グローバル相互接続を検証
次世代ネットワークの標準化へ
ネットワーク関連のグローバル相互接続試験「GMI 2006」が10月16日から27日まで世界4か国で実施された。各国の通信事業者が次世代ネットワークシステムを構築し、相互運用が可能かどうかを検証。現段階では、結果を精査している状況だが、幹事会社の韓国テレコム(KT)によれば課題を洗い出すうえで効果を発揮したという。ワールドワイドレベルの次世代ネットワーク稼働に向け、一歩前進したようだ。(佐相彰彦●取材/文)
■世界4大通信事業者が参加 テストケースが98種類に 「GMI 2006」では、韓国と米国、英国、日本の4か国でネットワークの相互接続試験を実施した。幹事会社のKTをはじめとして、米国のVerizon Wirelessとニューハンプシャー大学の互換性実験室(UHL-IOL)、英国のブリティッシュ・テレコム(BT)とボーダフォン、日本のNTTグループがIP基盤のグローバルネットワーク構築に着手、全部で5拠点を接続した。通信事業者以外にも、ネットワーク機器メーカーやサーバーメーカーなど約30社が参加しており、IMS(IPマルチメディアシステム)フレームワークによるFMC(固定電話と移動通信の連携技術)サービスをマルチベンダー間で提供可能かどうかをテストした。
期間は10月16-27日の12日間。実施内容は、(1)異なるネットワーク間のローミングサービス(2)QoS(ネットワーク上で一定の通信速度を保障する技術)(3)IPネットワークの接続性(4)セキュリティの運用性(5)ITベンダーによるアプリケーションサービスの検証──など。参加した通信事業者は、他社ネットワークシステムとの連携が可能なネットワーク環境を、それぞれ整備したことになる。
なかでも、KTでは次世代ネットワークサービスの本格化に積極的な姿勢をみせている。同社では、「BcN(ブロードバンド統合ネットワーク)」と呼ばれる、次世代の通信サービスを提供しようと力を入れており、今回の実証実験が今後のサービス拡大を左右するという。イ・ドンミュン・BcNビジネスユニット担当バイスプレジデントは、「テストの実施にあたって、18か月前から綿密な準備を進めてきた」という。大田(テジョン)市の研究センターにSIPサーバーをはじめ、HSS(ホームサブスクリバーサーバー)やAS(自律システム)やゲートウェイ、専用ファイアウォール、DNS(ドメインネームシステム)などでネットワークを構築。「ワールドワイドから多くの大手メーカーが参加したという点でも大きな成果をもたらしたといえる」としている。
期間内に実施したテストケースは、4か国で98種類に達したという。イ・バイスプレジデントは、「今回の試験で、理論に過ぎなかった複雑で大規模なシステム稼働の具現化が図れたことは確か。そういった意味では、ネットワークの進化を垣間見ることができた。当社にとっては、BcN事業の拡大を一段と加速させるきっかけになった」としている。近い将来、ネットワークサービスのすべてをIPで提供できることを実感したようだ。
■各国の連携が課題 標準化が実現のカギ  |
| 「GMI 2006」 | ワールドワイドでサービスプロバイダやネットワーク系SIerが参加する団体「MSF(マルチ・サービス・フォーラム)」が主催するグローバル相互接続試験。02年と04年にも試験を実施しており、今回で3回目となる。 グローバルでNGNやIMSの互換性を検証しているのは、この試験が唯一だとされている。世界規模で通信事業者やネットワーク機器ベンダーなどが参加し、次世代ネットワーク実現に向けたハードウェアやソフトウェアの開発、ネットワークシステム構築のプロセスやサービスの提供などを行う。今回の試験では、MSFが提唱するIMSアーキテクチャをベースに製品開発が進められた。 MSFは88年に創立され、通信関連部品の国際標準化などのプログラム策定を主な活動内容としている。 | | | |
しかし、課題も残る。異なるネットワーク間のローミングサービスや、QoS検証では「大きな問題はなかった」ものの、IPネットワークの接続性やセキュリティの相互運用性、アプリケーションサービスでは実稼働に結びつく結果が得られなかったという。これは「各国でプロトコルの解釈が異なっているため。このままでは、相互運用が困難である可能性が高い」ことになる。しかも、ベンダー各社が製品開発に独自技術を搭載しているため、互換性で問題が生じている。
今回の結果は11月末をめどに精査される予定。精査内容については、通信関連の標準化団体である「ITU(国際電気通信連合)」に報告し、規格制定を促すという。KTのイ・バイスプレジデントは、「標準化することになれば、国際的な活動として大きな意味を持つだろう」とみている。
GMI 2006の実施で課題が残ったことから、現段階では次世代ネットワークはまだ本格稼働できないという結論に達したようだ。しかし、各国やベンダー間などの連携強化でグローバル相互接続を実現できることを参加企業が認識したという点で大きな成果につながったといえそうだ。