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62社の経営トップに聞く 07年の商機(ビジネスチャンス)はどこに?
2007/01/08 14:53
週刊BCN 2007年01月08日vol.1169掲載
2007年は、ERP(統合基幹業務システム)と製造業が商機をつかむカギを握りそうだ。週刊BCNが国内IT・流通業界62社の経営トップを対象にした5項目の調査によると、ERPは、内部統制強化の動きを受け、需要が高まると判断。業務ソフトベンダーと開発系SIerを中心に約2割が「期待できる製品」と回答した。また、業種別では約半数が製造業の伸びに期待。アジア圏向け製品の生産拠点などが点在する九州地区が最も活況になるとの結果が出た。
自社ビジネスで、07年の中堅中小企業(SMB)市場(年商500億円以下)は、昨年対比でどの程度伸びるか?
「業務ソフト」は30%成長も
ハード販売は期待薄か?
中堅中小企業(SMB)市場の2007年は、業務ソフトウェア業界を中心に全体的に需要が上向くことを期待する傾向にある。
一方で、SMB市場にハードウェアを拡販する「販売SIer」「ネットワーク系販社」「ディストリビュータ」には、機器の単価下落の影響などがあり、売り上げベースで業績が横バイと予測するベンダーが多い。ソフトとハードで、需要の見通しに差が生じそうである。
最も堅調に推移しそうなのが「業務ソフト」。業界各ベンダーの伸長予測値は、「10-30%増」と高水準だ。内部統制強化の動きと歩調を合わせ、業務ソフトの販売が急激に伸びるとの見方が大勢を占めている。
一方、「ネットワーク系販社」は、「Vista」がキーポイントだ。新OSの登場でクライアント端末を交換する機運が高まり、これを機に、ネットワーク関連の仕組みを強化する動きが活発化、それにつれてSMB市場が伸びるとみている。SMBに販路を持たないベンダーですら、「SMBの成長企業向けの戦略立案に着手した」と、SMB市場に注目している。同様に「プリンタベンダー」も、「Vista」によるシステム再構築に期待を寄せる。
一方、ハードを中心に事業展開する業界は、引き続き単価下落などの影響を受け、SMB市場の成長予測が控えめだ。複数の「販売系SIer」は「SMB市場は大企業向けより、伸び率は高い」と分析している。ただ、「販売系SIer」に対し、商材を卸す「ディストリビュータ」は様相が若干異なり、「戦略投資を実施するSMBが増える」「月額課金制の仕組みを利用する企業が増える」と、需要が高まるとする見方がある一方で、「目に見えるほどの成長は期待できない」とするベンダーに分かれ、予測値のかい離が大きくなっている。
調査項目には、「開発系SIer」と「保守サービス」を入れていない。これはSMBのユーザー企業が少ないためである。ただ、客観的な意見としてSMB市場の見通しを尋ねたところ、「アウトソーシング化が進む」と、システムの提供方法次第では需要を掘り起こせるとの指摘があった。
Q2 M&A編
自社ビジネスに関連して、07年にM&A(企業の合併・買収)はするか?
「前向き」が7割近く占める
人材や技術の取り込み狙う
M&Aに対する方針では、前向きな回答数が7割近くに達した。大手SIerや業務ソフト開発ベンダーなどのトップに聞いたなかでM&Aに関する回答のあった42社をベースに集計した。
M&Aを「積極的に行う」が23.8%、「機会があれば行う」が45.2%と前向きな回答が多数を占めた。「しない」は31.0%だった。
業態別に見るとM&Aに最も積極的なのは、ソフトウェア開発を主体とする開発系のSIerと業務ソフトベンダー、ネットワークに強いNIerなど。一方、概して慎重な姿勢なのは旧オフコンディーラーなど販売系のSIerや保守サービス専業会社だった。
開発系SIerは人材不足をM&Aで補おうとする動きが強まっている。景気回復に伴いソフト開発の需要が旺盛で供給が追いつかないだけに、優秀なSE・プログラマを抱える企業をグループに迎えることで生産力を高めるのが狙いだ。特定業種のノウハウを持つSIerやISVを買収して自社のカバー範囲を広げたいとする意見もみられた。
業務ソフトベンダーは自社製品の品揃えにない業務ソフトモジュールを持つ会社に興味を示す傾向が顕著だ。NIerは本業のネットワークやサーバー領域で高い技量を持つ会社や人材を確保し、市場競争力を高めたいとする見方が多い。
M&Aを展開するうえで重要なのは資本力だ。自社の収益力が低ければ逆に買収される恐れもある。株式交換によるM&Aも収益力に裏づけられた株価が大きく影響する。「収益力の高さはM&Aを有利に展開するための必須条件」(SIer幹部)。経営環境が良好なうちに高収益体制をつくりあげて将来のM&Aに備えようとする経営者が少なくない。
M&Aは「しない」と回答した企業は「親会社からの制約」をあげるケースがみられた。メーカー系SIerや保守サービス会社は単独でのM&Aを進めにくいが、親会社のグループ戦略に沿った再編は十分にあり得る。
積極的なM&Aは大手集約の動きを加速させる。業界トップ集団におけるパワーゲームがより一層激化しそうだ。
M&Aに対する方針では、前向きな回答数が7割近くに達した。大手SIerや業務ソフト開発ベンダーなどのトップに聞いたなかでM&Aに関する回答のあった42社をベースに集計した。
M&Aを「積極的に行う」が23.8%、「機会があれば行う」が45.2%と前向きな回答が多数を占めた。「しない」は31.0%だった。
業態別に見るとM&Aに最も積極的なのは、ソフトウェア開発を主体とする開発系のSIerと業務ソフトベンダー、ネットワークに強いNIerなど。一方、概して慎重な姿勢なのは旧オフコンディーラーなど販売系のSIerや保守サービス専業会社だった。
開発系SIerは人材不足をM&Aで補おうとする動きが強まっている。景気回復に伴いソフト開発の需要が旺盛で供給が追いつかないだけに、優秀なSE・プログラマを抱える企業をグループに迎えることで生産力を高めるのが狙いだ。特定業種のノウハウを持つSIerやISVを買収して自社のカバー範囲を広げたいとする意見もみられた。
業務ソフトベンダーは自社製品の品揃えにない業務ソフトモジュールを持つ会社に興味を示す傾向が顕著だ。NIerは本業のネットワークやサーバー領域で高い技量を持つ会社や人材を確保し、市場競争力を高めたいとする見方が多い。
M&Aを展開するうえで重要なのは資本力だ。自社の収益力が低ければ逆に買収される恐れもある。株式交換によるM&Aも収益力に裏づけられた株価が大きく影響する。「収益力の高さはM&Aを有利に展開するための必須条件」(SIer幹部)。経営環境が良好なうちに高収益体制をつくりあげて将来のM&Aに備えようとする経営者が少なくない。
M&Aは「しない」と回答した企業は「親会社からの制約」をあげるケースがみられた。メーカー系SIerや保守サービス会社は単独でのM&Aを進めにくいが、親会社のグループ戦略に沿った再編は十分にあり得る。
積極的なM&Aは大手集約の動きを加速させる。業界トップ集団におけるパワーゲームがより一層激化しそうだ。
Q3 業種編
07年にIT・流通業界で成長が期待できるユーザー企業の業種は?
製造業と流通業に期待大
金融、情報・通信も堅調か
顧客の業種のなかで、もっとも成長が期待できるのは「製造業」となった。約半数のIT・流通企業が製造業からの需要が強まると回答した。
なかでも、携帯電話や家電向けなどの組み込みソフト開発の需要を期待している声が、開発系SIerのなかで多かった。「組み込みソフト開発の需要は2007年も強く、人が足りない状況」との見通しを持っているSIerが少なくない。
ある販売系SIerからは「製造業は景気回復の影響をいちばん早く受ける。好景気を印象づけた06年を受け、07年に製造業はさらに戦略的なIT投資に打って出るはず」との回答も寄せられた。
有望業種として、2位にランクしたのは流通業。個人消費回復の兆しが見え始めた今、小売業や卸業者の業績が好調に推移し、IT投資を増加させる傾向があるという意見だ。
金融と情報・通信、官公庁・自治体・教育が同票で3位に並んだ。金融は06年から再び活発化したIT投資が07年も続くとの見方が有力。地銀に対する期待感を持つベンダーは多い。情報・通信は、「次世代ネットワーク」構築に向けたIT投資に期待。一方、官公庁・自治体・教育は3位に入ったものの、そのほとんどが官公庁と教育機関向け。地方自治体に期待を寄せるベンダーはほとんどいなかった。自治体は、合併案件が一段落した後、次の分野がなかなか受注につながらないだろうとの予測が多い。教育機関では、小・中・高校よりも競争が激化している大学の需要を各社とも狙っているようだ。
サービス業は、インターネット関連サービスを手がける若い企業の需要に期待する声がある。ネットサービス関連企業は情報システムがサービス提供の根幹を担うケースが多い。そのため、企業規模は小さくてもIT投資に積極的とみているITベンダーは多い。大手企業をメインターゲットとするSIerやソフト開発会社でもネットサービス業に限っては、中小でも攻める姿勢をみせている。
医療は、最下位となったものの医療機関向けビジネスを手がける会社が少ないため、一概に需要がないとは言い切れない。レセプトのオンライン化や電子カルテシステムの導入を促進する政府の方針から、「中堅規模の病院から07-08年にかけて爆発的な需要が期待できる」とみるSIerもある。
Q4 伸びる製品・サービス編
07年にIT・流通業界で期待できる製品・サービスは?
ERPやアウトソーシングが上位
事業の柱を増やす傾向に
2007年に伸びる製品・サービスとして比率が最も高かったのは、ERP(統合基幹業務システム)で18.5%を占めた。開発系SIerが自社開発の製品・サービスとして提供する傾向が高い。続く2位は、アウトソーシング・運用サービスで12.3%。販売系SIerの回答が多かった。
開発系SIerがERPを提供するのは、自社製品の売り上げ比率を高めるのが狙い。他社との差別化を図るため、金融や流通など業種に特化したものや、オンデマンド方式といった独自開発をアピールしている。
販売系SIerがアウトソーシングに力を入れているのは、システムを所有せずに預けるというSMB(中堅・中小企業)が増えつつあるため。サーバー製品を販売するよりもサービスを提供したほうが新規需要を開拓できるとの判断だ。運用サービスでは、内部統制に対するユーザー企業の関心が高まるとし、遠隔監視サービスを提供するベンダーが増えた。
内部統制という切り口では、システムの設計から構築までを提供するというコンサルティングと連携した事業を手がけるベンダーも出ている。また、セキュリティ製品が引き続き堅調に伸びるとの見方もある。
組み込みソフト開発は、開発系SIerが主力事業を継続して拡大させるという意味合いで回答したケースが多い。カーナビゲーションや携帯電話などが引き続き拡大傾向にあることが要因のようだ。加えて、ICカード需要の増大にともない、金融機関やクレジットカード会社などからシステム案件を受注しようと力を注ぐベンダーもみられる。
ほかにも、ネットワーク関連ではネットワーク系販社を中心に通信事業者向けネットワークインフラの構築や、一般オフィス向けにIP電話やデュアルフォンを活用したVoIPシステムの提供など、次世代ネットワーク事業の拡大を目指す方向にある。サーバーやストレージなどハードウェアでは、ディストリビュータや販売系SIerが仮想化をテーマに機器販売を増やす計画だ。
各ベンダーとも、07年は新しい領域でのビジネスを主力事業の1つに成長させようとしている。情報通信システムへの投資が活発化している市場環境も後押しし、“攻め”の姿勢に転換しているということだ。
Q5 伸びる地域編
自社ビジネスに関係なく、07年に成長が期待できる地域は?
地方でトップは九州・沖縄
アジア圏の物流拠点で地場産業が活況
今後の成長地域を複数回答で聞いた結果、「東・名・阪」の大都市圏の回答率が22.0%でトップ。これに次ぐのは九州・沖縄(18.3%)となった。「地方よりは首都圏が主戦場」「首都圏以外は啓蒙が必要だ」など見方はさまざまだが、特に開発系SIerにとっては地方市場での成長があまり期待できないとみる傾向は強い。
こうしたなかで「全体的に西日本は景気が良いのではないか」と地方に期待する意見もあった。ネットワーク、業務ソフト系から、最も多く票を集めたのが九州・沖縄地域だ。
有望地域として九州・沖縄地域をあげたベンダーは、特に九州を推す理由として「地場産業が多く、成長が期待できる」ことや、九州がアジア圏の重要な物流拠点でもあり、「産業がアジアに向いているため」というプラス評価の意見が多かった。また、自社の拠点があり、実績をつくっているのも理由の一つとなっている。
北陸地域もアジアに近いという理由で支持を受けている地域だ。特に、「物流の拠点が新潟に集中しつつあることで日本海側の経済圏が熱い」と注目している企業も多い。逆に「地域特性から需要を押しあげる要素に乏しい」として、北陸は期待できないとの見方もある。
また、潜在的に需要が見込めると考えられているのが、中国・四国地域および東北地域だ。これまで産業が活発ではなかったことから「未開拓地域であり、有力なパートナーが多く、成長が期待できる」「中国地域は新規開拓の需要が眠っている」などの意見もあった。
海外についてはアジア圏が人気を集めている。「特に中国でのビジネス拡大が期待できる」とみる回答が多かった。
どの地域に注目するかはそれぞれの企業の考え方によるが、地方市場が伸びていく条件の共通点を探ると、「アジア圏、特に中国との物流ポイントがあり、製品情報を発信できる地域」が浮かび上がってくる。
アンケートにご協力いただた企業:アイエックス・ナレッジ(IKI)/アイ・ティー・サービス/アイティフォー/アルゴ21/伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)/インフォベック/SRA/エス・アンド・アイ(S&I)/SAPジャパン/エス・エス・ジェイ(SSJ)/NECソフト/NECネクサソリューションズ/NECフィールディング/エヌ・シー・エル・コミュニケーション(NCLC)/NTTデータシステムズ/エプソン販売/応研/OSK/大塚商会/オービックビジネスコンサルタント(OBC)/沖データ/キヤノンシステムソリューションズ/キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)/キング・テック/コア/シーイーシー(CEC)/シーティーシー・エスピー(CTCエスピー)/JBISホールディングス/JBCCホールディングス/住商情報システム/ソフトバンクBB/大興電子通信/ダイヤモンドコンピューターサービス(DCS)/ダイワボウ情報システム(DIS)/TIS/電通国際情報サービス(ISID)/東京エレクトロンデバイス/東芝情報機器(TIE)/東芝ソリューション/日本オフィス・システム(NOS)/日本オラクル/日本システムウェア(NSW)/日本事務器(NJC)/ネットマークス/ネットワークバリューコンポネンツ(NVC)/ネットワールド/ネットワンシステムズ/日立情報システム/日立ソフトウェアエンジニアリング/日立電子サービス(DENSA)/ピー・シー・エー(PCA)/富士ソフト/富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP)/富士通サポートアンドサービス(Fsas)/富士通システムソリューションズ(Fsol)/富士通ビー・エス・シー(富士通BSC)/富士通ビジネスシステム(FJB)/ブラザー販売/マイクロソフト/丸紅インフォテック/弥生/リコーテクノシステムズ(RTS)【五十音順・計62社】
ERPと製造業が狙い目だ!
Q1 SMB編自社ビジネスで、07年の中堅中小企業(SMB)市場(年商500億円以下)は、昨年対比でどの程度伸びるか?
「業務ソフト」は30%成長も
ハード販売は期待薄か?
中堅中小企業(SMB)市場の2007年は、業務ソフトウェア業界を中心に全体的に需要が上向くことを期待する傾向にある。
一方で、SMB市場にハードウェアを拡販する「販売SIer」「ネットワーク系販社」「ディストリビュータ」には、機器の単価下落の影響などがあり、売り上げベースで業績が横バイと予測するベンダーが多い。ソフトとハードで、需要の見通しに差が生じそうである。
最も堅調に推移しそうなのが「業務ソフト」。業界各ベンダーの伸長予測値は、「10-30%増」と高水準だ。内部統制強化の動きと歩調を合わせ、業務ソフトの販売が急激に伸びるとの見方が大勢を占めている。
一方、「ネットワーク系販社」は、「Vista」がキーポイントだ。新OSの登場でクライアント端末を交換する機運が高まり、これを機に、ネットワーク関連の仕組みを強化する動きが活発化、それにつれてSMB市場が伸びるとみている。SMBに販路を持たないベンダーですら、「SMBの成長企業向けの戦略立案に着手した」と、SMB市場に注目している。同様に「プリンタベンダー」も、「Vista」によるシステム再構築に期待を寄せる。

一方、ハードを中心に事業展開する業界は、引き続き単価下落などの影響を受け、SMB市場の成長予測が控えめだ。複数の「販売系SIer」は「SMB市場は大企業向けより、伸び率は高い」と分析している。ただ、「販売系SIer」に対し、商材を卸す「ディストリビュータ」は様相が若干異なり、「戦略投資を実施するSMBが増える」「月額課金制の仕組みを利用する企業が増える」と、需要が高まるとする見方がある一方で、「目に見えるほどの成長は期待できない」とするベンダーに分かれ、予測値のかい離が大きくなっている。
調査項目には、「開発系SIer」と「保守サービス」を入れていない。これはSMBのユーザー企業が少ないためである。ただ、客観的な意見としてSMB市場の見通しを尋ねたところ、「アウトソーシング化が進む」と、システムの提供方法次第では需要を掘り起こせるとの指摘があった。
Q2 M&A編
自社ビジネスに関連して、07年にM&A(企業の合併・買収)はするか?
「前向き」が7割近く占める
人材や技術の取り込み狙う
M&Aに対する方針では、前向きな回答数が7割近くに達した。大手SIerや業務ソフト開発ベンダーなどのトップに聞いたなかでM&Aに関する回答のあった42社をベースに集計した。
M&Aを「積極的に行う」が23.8%、「機会があれば行う」が45.2%と前向きな回答が多数を占めた。「しない」は31.0%だった。

業態別に見るとM&Aに最も積極的なのは、ソフトウェア開発を主体とする開発系のSIerと業務ソフトベンダー、ネットワークに強いNIerなど。一方、概して慎重な姿勢なのは旧オフコンディーラーなど販売系のSIerや保守サービス専業会社だった。
開発系SIerは人材不足をM&Aで補おうとする動きが強まっている。景気回復に伴いソフト開発の需要が旺盛で供給が追いつかないだけに、優秀なSE・プログラマを抱える企業をグループに迎えることで生産力を高めるのが狙いだ。特定業種のノウハウを持つSIerやISVを買収して自社のカバー範囲を広げたいとする意見もみられた。
業務ソフトベンダーは自社製品の品揃えにない業務ソフトモジュールを持つ会社に興味を示す傾向が顕著だ。NIerは本業のネットワークやサーバー領域で高い技量を持つ会社や人材を確保し、市場競争力を高めたいとする見方が多い。
M&Aを展開するうえで重要なのは資本力だ。自社の収益力が低ければ逆に買収される恐れもある。株式交換によるM&Aも収益力に裏づけられた株価が大きく影響する。「収益力の高さはM&Aを有利に展開するための必須条件」(SIer幹部)。経営環境が良好なうちに高収益体制をつくりあげて将来のM&Aに備えようとする経営者が少なくない。
M&Aは「しない」と回答した企業は「親会社からの制約」をあげるケースがみられた。メーカー系SIerや保守サービス会社は単独でのM&Aを進めにくいが、親会社のグループ戦略に沿った再編は十分にあり得る。
積極的なM&Aは大手集約の動きを加速させる。業界トップ集団におけるパワーゲームがより一層激化しそうだ。
M&Aに対する方針では、前向きな回答数が7割近くに達した。大手SIerや業務ソフト開発ベンダーなどのトップに聞いたなかでM&Aに関する回答のあった42社をベースに集計した。
M&Aを「積極的に行う」が23.8%、「機会があれば行う」が45.2%と前向きな回答が多数を占めた。「しない」は31.0%だった。
業態別に見るとM&Aに最も積極的なのは、ソフトウェア開発を主体とする開発系のSIerと業務ソフトベンダー、ネットワークに強いNIerなど。一方、概して慎重な姿勢なのは旧オフコンディーラーなど販売系のSIerや保守サービス専業会社だった。
開発系SIerは人材不足をM&Aで補おうとする動きが強まっている。景気回復に伴いソフト開発の需要が旺盛で供給が追いつかないだけに、優秀なSE・プログラマを抱える企業をグループに迎えることで生産力を高めるのが狙いだ。特定業種のノウハウを持つSIerやISVを買収して自社のカバー範囲を広げたいとする意見もみられた。
業務ソフトベンダーは自社製品の品揃えにない業務ソフトモジュールを持つ会社に興味を示す傾向が顕著だ。NIerは本業のネットワークやサーバー領域で高い技量を持つ会社や人材を確保し、市場競争力を高めたいとする見方が多い。
M&Aを展開するうえで重要なのは資本力だ。自社の収益力が低ければ逆に買収される恐れもある。株式交換によるM&Aも収益力に裏づけられた株価が大きく影響する。「収益力の高さはM&Aを有利に展開するための必須条件」(SIer幹部)。経営環境が良好なうちに高収益体制をつくりあげて将来のM&Aに備えようとする経営者が少なくない。
M&Aは「しない」と回答した企業は「親会社からの制約」をあげるケースがみられた。メーカー系SIerや保守サービス会社は単独でのM&Aを進めにくいが、親会社のグループ戦略に沿った再編は十分にあり得る。
積極的なM&Aは大手集約の動きを加速させる。業界トップ集団におけるパワーゲームがより一層激化しそうだ。
Q3 業種編
07年にIT・流通業界で成長が期待できるユーザー企業の業種は?
製造業と流通業に期待大
金融、情報・通信も堅調か
顧客の業種のなかで、もっとも成長が期待できるのは「製造業」となった。約半数のIT・流通企業が製造業からの需要が強まると回答した。
なかでも、携帯電話や家電向けなどの組み込みソフト開発の需要を期待している声が、開発系SIerのなかで多かった。「組み込みソフト開発の需要は2007年も強く、人が足りない状況」との見通しを持っているSIerが少なくない。

ある販売系SIerからは「製造業は景気回復の影響をいちばん早く受ける。好景気を印象づけた06年を受け、07年に製造業はさらに戦略的なIT投資に打って出るはず」との回答も寄せられた。
有望業種として、2位にランクしたのは流通業。個人消費回復の兆しが見え始めた今、小売業や卸業者の業績が好調に推移し、IT投資を増加させる傾向があるという意見だ。
金融と情報・通信、官公庁・自治体・教育が同票で3位に並んだ。金融は06年から再び活発化したIT投資が07年も続くとの見方が有力。地銀に対する期待感を持つベンダーは多い。情報・通信は、「次世代ネットワーク」構築に向けたIT投資に期待。一方、官公庁・自治体・教育は3位に入ったものの、そのほとんどが官公庁と教育機関向け。地方自治体に期待を寄せるベンダーはほとんどいなかった。自治体は、合併案件が一段落した後、次の分野がなかなか受注につながらないだろうとの予測が多い。教育機関では、小・中・高校よりも競争が激化している大学の需要を各社とも狙っているようだ。
サービス業は、インターネット関連サービスを手がける若い企業の需要に期待する声がある。ネットサービス関連企業は情報システムがサービス提供の根幹を担うケースが多い。そのため、企業規模は小さくてもIT投資に積極的とみているITベンダーは多い。大手企業をメインターゲットとするSIerやソフト開発会社でもネットサービス業に限っては、中小でも攻める姿勢をみせている。
医療は、最下位となったものの医療機関向けビジネスを手がける会社が少ないため、一概に需要がないとは言い切れない。レセプトのオンライン化や電子カルテシステムの導入を促進する政府の方針から、「中堅規模の病院から07-08年にかけて爆発的な需要が期待できる」とみるSIerもある。
Q4 伸びる製品・サービス編
07年にIT・流通業界で期待できる製品・サービスは?
ERPやアウトソーシングが上位
事業の柱を増やす傾向に
2007年に伸びる製品・サービスとして比率が最も高かったのは、ERP(統合基幹業務システム)で18.5%を占めた。開発系SIerが自社開発の製品・サービスとして提供する傾向が高い。続く2位は、アウトソーシング・運用サービスで12.3%。販売系SIerの回答が多かった。

開発系SIerがERPを提供するのは、自社製品の売り上げ比率を高めるのが狙い。他社との差別化を図るため、金融や流通など業種に特化したものや、オンデマンド方式といった独自開発をアピールしている。
販売系SIerがアウトソーシングに力を入れているのは、システムを所有せずに預けるというSMB(中堅・中小企業)が増えつつあるため。サーバー製品を販売するよりもサービスを提供したほうが新規需要を開拓できるとの判断だ。運用サービスでは、内部統制に対するユーザー企業の関心が高まるとし、遠隔監視サービスを提供するベンダーが増えた。
内部統制という切り口では、システムの設計から構築までを提供するというコンサルティングと連携した事業を手がけるベンダーも出ている。また、セキュリティ製品が引き続き堅調に伸びるとの見方もある。
組み込みソフト開発は、開発系SIerが主力事業を継続して拡大させるという意味合いで回答したケースが多い。カーナビゲーションや携帯電話などが引き続き拡大傾向にあることが要因のようだ。加えて、ICカード需要の増大にともない、金融機関やクレジットカード会社などからシステム案件を受注しようと力を注ぐベンダーもみられる。
ほかにも、ネットワーク関連ではネットワーク系販社を中心に通信事業者向けネットワークインフラの構築や、一般オフィス向けにIP電話やデュアルフォンを活用したVoIPシステムの提供など、次世代ネットワーク事業の拡大を目指す方向にある。サーバーやストレージなどハードウェアでは、ディストリビュータや販売系SIerが仮想化をテーマに機器販売を増やす計画だ。
各ベンダーとも、07年は新しい領域でのビジネスを主力事業の1つに成長させようとしている。情報通信システムへの投資が活発化している市場環境も後押しし、“攻め”の姿勢に転換しているということだ。
Q5 伸びる地域編
自社ビジネスに関係なく、07年に成長が期待できる地域は?
地方でトップは九州・沖縄
アジア圏の物流拠点で地場産業が活況
今後の成長地域を複数回答で聞いた結果、「東・名・阪」の大都市圏の回答率が22.0%でトップ。これに次ぐのは九州・沖縄(18.3%)となった。「地方よりは首都圏が主戦場」「首都圏以外は啓蒙が必要だ」など見方はさまざまだが、特に開発系SIerにとっては地方市場での成長があまり期待できないとみる傾向は強い。

こうしたなかで「全体的に西日本は景気が良いのではないか」と地方に期待する意見もあった。ネットワーク、業務ソフト系から、最も多く票を集めたのが九州・沖縄地域だ。
有望地域として九州・沖縄地域をあげたベンダーは、特に九州を推す理由として「地場産業が多く、成長が期待できる」ことや、九州がアジア圏の重要な物流拠点でもあり、「産業がアジアに向いているため」というプラス評価の意見が多かった。また、自社の拠点があり、実績をつくっているのも理由の一つとなっている。
北陸地域もアジアに近いという理由で支持を受けている地域だ。特に、「物流の拠点が新潟に集中しつつあることで日本海側の経済圏が熱い」と注目している企業も多い。逆に「地域特性から需要を押しあげる要素に乏しい」として、北陸は期待できないとの見方もある。
また、潜在的に需要が見込めると考えられているのが、中国・四国地域および東北地域だ。これまで産業が活発ではなかったことから「未開拓地域であり、有力なパートナーが多く、成長が期待できる」「中国地域は新規開拓の需要が眠っている」などの意見もあった。
海外についてはアジア圏が人気を集めている。「特に中国でのビジネス拡大が期待できる」とみる回答が多かった。
どの地域に注目するかはそれぞれの企業の考え方によるが、地方市場が伸びていく条件の共通点を探ると、「アジア圏、特に中国との物流ポイントがあり、製品情報を発信できる地域」が浮かび上がってくる。
アンケートにご協力いただた企業:アイエックス・ナレッジ(IKI)/アイ・ティー・サービス/アイティフォー/アルゴ21/伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)/インフォベック/SRA/エス・アンド・アイ(S&I)/SAPジャパン/エス・エス・ジェイ(SSJ)/NECソフト/NECネクサソリューションズ/NECフィールディング/エヌ・シー・エル・コミュニケーション(NCLC)/NTTデータシステムズ/エプソン販売/応研/OSK/大塚商会/オービックビジネスコンサルタント(OBC)/沖データ/キヤノンシステムソリューションズ/キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)/キング・テック/コア/シーイーシー(CEC)/シーティーシー・エスピー(CTCエスピー)/JBISホールディングス/JBCCホールディングス/住商情報システム/ソフトバンクBB/大興電子通信/ダイヤモンドコンピューターサービス(DCS)/ダイワボウ情報システム(DIS)/TIS/電通国際情報サービス(ISID)/東京エレクトロンデバイス/東芝情報機器(TIE)/東芝ソリューション/日本オフィス・システム(NOS)/日本オラクル/日本システムウェア(NSW)/日本事務器(NJC)/ネットマークス/ネットワークバリューコンポネンツ(NVC)/ネットワールド/ネットワンシステムズ/日立情報システム/日立ソフトウェアエンジニアリング/日立電子サービス(DENSA)/ピー・シー・エー(PCA)/富士ソフト/富士通エフ・アイ・ピー(富士通FIP)/富士通サポートアンドサービス(Fsas)/富士通システムソリューションズ(Fsol)/富士通ビー・エス・シー(富士通BSC)/富士通ビジネスシステム(FJB)/ブラザー販売/マイクロソフト/丸紅インフォテック/弥生/リコーテクノシステムズ(RTS)【五十音順・計62社】
2007年は、ERP(統合基幹業務システム)と製造業が商機をつかむカギを握りそうだ。週刊BCNが国内IT・流通業界62社の経営トップを対象にした5項目の調査によると、ERPは、内部統制強化の動きを受け、需要が高まると判断。業務ソフトベンダーと開発系SIerを中心に約2割が「期待できる製品」と回答した。また、業種別では約半数が製造業の伸びに期待。アジア圏向け製品の生産拠点などが点在する九州地区が最も活況になるとの結果が出た。
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