減少傾向をみせており、現在のIT産業界が置かれた現実を象徴的に示している。3K産業視されるようになった結果、IT、特にソフトウェア産業において若者離れが進んでいると見て良く、業界の将来を左右する最重要問題になっていた。
「昔の3Kとは異なり、帰りたくとも帰れない現実が知られてきて、若者が魅力を感じなくなった」(マイクロソフト鈴木協一郎執行役)とも言われる。仕事はあるにもかかわらず人材不足で、既存技術者を酷使せざるを得ない悪循環に陥っているのが、現在のソフトウェア産業といってよい。
また、高等教育機関におけるソフトウェア教育の遅れも、若者からソフトの面白さを奪う要因になっていた。「日本の大学生が3年生で学ぶことは、米国では1年生の時に教えている」と言われるが、「基礎教育」を名目に、実践的教育を怠ってきたのが日本の高等教育機関である。
文科省は「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」の検討に当たっていくつかの参考資料を公開しているが、そのなかでは①実践的教育が欠けているため新卒者の質が低い②プログラミング教育に偏っている──などを指摘している。実際には、そのプログラミング教育も「C」しか教えないところが多いといわれる。
これでは、動きの激しいソフトウェアの世界で、社会に出て使い物になるはずがなく、産業界が再教育に取り組まざるを得なかった。大学あるいは大学院におけるソフトウェア教育はほとんど徒労に終わっているわけで、これも学生からソフトへの関心を奪う要因になったといってよいだろう。
■角山学長「地域活性化」を強調
こうしたなかで、高等教育界にもようやく産業界の要望に添う改革に乗り出そうとしているところが出現したわけで、今後の波及効果が注目される。
会津大学の角山茂章学長は今回の協定について「.NET技術者を増やしたいマイクロソフトの思い、地元に優秀な技術者が欲しいエフコムの思い、そして世界に通用する技術者を育てたい当校の思いが一致した。当面、公開講座の形でスタートするが、将来的には日本だけでなく世界から受注できる.NET開発センターのような組織を作り、地域活性化の役に立ちたい」と語った。
また、マイクロソフトのダレン・ヒューストン社長は「1年前にプランJをスタートさせ、大学との産学連携を積極的に進めてきたが、会津大学は当社が開発したC#で学ぶプログラミングの基礎を初めて採用してくれた。このような協定が結べたのは当社にとっても大きな意義がある。必ず成功させたい」と意欲を示す。
さらにエフコムの酒井良信社長は「これからも大きく変化していくであろうプログラミングの世界で、.NETに関する基礎教育は極めて重要だと思い、会津大学、マイクロソフトに働きかけてきたが、第一ステップはとりあえずスタートできた。理想を持って第二、第三ステップにも挑戦していきたい」とステップアップに向けた抱負を述べている。
会津大学(角山茂章学長)は、マイクロソフト(ダレン・ヒューストン社長)、エフコム(酒井良信社長)の協力を得て、10月に「.NET公開講座」を開設する。また文部科学省は、18年度から大学院を対象にした「先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム」を導入する。日本では「大学あるいは大学院で教育を受けても実践教育の欠如で、採用した側が再教育しなければならない」のが現実だったが、ようやく教育界にもこうした現実とのかい離を是正する動きが出てきた。若者の間に広がる「3K産業」のイメージの払拭につながる可能性も秘めている。(石井成樹●取材/文)
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