ブレードサーバーを巡るメーカーの動きが活発だ。トップシェアを堅持する日本IBMを追撃しようと、二番手グループの3社が戦力増強に邁進している。IA(PC)サーバーのなかでブレードが占める割合はまだ5%程度でしかない。だが、メーカーは今後の需要拡大を見越し、この半年間、製品と販売体制の両面で準備を進め一気にアクセルを踏もうとしている。各メーカーはトップ獲得を明確に示し始めた。IBM独走時代から群雄割拠の時代に突入する可能性がある。
二番手グループの3社が戦力増強
トップIBM追撃で体制を整備
日本IBMは、ブレードサーバーがもつ利点を他社に先んじて訴求してきた。その先行優位性を生かして2003-05年の3年間、シェアトップを堅持している(IDC Japan調べ)。ブレード市場でのIBMブランドは強く、競合メーカーも「『ブレードといえばIBM』というイメージがユーザーに浸透してしまっている」と認めざるを得ないようだ。そのうえ、ブレードを3枚購入した場合はエンクロージャ(ブレードサーバーを格納する筐体)を105円という超破格値で販売するなどのキャンペーンを展開中で価格競争力もある。
製品力と価格、そして圧倒的な知名度で「サーバーやソフトで一度もつき合いのないITベンダーが、ブレードだけは当社を選ぶケースも少なくない」(高橋慎介・執行役員パートナー事業担当)と、直販だけでなく販社経由の販売も好調なことを強調する。「すべての事業で市場の2倍の成長率をIBMは求めている」(高橋執行役員)と、手綱を緩める様子はみせない。ただ、ブレードサーバーの普及につれて競合との戦いは激化している。昨年上半期は前年同期比でシェアを9.2ポイント下げ、圧倒的な優位性は揺らいできた。
このトップメーカーを追撃しようと、動きが慌しいのが2番手グループの3社。日立製作所、NEC、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)だ。
日立は、昨年上半期の出荷実績で前年同期の5位から2位に躍進した。上半期は大規模システム向けのハイエンドモデル1機種しかなかったにもかかわらずだ。昨年9月、手薄だった中規模システム向けのミッドレンジモデルを投入。ソリューションとして提案しやすいようにセットモデルを用意したり、有力販社を約15社選び出して取扱量を増やしてもらうための関係強化に動くなど販売戦略面でも活発な動きをみせた。来年度早々には、ブレード専門の営業組織を新設する計画もある。日立はエンクロージャの数にこだわっており、これを「今年度末までに合計で3000台まで積み増す」(宇賀神敦・統合プラットフォーム販売本部販売統括部部長)という目標を掲げる。日立にしろ、日本IBMにしろ、エンクロージャの拡販に懸命なのは、それこそが“囲い込み”の武器になるからだ。
NECは、販社経由の間接販売に力を注ごうとしている。同社のコンピュータ販社は全国に360-380社。統制のとれた販社体制は他社を圧倒する。IAサーバーでの高い実績は、この全国網の間接販売体制があってこそだ。しかし、昨年、ブレードのブランド「SIGMA BLADE」を大々的に打ち出したものの、販売方法は直販主体で、販社経由の販売は「全体の5%程度」(山科俊治・クライアント・サーバ販売推進本部長)と、強みの販売網を生かしきれていない。この現状を打破するため「ブレード特有の専門知識が不要な新商品」を2月に投入した。また、ブレードサーバーに関連する仮想化や管理ソフトの教育を専門で行う支援制度を来年度から本格的に始める。NECは過去、「ft(無停止型)サーバー」で専門支援制度をつくり100社の代理店がこのプログラムで販売力を高め、販社経由の販売を伸ばした。ブレードでもこの戦略を横展開しようというのだ。
日本HPは、「BLADE3.0」の通称で次世代ブレードサーバーを昨年6月に投入。中規模システムに採用しやすいようブレード型ストレージを12月に用意するなど製品ラインアップを一気に増やした。同月、ブレード販売で初の専門組織「ブレードビジネス推進部」を20人体制で組織。13社で構成するブレード販売の専門パートナー制度の内容も拡充して体制を整えた。「すべての道はブレードに通じる」(上原宏・インダストリースタンダード製品本部本部長)と、ブレード市場でのシェア獲得意欲は強い。
日本IBMを追う3社は、トップシェア獲得を今年の目標として明確に示した。この背景には、各社ともに製品力、販売体制の面で自信を持ち始めたからだろう。ブレード市場の成長率は46.4%増(昨年度上期の前年同期比較、IDC Japan調べ)。急成長市場を舞台に、群雄割拠の時代に突入しそうな気配だ。