その他
IPAがOSS利用で日欧協定 OTCプロジェクトを共同で推進
2006/10/30 21:10
週刊BCN 2006年10月30日vol.1160掲載
経済産業省関連の独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)が欧州の産学官研究機関とオープンソースソフトウェア(OSS)に関する相互協定を結んだ。公共機関や教育機関でのOSS利用促進に関連して、相互に情報を交換するとともに、オープン・スタンダードにかかわる基盤整備プロジェクト「オープン・トラステッド・コンピューティング(OTC)」を共同で推進する。2003年から日中韓(JCK)の連携で進んできたOSSイニシアチブの枠組みにも影響を与えそうだ。
IPAが相互協定を結んだのは、欧州連合(EU)のOSS研究開発機関であるフランフォーファー・フォーカス。同機関はドイツに本部を置くフランフォーファー研究所の一機関で、EU広域のOSSに関する産官学研究機関として位置づけられている。
日中韓イニシアチブにも影響及ぼすか
今年7月ごろ日本側から打診したところ、前向きな回答があったという。事務レベルで詳細を詰め、10月23日からIPAの田代秀一OSSセンター長が国際会議に出席するため渡欧した際、現地で協定を結んだ。
田代センター長によると、今回の協定は日本とEU(フランフォーファー・フォーカス)の双方が保有するOSSの知的財産権の取り決めが中心。政府機関や地方公共団体、教育機関などでOSSの利用を促進するための手法や技術評価が対象となる。また関連する各種報告書の交換や、近い将来に予想される技術移転を視野に入れた権利関係の確認も含まれる。
併せてIPAはEU委員会が推進しているオープン・スタンダードの規格策定プロジェクト「OTC」についても、協力関係を結ぶことで合意した。オープン・スタンダードはこれまで言葉先行のきらいがあったが、ID管理やOSS間の互換性確保要件、PDFファイルの標準インターフェースなど、オープンアーキテクチャの確立に向けた具体策に踏み出すことになる。
当初は今年11月21-22日の両日、福岡市で開かれる日中韓(JCK)による第5回北東アジアOSS推進フォーラムにEUの代表団を招く予定だったが、EU委は時間的調整が困難なことから、今回はオブザーバーとして出席し、次回から正式メンバーとして参加することを内諾した模様。
国内におけるOSSの利用促進はLinuxを中心に展開されてきたが、01年1月に策定されたe-Japan重点構想により公共機関における情報システムの脱レガシー、オープン化の推進が明記され、次いで03年4月に産官学のOSS協議会が発足して脚光を浴びた。これに伴ってIPAが教育機関におけるOSS利用実験に着手、05年度からは総務省外郭の地方自治情報センターと連携して市町村での利用実験を進めている。
北東アジアOSS推進フォーラムではJCK3か国の産官学共同機関がダブルバイト対応のOSSのあり方やデスクトップ環境への適用、評価手法などを協議、これまでに3つのワーキンググループを設けて実用化を図っている。各国ともに実験的な事例は持っているものの、政府機関や地方公共団体が全庁規模で長期にわたってOSSを利用するといったケースが決して多いとはいえない。
これに対してEUでは、ドイツ、オランダなどを中心にOS、ミドルウェア、アプリケーションまでOSSを採用する地方公共団体や教育機関が多数存在し、標準化や規格化などで先行している。また民間企業の規模や総合的な経済力の観点からも、IPAは北東アジアOSS推進フォーラムと別枠で米欧の研究機関と共同歩調をとる可能性を模索していた。
経済産業省関係者は、今回の日欧OSS協定をマイクロソフト対抗軸の形勢とする見方を否定し、「北東アジアOSS推進フォーラムからアジア版Linuxが誕生し、OSSの親和性評価ツールが開発されたものの、実用化の観点では物足りなさがあった」と説明している。OSS協定により、EUにおける実用化や評価のノウハウが国内に移植されるとともに、日本が開発した親和性評価ツールが国際的な地位を獲得する可能性が出てきた。
また、総務省が来年早々をめどに策定を進めている国の機関の情報システム調達におけるオープン・スタンダード規格案にも、EU委の取り組みが参考例として採用される見込み。OTCの共同推進体制については今後、詳細を詰めることになる。
OSSの利用促進にかかわる産官学連携組織は、民間の自由競争を原則とする米国には存在していない。このため日欧OSS協定となったかたちだが、米国にもOSSの採用に前向きな地方公共団体や教育機関は少なくない。このためJCKの枠組みとは別に、日米欧の新たな普及啓蒙活動に発展することも考えられる。
経済産業省関連の独立行政法人・情報処理推進機構(IPA)が欧州の産学官研究機関とオープンソースソフトウェア(OSS)に関する相互協定を結んだ。公共機関や教育機関でのOSS利用促進に関連して、相互に情報を交換するとともに、オープン・スタンダードにかかわる基盤整備プロジェクト「オープン・トラステッド・コンピューティング(OTC)」を共同で推進する。2003年から日中韓(JCK)の連携で進んできたOSSイニシアチブの枠組みにも影響を与えそうだ。
IPAが相互協定を結んだのは、欧州連合(EU)のOSS研究開発機関であるフランフォーファー・フォーカス。同機関はドイツに本部を置くフランフォーファー研究所の一機関で、EU広域のOSSに関する産官学研究機関として位置づけられている。
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