プリンタベンダー業界の2007年は、「曇り/のち晴れ」の予報だ。ここ1-2年は、デジタル複合機(MFP)や単機能のカラー化率が進み、機器や消耗品の単価がアップしたことで業績を押し上げた。ただ、07年は需要増で激戦になるだけに、中堅中小企業(SMB)向けを中心に価格下落圧力が強まる。また、需要が伸びた06年の反動が出るとの見方もあり、年の前半は「曇り」となりそうだ。しかし、マイクロソフトの新OS「Vista」などの登場で、システム全体を再構築する機運が高まり、市場が活発化しそうである。(谷畑良胤●取材/文)
後半は「Vista」需要に期待
好調だった06年の反動も
昨年からは、内部統制強化の動きに乗り、業務処理統制上で必要になる文書管理システムの改善を進める企業が増えている。このため、企業内のセンターマシンになるMFPは、セキュリティ機能搭載機に乗り換える傾向が増大。しかも社内文書のカラー化に合わせ、カラー機の導入率が上がっている。単機能のレーザープリンタは、MFPで取り込んだ電子文書を出力するハブ機や、流通・サービス業を中心に店頭プリンタなどとして設置する例が増えているというのが、プリンタベンダー業界の見方である。
ブラザー販売の神谷純社長は「昨年は『カラーレーザー元年』と呼べるほど、SOHOを中心に持続的にカラー複合機が伸びた」と振り返る。その理由については「家庭内にインクジェットの複合機が普及し、この傾向が事業所にも波及した」と、この先1-2年はSOHO市場で旺盛な需要があるとみる。しかし、オープン化が進み、競合他社製品とマルチベンダーで複数台設置する中小企業などでは、競争が激化しているという。
同じく、SOHOや中小企業に強みをもつエプソン販売の真道昌良社長は「内部統制に関連する文書管理強化の動きは“追い風”になる。しかし、文書管理強化の視点でみると、瞬間風速ではなく息の長いビジネスになる」と、収益に結びつくには時間を要すると分析する。真道社長が予想する今年の天気図は「天気晴朗なれども波高し」で、ユーザー企業のニーズを基に多様な提案をしないと、“追い風”に乗り遅れる可能性があるとみる。
その分をカバーしそうなのが、大判プリンタやRFID(ICタグ)を打ち出す特殊業務用プリンタの類だ。大量にプリントアウトする流通・サービス業や、パンフレットをオンデマンド化する一般企業などに、拡販できる有望な鉱脈が潜んでいそうだ。
昨年、プリンタ業界はカラー機の販売と消耗品の単価アップに支えられ、業績を伸ばしたベンダーが多かった。しかし、それに関連するソリューションの提供自体は、機器販売に比べ低調である。国内のプリンタ販売が大幅に伸びた反動で、今年前半は一時的に需要が止まりそうだ。しかし、1月末に「Vista」が出荷されるため、システム全体の乗り換え需要などが見込め、同時にMFPを中心に市場が盛り上がるとみられる。今年後半は「晴れ」に転じそうである。

内部統制強化や個人情報保護法などの影響で、コンプライアンス(法令遵守)に基づくプリンタ環境の改善が必須になっている。中堅・大企業やグループ会社の本社機能にあるMFPのセキュリティを強化し、ネットワークとつながる支店・事業所の単機能のレーザープリンタやデスクトップ型の小型MFPまでもリプレースできれば、市場が活況となる。
今年前半は、昨年好況だった反動で、一時的に需要が止まりそう。「Vista」出荷後に販売が進まなければ、横ばいで推移することも見込まれる。
これまでのプリンタ販売は、「手離れ」が良い商材として、特別なシステム提案をせずに拡販できた。しかし、内部統制強化などの動きがあり、ネットワークや文書管理システムと合わせた提案が必要になった。うまく提案ができない場合、市場が盛り上がらない恐れがある。