その他
問われるソフト開発のあり方 「製造」か「創造」かの議論再び
2006/11/20 14:53
週刊BCN 2006年11月20日vol.1163掲載
ソフトウェア開発は「製造」か「創造」か。海外オフショア開発への依存度が高まるにつれ、ソフト開発のあり方が改めて問われている。製造業では国内で企画・設計し、海外で生産するケースが定着。粗利率が伸び悩むソフト業界でも製造業に倣えとばかりに設計と製造を分ける取り組みが盛んだ。近未来の「ソフトウェアファクトリー」はどうあるべきなのか。(安藤章司●取材/文)
ソフト生産方式の模索続く
■専門工場化への取り組み
SIerとして今年度、過去最高の1兆円の連結売上高を見込むNTTデータの浜口友一社長は、「ベルトコンベア式のソフト開発方式が果たして妥当なのか悩んでいる」と打ち明ける。経験上「設計と製造の分離はうまくいかない」という信念があるからだ。
個別開発を得意とするベンダーは要件定義や設計を「上流工程」、コーディングを「製造工程」と位置づける傾向が強い。顧客の要望どおりにつくるため上流から製造へと流れるベルトコンベア方式の考え方がマッチしてきたためだ。
しかし、最近では個別開発のケースであっても部品化や過去に開発したアプリケーションの再利用、オープンソースソフト(OSS)の活用などが進んでいる。ゼロからのプログラムソースの書き起こしを極力なくすことで生産性を高めるのが狙いだ。
これに呼応するように、マイクロソフトが次期開発ツールへの実装を検討しているのが「ソフトウェアファクトリー」の考え方である。従来の開発ツールでもソフトの部品化やコンポーネント化の取り組みは行ってきた。だが「部品の粒度が小さすぎて、実際に開発しようとすると工数が依然多くかかる」(マイクロソフトの日詰廣造・デベロッパー&プラットフォーム統括本部パートナーテクノロジー推進本部本部長)ことが課題となっていた。
今後は業種・業務に合った開発環境を個別に構築できる機能を強化する方針を示す。いわば“専門工場化”することで生産性を高めようという考え方だ。過去に開発実績があるアプリケーションならば、少しの手直しで横展開しやすくなる。「要件定義や設計など難度が高く、創造的な仕事に技術者のリソースを振り分けられる」(同)という。
■ラインからセル方式へ
大量にプログラムソースを生産する従来の方式では、上流から下流へ続く長いベルトコンベアをつくって量産する考え方が当てはまったかもしれない。労働集約型であるため安い人材を海外で調達しないと十分な利益を確保できない。だが、半パッケージ製品を顧客の要望に沿い専門工場で手直しするようになれば、長いベルトコンベアは要らなくなる。
下流の就労者はどうしても“やらされ感”が強く“3K職場”とみがちになる。最大のオフショア開発先の中国は優秀な人材が豊富で目覚ましい発展を遂げている。下流ばかりを押しつけられなくなる時期は、意外に早くくるだろう。
NTTデータの浜口社長は「製造業にたとえるならばセル方式、屋台方式でやれないのか」と思案する。アプリケーションを切り分けて、設計からコーディングまで少人数のチームで高品質に仕上げる方式だ。製造業では多品種少量の生産方式として広く普及している。ソフト開発では設計者が最後までついて回ることで品質を高めようというものだが、海外オフショア開発はしにくくなる。
遠隔地で“製造”を行うと連絡役であるブリッジSEの確保や品質チェックなど余分な手間とロスが出てくるのは事実だ。コストが合わなくなれば人件費のより安い地域へ拠点を移していく必要も出てくる。“創造”的な部分を重視しつつ、コストを抑えて効率よく“製造”する次世代のソフトウェアファクトリーの構築が求められている。
ソフトウェア開発は「製造」か「創造」か。海外オフショア開発への依存度が高まるにつれ、ソフト開発のあり方が改めて問われている。製造業では国内で企画・設計し、海外で生産するケースが定着。粗利率が伸び悩むソフト業界でも製造業に倣えとばかりに設計と製造を分ける取り組みが盛んだ。近未来の「ソフトウェアファクトリー」はどうあるべきなのか。(安藤章司●取材/文)
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