SIP(VoIP応用の通話制御プロトコル)サーバー市場のシェア倍増へ──沖電気工業(篠塚勝正社長)がIPテレフォニー事業の拡大に積極的だ。法人市場で音声IP化の浸透には、SIPサーバーとアプリケーションサービスとの連携強化がカギと判断。ISVやSIer向けに設けた販売支援制度「Com@WILL(コムアットウィル)アプリケーションパートナープログラム」の参加企業を2007年中に現状の2倍まで引き上げる計画で、大企業に限らずSMB(中堅中小企業)への導入も促す。コンタクトセンター向けでトップシェアを誇る同社が、一般オフィスへの事業本格化で国内市場で主導権を握る考え。
ISVやSIerのパートナー拡充を徹底
SMB向け事業の拡大も視野に
「コムアットウィルアプリケーションパートナープログラム」は、IPテレフォニーのハードウェア「IPコンバージェンスサーバーSS9100」や「IPステージファミリ」、ハードウェアと互換性が高いソフトウェア製品群「コムアットウィル」、SIerやISVの業務ソフトなどとの連携強化を図る販売支援制度だ。沖電気がプログラムによるアライアンス企業に対してコムアットウィルのAPI(アプリケーションプログラムインターフェース)を開示。プログラム契約を結んだベンダーは、自社ソフトをIPテレフォニー関連システムのアプリケーションサービスとして提供できるようになる。現在のアライアンス企業は16社。西田慎一郎・IPシステムカンパニーIPシステム本部企業NWシステム開発第三部長は、「07年中には30社以上のベンダーと契約を進める」としている。
最近では、今年2月に三菱電機エンジニアリングと契約を結んだ。三菱電機エンジニアリングの受付案内システム「コンコンコール」と沖電気のIPテレフォニー製品の連携を強化。これにより、「コンコンコール」のユーザー企業は、ネットワーク環境さえあればアダプタやゲートウェイを介さずに受付案内システムを活用することが可能になる。受付の映像をテレビ電話で確認できる「カメラ連動機能」や、訪問者が受付で訪問相手の在席状態を把握できる「プレゼンス機能」など、IP電話ならではの機能も用意した。
同社は、SIPサーバーなどコンタクトセンター向けIPテレフォニーシステム市場で40%以上のシェアを獲得しており、トップに君臨している。同市場向けには、今年1月から「シーティーステージ5i」の販売を開始。CTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)とIP-PBXの両機能を搭載することで、一般オフィスシステムとの連携強化を図り、SIPサーバーと連携可能な「IP-PBXモデル」で、一般オフィスのネットワークシステムとの連携を可能とした。加えて、「VoIP化だからこそ実現可能なソリューション提供がユーザー企業を増やすための重要なカギ」との判断から、昨年10月にはアプリケーションパートナープログラムの開始に踏み切った。こうした動きにより、「なかでも、業務アプリケーションとのシームレスな連携を訴えることでオフィス内のコールセンター化を促進し、SMB向けIPテレフォニーシステムの導入をすすめていく」としている。
現在、一般オフィス市場ではVoIP化が遅れているといわれており、同社をはじめ大手PBXメーカー各社が事業拡大を図ろうと懸命だ。このため同社は、競合他社との差別化を図るため、トップシェアを維持しているコールセンター向けIPテレフォニーシステムとの連携を強化、新しい製品・サービスの提供に向けたアライアンス強化策を打ち出したというわけだ。一般オフィス向けSIPサーバー市場では、沖電気のシェアは1ケタの前半と低い状況。これを早期に最低でも2ケタの前半まで引き上げることを目標に掲げている。