その他
経産省 組み込みソフトの「標準」策定へ
2006/11/06 21:10
週刊BCN 2006年11月06日vol.1161掲載
経済産業省は、製品の安全性や信頼性を高めるため、組み込みソフトウェアの「機能安全」に関する部会を設置する。製品に組み込むソフトの品質を高めるため、開発プロセスや組み込みスキル標準(ETSS)を参考にした人材育成・配置などの「標準」を策定する。石油温風暖房機やガス瞬間湯沸器などの機能不全で死亡事故が多発していることなどが背景にある。部会では、欧州主導で策定された「機能安全」の国際標準「IEC61508」に基づき検討を進め、2008年3月までに「標準」を示す。
バグ発生率とリスクを低減
「機能安全」盛り込む
部会は、「組込みソフトウェア開発力強化推進委員会・機能安全部会」として、座長に東京海洋大学の佐藤吉信教授が就き、学識者やメーカー担当者、組み込みソフトベンダー代表者ら10人以上で、11月末までに発足する予定。来年3月までに「機能安全」を説明した啓発資料を作成するほか、来年度も継続的に審議して、組み込みソフトを作成するうえで必要な技術やプロセスなどの「標準」を再来年3月までに示し、業界関係者などに周知徹底する。
「機能安全」とは、システムの安全性を確保する仕組みを「機能」として実装し、リスクを軽減する考え方。例えば、鉄道事故を防ぐため、踏切を設置するのが「機能安全」。これに対し、立体交差を設置して根本的な対策を講じるのを「本質安全」と呼ぶ。後者を製品や組み込みソフトに適用すると、人員不足やコスト増に陥るため、「踏切の機能を工夫し、事故リスクを低減する『機能安全』を討議する」(安田篤・商務情報政策局情報処理振興課課長補佐)という。
同部会では、「IEC61508」の「機能安全」に関する基準値を参考に、どんな製品でも適用できるよう業界横断的な「基準」の検討を行う。検討項目のうち、開発プロセスに関しては、要求分析や方式設計、詳細設計、コーディング、単体テスト──などの工程を効率よく運用する「標準」を体系的に集約する。
また、ETSSに基づく調達やプロジェクト編成、人材評価などの基準値を参考に、組み込みソフトの規模や内容に応じて揃えるべき人材数や人員の最適配置方法も定める。組み込みソフトの作成には、協力会社の理解と協力が不可欠なため、外注先の管理・運営のあり方も決める。
情報処理推進機構(IPA)の「2006年版組込みソフトウェア産業実態調査」によると、ETSSの最低スキルレベル「レベル1」の人員占有率を大小で比較したところ、バグ発生率が最大で2倍の差が出た。開発費も最大4倍の差がつき、スキルレベルが低い人材を抱えるベンダーほど、品質が悪く、コスト高になるという結果が出ている。
国内のプログラム人材が減少傾向をたどるなか、「組み込みソフトが直接の原因ではないが、国内出荷製品の16%に不具合がある。製品開発コストの大半を占める組み込みソフト領域で、人員の最適配置を進め、納期を早め、コストを下げて生産性を上げなければ、国際競争力を失う」(安田課長補佐)と、「標準」を設けることで、組み込みソフト業界全体の底上げを図る狙いがある。
過去の国内製品は、安全認証を受けて市場に出荷されてきた。これら安全認証は、認証機関で設計指針やチェックリスト、専門家の意見など定性的な評価をしてきた。しかし、「定性的な手法では、製品故障に関する規定の確立に限界がある」と、佐藤教授は「IPAフォーラム」の講演で指摘し、組み込みソフトの「安全ライフサイクル」を開発フェーズ別に策定する必要性を強調。こうした考え方に基づき、「標準」が示される予定だ。
国内では、1995年に「IEC61508」に関連する国内委員会が日本電気計測器工業会(JEMIMA)を事務局に、98年に有志らで機能安全検討会(J-CUIG)が発足。01年には、国土交通省委託事業で、乗用車の電子制御システムの安全性に関する検討会が設置され、「機能安全」に関する規格が自動車分野で適用する動きを強めている。今年4月には、今回の部会の準備部会が発足している。
経済産業省は、製品の安全性や信頼性を高めるため、組み込みソフトウェアの「機能安全」に関する部会を設置する。製品に組み込むソフトの品質を高めるため、開発プロセスや組み込みスキル標準(ETSS)を参考にした人材育成・配置などの「標準」を策定する。石油温風暖房機やガス瞬間湯沸器などの機能不全で死亡事故が多発していることなどが背景にある。部会では、欧州主導で策定された「機能安全」の国際標準「IEC61508」に基づき検討を進め、2008年3月までに「標準」を示す。
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