ディストリビュータにとって、2007年は「薄日」が差しそうだ。パソコン市場は成熟期に入っているものの、周辺機器のラインアップ拡充や、パソコン、携帯電話などをベースとしたサービスを付加すれば需要があるとの判断からだ。各社とも、機器販売だけに頼らないディストリビュータの成長路線を模索している。また、1月30日にはマイクロソフトが新OS「Vista」を発売する。これにより、個人ユーザーによるパソコン買い替えの活発化や、法人向け事業の拡大につながることに期待している。(佐相彰彦●取材/文)
成熟市場でもチャンスあり
サービスの付加で需要喚起
パソコン市場が台数と金額ともに落ち込んでいる。電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、06年度上半期(4-9月)の国内出荷実績は、台数が597万5000台(前年同期比4%減)、金額が7414億円(同6%減)。成熟期に入りながらも、これまでは6半期連続でプラス成長を続けていたものの、ここにきてマイナスへと転じ、パソコン販売を主力事業の1つとするディストリビュータにとっては厳しい局面にある。しかし、各社とも市場環境が厳しい時期だからこそビジネスチャンスがあるとみている。
東芝情報機器では、「市場の成熟期とはユーザーの絶対数が多いということ。検討段階ではあるが、パソコンを付加するようなASPサービスのメニュー化を模索している。月額制で多くのユーザーを確保できれば、大きなビジネスになる」(山下文男社長)としている。また、東芝ブランドだけでなく保守サービスのマルチベンダー化、ホームネットワーク関連の機器販売やサービス提供なども事業化のアイデアとして視野に入れる。
新しいサービスに着手するという点では、ソフトバンクBBでも「情報と通信の融合を踏まえたビジネスが業績拡大の要になる」(溝口泰雄・コマース&サービス統括部長)とし、SaaS(サービス型ソフトウェア)をパソコンだけでなくIP対応の携帯電話「スマートフォン」と組み合わせて提供していく。
ウェブEDIを強化するベンダーもある。ダイワボウ情報システムでは、「コモディティ製品は、ウェブでの受注を徹底し、営業担当者の業務効率を一段と向上させる。時間に余裕が出てくれば、さまざまな製品を組み合わせたソリューションを、数多く提案できるようになる」(松本紘和社長)。それに加えて、全国各地でセミナーを実施することにより、「パソコンや関連製品の拡販にもつなげる」としている。丸紅インフォテックも、「電子カタログの充実やウェブでの簡単購入を強化することは、購入側にとっても利便性が高い」(梅哲雄社長)とみている。
ハードウェアの市場環境は、価格下落の進行で厳しい。しかし、各社ともサービスを前面に押し出すことでハードウェアの需要を喚起させようとしている。また、個人市場ではマイクロソフトの新OS「Vista」が市場に投入されることで買い換えユーザーがどれだけ増えるかがカギとなる。法人市場では、普及のタイミングを見計らって先手を打ったベンダーにビジネスチャンスがありそうだ。

多くの製品ラインアップを揃えている強みを生かし、ディストリビュータならではの製品・サービスを提供していくことが重要。ユーザーが多い製品に対して月額課金などのストック型ビジネスも業績拡大策のひとつ。
パソコン市場が成熟していることから、今後は需要が大幅に高まることはない。しかし、リプレースが見込めるため、堅調に伸びることは確か。
売価下落が進んでいることから、ハードウェアによる利益確保は期待できない。コスト削減が生き残りのカギになる。製品カテゴリーを無闇に広げれば、過剰在庫を抱えることになる。